危険ドラッグと関連代謝物の有害作用評価と乱用実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
202125025A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグと関連代謝物の有害作用評価と乱用実態把握に関する研究
課題番号
21KC1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 正明(湘南医療大学 薬学部)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経機構学分野)
  • 北市 清幸(岐阜薬科大学 医療薬剤学大講座 薬物動態学研究室)
  • 嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
危険ドラッグの検出ならびに有害作用評価に関する研究を実施した。カチノン系化合物について、行動薬理学的特性および細胞毒性とモノアミントランスポーター阻害作用強度の相関性に関する検討を行った。また、化学計算によるインシリコ評価法を用いて合成カンナビノイドのカンナビノイドCB1受容体活性予測を行った。同様に、危険ドラッグの検出手法を明確にする目的で、合成カンナビノイドおよびフェンタニル類似化合物の代謝産物の検出手法に関する基盤研究を行なった。さらに、新規乱用薬物の研究および評価の際の基礎資料を提供する目的で、10代の大麻使用少年を対象に大麻ベイプを含む大麻の使用実態および危険ドラッグを含む大麻以外の違法薬物の使用実態に関する疫学調査の立案を試みた。
研究方法
カチノン系化合物の行動薬理学的特性と作用点であるモノアミントランスポーター [ドパミントランスポーター (DAT)、セロトニントランスポーター (SERT)、ノルエピネフリントランスポーター (NET)] に対する取り込み阻害作用の関連性について検討した。コンピュータシミュレーションによる危険ドラッグの有害性予測に関する研究としては、合成カンナビノイドについて、CB1受容体を標的にしたドッキングスタディを行い、ドッキングスタディの評価関数と実際の活性値との相関を調べた。危険ドラッグによる毒性評価法に関する研究としては、モノアミントランスポーターを標的とした危険ドラッグの有害性スクリーニングの可能性について検討した。トランスポーター発現細胞であるCHO-DAT細胞およびCHO-SERT細胞を用いて、12種の乱用薬物あるいは危険ドラッグの24時間曝露による細胞毒性および形態変化について検討した。代謝物の検出に関する研究では、フェンタニル類似化合物である4-fluorofranylfentanyl (4-FFF) について、ヒト肝ミクロソームを使用して、LCMS-IT-TOF、LC-MS/MSによる測定方法の確立とin vitro代謝実験の実施を試みた。疫学調査:10代の大麻使用少年を対象に大麻ベイプを含む大麻の使用実態および危険ドラッグを含む大麻以外の違法薬物の使用実態を明らかにするために、研究計画立案と調査項目のエンドポイントの妥当性を検討した。
結果と考察
カチノン系化合物の投与によって運動促進作用が発現し、中枢興奮作用を有することが明らかになった。また、すべてのカチノン系化合物は、DAT、SERT、NET取り込み阻害作用を示した。運動促進作用とDAT阻害作用強度において有意な相関性が認められた。DAT発現細胞による機能解析から、カチノン系化合物の中枢興奮作用などの有害作用を推測できる可能性が示唆された。同様に、コンピュータシミュレーションにより、CB1受容体を標的にしたドッキングスタディを行った。その結果、ドッキングスタディの評価関数と実際の活性値は各種計算条件を変更することで相関性の向上が見られた。評価関数以外の条件検討も併せて行い、相関の向上を目指すことにより合成カンナビノイド包括規制への布石とすることができると考えられる。また、CHO-DAT細胞、CHO-SERT細胞による毒性評価を行ったところ、細胞死およびアポトーシス様の形態変化が認められたが、CATH.a細胞、B65細胞での細胞死、形態変化に比べ軽度の変化であった。細胞毒性の評価については、CATH.a細胞やB65細胞などの培養神経細胞株による評価の方が高感度であると考えられる。さらに、4-FFFのin vitro代謝実験により、3種の第Ⅰ相代謝物の検出に成功した。ヒト肝ミクロソームによる代謝実験において、主要な代謝物の検出が可能であり、ヒトにおける代謝挙動の推定において、培養細胞による解析は有用であることが示唆された。疫学調査:本研究の実施にあたり、主として大麻ベイプを使用する少年は、主として従来の乾燥大麻を使用する少年に比べて、薬物関連問題の重症度が高いという仮説を立て、薬物関連問題の重症度(DAST-20スコア)をプライマリーエンドポイントとした。
結論
本研究で確認された動物実験と細胞による総合的な有害作用評価システムは、カチノン系化合物包括指定範囲の拡大のために貢献できる解析手法であると考えられる。また、コンピュータシミュレーションによる解析を併用することにより、危険ドラッグの有害作用の推測が可能となり、適切な包括指定対象範囲を設定することが可能であると考えられる。培養細胞を利用したフェンタニル類似化合物の代謝物検出ならびに細胞毒性の検出法の妥当性が示された。本研究の評価システムは、危険ドラッグの中枢作用および有害作用発現の迅速な評価法として有用であり、得られる科学データは規制根拠として活用できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-05-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202125025Z