ワクチン等の品質確保を目的とした国家検定の最適化や国際整合化を目指すための研究

文献情報

文献番号
202125023A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチン等の品質確保を目的とした国家検定の最適化や国際整合化を目指すための研究
課題番号
21KC1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
石井 孝司(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター)
  • 高橋 宜聖(国立感染症研究所 免疫部)
  • 花木 賢一(国立感染症研究所 安全実験管理部)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 水上 拓郎(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 伊藤 睦代(高山 睦代)(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 妹尾 充敏(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 落合 雅樹(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国家検定制度は、ワクチン、血液製剤、抗毒素等(ワクチン等)の品質確保において重要な役割を担っている一方で、近年の医薬品の製造及び品質管理技術の向上に伴い、国家検定制度のあり方については国際的にも検討が進められているところである。こうした背景を踏まえ、過去の厚生労働科学研究で得られた成果及び諸外国の国家検定制度の状況を参考にしながら、本邦の国家検定制度をより効果的かつ効率的な制度に向上させるために必要な調査、研究を行う。
研究方法
本研究では、1)製造・試験記録等要約書(SLP)審査制度の血液製剤、抗毒素製剤等への拡大、2)生物学的製剤の品質管理試験法の評価と改良、3)リスクに応じた国家検定試験の最適化及び試験検査機関の品質システム強化、を主として検討した。
結果と考察
1)生物学的製剤へのSLP審査導入については、SLP審査によるロットリリースを導入すべく検討を重ね、令和3年7月より血液製剤及び抗毒素製剤等でのSLP審査を開始し、すべての生物学的製剤(最終製品)へのSLP審査導入を完了した。
2)品質管理試験法の評価と改良に関しては、定量的試験結果の安定性及び同等性の評価基準について、これまで明確な判断基準が無かった試験結果の安定性および同等性についての評価法の基盤構築に成功した。異常毒性否定試験に関して検討を進め、血液製剤については生物学的製剤基準(生物基)から削除された。また、ウイルス生ワクチン及び省略規定が最初に導入された組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)についても、本試験を実施しなくても品質管理に問題がないことが確認され、生物基から削除される予定である。動物実験については、体温を指標とした人道的エンドポイントの設定が有効であることが示唆されたボツリヌス抗毒素力価試験において、「時間単位」での死亡予測が可能かどうか検討した。その結果、死亡に先立って明らかな体温の低下が認められ、「時間単位」でも死亡予測が可能であることが示唆され、苦痛軽減(苦痛を与える時間の短縮)につながると考えられた。狂犬病ワクチンの力価試験の改良に関しては、EDQMの国際共同研究に参加し、プロトコルに従って3回の試験結果を解析して報告した。引き続き試験の安定化および国内ワクチンを用いたバリデーションを行う。毒素定量法の検討については、ジフテリア毒素、破傷風毒素、A型ボツリヌス毒素の毒性を発育鶏卵で検出することが可能であることが明らかになった。今後、さらに詳細な検討を行い、ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドの無毒化試験、ボツリヌス抗毒素製剤の力価試験で用いられている現行法の代替法となり得るかを検討する。
3)リスク評価に基づく試験頻度の検討については、リスク評価に基づく一部ロット試験導入の基本方針(案)を厚生労働省に提案した。リスク評価方法については、評価項目の見直し、解析方法等の検討を進め、令和2年度の実績を含むリスク評価を実施し、試験頻度を減じる対象品目を選定した。ワクチンの国家検定にリスク評価に基づく一部ロット試験が導入されることで、国家検定の最適化や国際整合化が期待できる。ワクチンの安全性の評価に関しては、国家検定が実施されているワクチン接種後に報告された副反応疑い報告についてまとめるとともに、異常な集積がないかについて検討した。2021年2月から供給が始まった新型コロナワクチンについては、厚生科学審議会に集計・解析結果の一部を公表し、心筋炎・心膜炎については接種後2日目をピークとして4日目までに多く報告されていることを発表した。検定検査機関の品質システム強化に関しては、PIC/SやWHOにおいてISO 17025が試験検査機関の品質システムの実質的な国際標準となっており、多くの国の公的試験検査機関が認定を取得していることから、感染研としても認定を取得することが望ましいと判断した。
結論
これまでの国家検定の試験成績、SLPの情報等を活用したワクチンの品質等のリスク評価結果等に応じて国家検定で実施する試験頻度等を見直す仕組みについて基本的な考え方を整理し、令和4年度から一部のワクチンの国家検定の試験頻度を50%に減じることを意見としてまとめた。試験頻度を減じる品目については年に一度見直しを行い、制度導入品目のさらなる拡大を図っていく予定である。
動物試験に関する検討に関しては、異常毒性否定試験等の動物試験の今後のあり方について国際的な動向等を踏まえながら幅広く検証し、血液製剤、ウイルス生ワクチン及び組換え蛋白ワクチンについて異常毒性否定試験を生物学的生物基から削除することについて意見としてまとめ、血液製剤については令和3年度に生物基から削除が行われた。また、試験精度の向上や3Rs対応を目指した試験法の開発及び改良について、引き続き検討を行っている。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202125023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,054,211円
人件費・謝金 150,000円
旅費 61,380円
その他 734,409円
間接経費 0円
合計 5,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
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