催奇形性物質に係る雄性生殖を介した新規発生毒性評価法の開発

文献情報

文献番号
202125020A
報告書区分
総括
研究課題名
催奇形性物質に係る雄性生殖を介した新規発生毒性評価法の開発
課題番号
20KC2008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
桑形 麻樹子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部第二室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リドマイド被害の重篤性に鑑み、より安全側に立脚して服用中の避妊を男性にも求めている。本来、エビデンスに基づいた安全性確保を担保すべきであるが、そのために必要な催奇形性物質に係る雄性生殖を介した新規発生毒性評価法が確立していない。本研究では薬物動態や薬物応答性の種差を考慮しつつ、催奇形性誘発懸念物質の体内動態を基盤とする医薬品毒性評価法の確立に向けて、ヒトへの外挿可能性を踏まえた毒性試験プロトコールを完成させることを目的とする。
具体的には、令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)にて実施した情報収集をもとに立案した、即ち、雄性生殖を介した種差及び薬物動態を加味し精液移行性に特化して評価する発生毒性試験計画(膣内投与試験)を実証する。なお、催奇形性陽性対象物質として本課題ではサリドマイドを用いる。
研究方法
令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)にて立案した雄性生殖を介した、即ち、種差及び薬物動態を加味し精液移行性に特化して評価する発生毒性試験計画(膣内投与試験)を実証するために、昨年度(R2年度)は、妊娠雌ウサギへの投与により催奇形性が発現する用量を用いて雄ウサギを用いた単回あるいは反復経口投与時のサリドマイドの血漿中及び精漿中への移行推移の結果から最大膣内移行量を算出した。この結果を基にR3年度は、最大膣内移行量の100倍を投与する膣内投与試験を実施した。さらに、雌性ウサギを用いた膣内投与試験から得られた母動物血中濃度と昨年度構築した薬物動態モデル出力結果値とを比較し、膣内投与後の母動物内への薬物移行を考察した。
結果と考察
膣内投与により母動物への影響および胎児形態への影響はないことを確認した。また、膣内投与後の母動物血漿および子宮産物(胎盤、卵黄嚢膜、胎児)の薬物移行を確認し、薬物は膣内投与後、母動物の全身循環を介して、胎盤、卵黄嚢膜を経て、母動物血漿中の約3~4割が胎児へ至ることが示唆された。さらに、令和2年度に構築したウサギにサリドマイドを経口投与した後の血中濃度推移を再現する薬物動態モデルを用いて、雌性ウサギを用いた膣内投与試験から得られた母動物血中濃度とモデル出力結果値とを比較した結果、両者はほぼ一致した。即ち、投与経路、性差、妊娠日、投与量に関係なく、サリドマイドは生体内へ移行、代謝していることが示唆された。
結論
令和2年度の雄ウサギを用いた検討の結果に基づき、最大精漿中移行濃度の100倍量である0.4 mg/kgのサリドマイドを妊娠1日から13日まで膣内投与した結果、母動物に対する影響はなく、胎児の生存性、成長に関する指標にも影響はなかった。また、胎児の外表、内臓及び骨格検査の結果から、この投与量における催奇形性は認められなかった。
この時の母動物血漿中および子宮内の産物(胎盤、卵黄嚢膜、胎児)のサリドマイド濃度および2種の水酸化物濃度を調べた結果、膣内投与により母動物にサリドマイドの蓄積性はなかった。また、胎児へは母動物血漿中濃度の4-5割程度のサリドマイドが移行していた。得られた結果は、サリドマイドを経口投与した雄の精液を介した雌への曝露による催奇形作用はないことを示している。
令和4年度は膣内投与実験の結果を基に、経口投与による奇形発現の際の妊娠ウサギでの血中濃度と比較し、その濃度差を明らかにした後、現行のテストガイドラインを考慮しながら、種差および薬物動態を加味した雄性生殖を介した新規発生毒性試験評価法を完成させる。

公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2022-05-31
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収支報告書

文献番号
202125020Z