薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究

文献情報

文献番号
202125031A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究
課題番号
21KC2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
16,376,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、わが国の薬物乱用・依存に関する最新状況およびその経年的変化を異なる対象集団に対する全国規模の疫学調査を通じて情報を収集するとともに、大麻や一般用医薬品の乱用といった近年、公衆衛生上の問題が拡大しつつある個別の課題について掘り下げることを目的とする。研究計画に基づき、今年度は、研究1:薬物使用に関する全国住民調査(2021年)を実施した。この研究は、一般住民における飲酒・喫煙・医薬品・違法薬物の使用実態を把握するとともに、その経年変化を調べることを目的とする。本研究は、わが国で唯一、定期的に実施されている薬物使用に関する全国調査である。1995年より隔年で実施され、今回で14回目の全国調査となった。得られた知見は、薬物乱用・依存に関する各種対策の立案・評価を講じる上での基礎資料として供する。
研究方法
対象は、層化二段無作為抽出法(調査地点:250)によって無作為に選ばれた15歳から64歳までの一般住民7,000名であった。事前にトレーニングを受けた調査員が、対象者を戸別訪問した。今回の調査は、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中での実施となったため、アンケート用紙の回収方法を①訪問回収(従来)、②郵送返送、③インターネット回答から選べるように変更した。調査期間は2021年9月22日から11月26日であった。近年の動向を踏まえ、医薬品の乱用経験(過去1年間)、大麻の使用場所、使用した大麻の形状に関する調査項目を追加した。調査実施にあたり、国立精神・神経医療研究センター倫理委員会の承認を得た(承認番号A2017-011)。
結果と考察
計3,611名から調査票を回収した(回収率51.6%)。重複回答や除外基準に合致する対象者を除いた計3,476名を有効回答とした(有効回答率49.7%)。対象者の平均年齢は43.8歳、男性47.4%、女性52.6%であった。各物質の使用状況は次の通りであった。
1) アルコール:直近の飲酒率(過去30日飲酒率、過去30日ビンジ飲酒率)は、男女ともに顕著に減少していた。
2) タバコ:過去1年喫煙率、過去30日喫煙率ともに、男性は横ばい、女性は減少していた。
3) 解熱鎮痛薬:直近の使用率(過去30日使用率)は、男女ともに急増していた。
4) 精神安定薬:過去30日使用率、習慣的使用率ともに女性は顕著に増加、男性はわずかに減少していた。
5) 睡眠薬:過去30日使用率は、女性は横ばい、男性は減少していた。習慣的使用率は、女性が増加、男性が減少していた。
6) 医薬品の乱用経験:過去1年以内の乱用経験率(者数)は、解熱鎮痛薬0.57%(約51万人)、精神安定薬0.43%(約38万人)、睡眠薬0.09%(約8万人)と推計された。
7) 違法薬物:違法薬物の生涯経験率(者数)は、大麻1.4%(約128万人)が最も高く、有機溶剤0.9%(約82万人)、危険ドラッグ0.5%(約43万人)、MDMA0.3%(約27万人)、覚醒剤0.3%(約24万人)、ヘロイン0.3%(約23万人)、コカイン0.2%(約22万人)、LSD0.1%(約13万人)と推計された。過去1年経験率(者数)は、大麻0.14%(約13万人)、ヘロイン0.10%(約9万人)、危険ドラッグ0.09%(約8万人)、LSD0.08%(約7万人)、コカイン0.08%(約7万人)、MDMA0.08%(約7万人)、覚醒剤0.06%(約5万人)、有機溶剤0.04%(約4万人)と推計された。ただし、大麻とヘロイン以外の過去1年経験率は、統計誤差範囲内であった。
8) 大麻:2019年から2021年にかけて過去1年経験者数が増加した(2019年:約9万人、2021年:約13万人)。大麻使用者の過半数は「国内のみ」で使用されていた。使用された形状は、乾燥大麻や大麻樹脂に加えて、ワックス・リキッドタイプ、大麻成分を含有する食品の使用者も報告された。
結論
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、第14回目の全国住民調査が実施された。2019年から2021年にかけて一般住民の飲酒、喫煙、医薬品、違法薬物の使用状況に様々な変化がみられ、経年的な変化において新型コロナウイルス感染症が影響している可能性が示唆された。今年度の新たな試みとして、医薬品(解熱鎮痛薬、精神安定薬、睡眠薬)の乱用経験、および大麻の使用場所、使用形状に関する実態を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202125031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,195,000円
(2)補助金確定額
17,195,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 398,502円
人件費・謝金 0円
旅費 1,368円
その他 15,976,130円
間接経費 819,000円
合計 17,195,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
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