薬剤師・薬局における災害時等対応についての調査研究

文献情報

文献番号
202125028A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤師・薬局における災害時等対応についての調査研究
課題番号
21KC1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
江川 孝(福岡大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 暁洋(岡山大学 学術研究院医歯薬学域(医))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年度厚生労働省科学研究「薬局及び薬剤師に関する災害対策マニュアルの策定に関する研究」において、災害時に薬剤師・薬局が行うべき活動や平時の災害への備え等については、「薬剤師のための災害対策マニュアル」として取りまとめられている。しかし、約10年が「薬剤師のための災害対策マニュアル」の策定から経過するなかで、地震や台風、集中豪雨による水害などの大規模災害時における医薬品供給体制の確保や薬剤師の対応等の現状や関係法令の改正状況を鑑み、必要な見直しを行うことは緊迫した課題である。また、近年、都道府県によっては、被災地域に設置される保健医療調整本部において業務主管部局と連携して対応する医薬品等の医療物資の供給に精通する担当者(いわゆる災害薬事コーディネーター)の養成等が進められているが、全国の都道府県に薬事コーディネーターが配置されていない状況である。
そこで、本研究は、災害時において適切に対応できる薬剤師の養成に資するよう、近年の災害発生状況のみならず新型コロナウイルス感染症等の新興感染症の流行状況を踏まえながら、薬剤師・薬局として対応すべき取組に焦点を当てて災害対応マニュアルの改訂を行うものである。申請者は、薬学生・薬剤師を対象にした災害薬事研修にバーチャルリアリティ(VR)技術による体験型e-learning 教材をPBL型の災害薬事演習に導入し、その学習効果を確認した(江川ら, 16th ACCP, Korea, 2016)。計画している具体的な研究項目は、①災害時における薬剤師の活動をモニタリングするための薬剤版J-SPEEDの開発とe-learningによる災害薬事コーディネーター養成事業への基盤整備、②近年発生した地震や台風、豪雨災害における薬剤師の活動についての事例収集と災害時処方箋の調査による薬剤版J-SPEEDの後ろ向き検証、③収集した事例をもとに、災害時における医薬品供給体制の確保に必要な薬剤師の対応を検討し、災害時に求められる薬剤師の役割や平時から必要となる準備等を明確化して、当該内容を盛り込んだ災害対応マニュアル改定と、新型コロナウイルス感染症等の新興感染症における感染拡大を防止する観点の検討、④関連団体等のこれまでの経験や意見を踏まえた災害対応マニュアル改定(案)作成と災害対応マニュアルに基づく業務を行う薬剤師を養成するための研修プログラムの立案・提言、の4つである。
研究方法
本研究では、2021年度に東日本大震災を含め近年の災害の薬事対応の事例を収集するために各都道府県の薬剤師会を対象としてアンケート調査を行った。アンケートの方法は、Googl Formsを用いて、自治体との協定について(3項目)、マニュアル・BCPについて(5項目)、災害時の薬事コーディネートについて(3項目)、医薬品の備蓄に関して(4項目)、訓練・研修に関して(4項目)、避難所の公衆衛生について(3項目)、「薬剤師のための災害対策マニュアル」について(1項目)調査を行い、過去に大規模災害を経験した都道府県の薬剤師会に対しては12項目の追加調査を行った。
また、福岡県薬剤師会の薬剤師を対象として行われた災害薬事コーディネーター研修にて平成28年豪雨災害(西日本豪雨災害)で応需した災害処方箋の処方内容を薬剤版J-SPEEDで経時的に解析をし、集計項目の検証を行った。
結果と考察
被災県で活動した薬剤師は被災地の救護所だけでなく、県庁保健医療調整本部や現場の保健医療調整本部、避難所、巡回診療と様々現場で活動しており、「医薬品供給体制について薬剤師会と卸の連携」、「災害時に本部や災害現場でコーディネーターとして活動する薬剤師、支援薬剤師や被災地域薬剤師の連携」について改訂版災害対策マニュアルに反映させ、都道府県の災害関係マニュアルに連結させる必要がある。また、薬剤師が受援や支援で想定している災害は、地震・津波のみならず、台風・水害・原子力災害と多岐にわたり、改訂版災害対策マニュアルには感染症対応の例示も考慮すべきである。コミュニケーションでは、災害処方箋の応需先や保管・管理について整理して改訂版災害対策マニュアルに反映させる必要がある。評価の観点から、モバイルファーマシーは導入されていなくても対応が検討されており、医薬品の備蓄や備蓄リスト、一般用医薬品(OTC)の管理、公衆衛生の対応について整理する必要がある。さらに、公衆衛生やコーディネーター研修、薬剤師の育成や教育についてもニーズがあり、支援・受援薬剤師やコーディネーター育成の標準化を進めて教育内容の提示が求められていることが明らかとなった。
結論
アンケート調査によって「薬剤師のための災害対策マニュアル」の具体的な改訂項目が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2022-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-08-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202125028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,590,000円
(2)補助金確定額
5,590,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,742,788円
人件費・謝金 13,362円
旅費 528,850円
その他 15,000円
間接経費 1,290,000円
合計 5,590,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-08-08
更新日
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