国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究

文献情報

文献番号
202125015A
報告書区分
総括
研究課題名
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
課題番号
20KC2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ‐クウオリティ セキュリティ講座)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
  • 秋本 義雄(金沢大学 医薬保健学総合研究科)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域)
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
1,247,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当班はH18度以降、個人輸入代行サイトでは偽造薬のほか、低品質薬、未承認薬、無評価薬が扱われ、無処方箋販売、大量販売、誤指示、無資格販売など重大な保健衛生上の問題が存在することを明らかにしてきた。R3年度も引き続き世界の個人輸入規制や偽造薬対策、偽造薬による健康被害について調査するとともに、個人輸入で入手する医薬品の保健衛生実態を把握し、偽造薬の現場鑑定法の開発、偽造薬が含有する未知成分同定法を確立する。以て、国際流通する偽造薬・低品質薬の迅速な発見、鑑別、遡及調査を強化し、我が国及び世界の監視・指導・対策の改善、消費者啓発に資する調査を行う。
研究方法
(1)国際的な偽造医薬品対策の進展調査:各国や地域、国際組織・機関の偽造医薬品対策と取締に関する文献と情報をウェブから収集し整理した。
(2)模造医薬品による健康被害に関する調査:PubMedに検索式「(counterfeit OR fake OR bogus OR falsified OR spurious)AND (medicine OR drug)」を適用し、模造薬による健康被害論文を抽出した。
(3)デキサメタゾンの個人輸入における保健衛生上の問題デキサメに関する研究:COVID-19 治療薬の個人輸入代行サイトを調査し、発注可能サイトが最多のデキサメタゾン0.5mg錠を購入した。注文サイト並びに入手製品について、観察、真正性調査、定量、定性分析を行った。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの含有成分の同定:2-amino-5-methyl benzoic acidとCetilistat impurity Bの標準溶液をLCMS8040(島津製作所)を用いてHPLC条件の検討を行い、定量系を構築した。
(5)LC/MS法を用いたメタンジエノン定量法の構築と個人輸入製品の分析:逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーと精密質量が測定可能なフーリエ変換型質量分析計を組み合わせ、メタンジエノンの測定系を構築した。錠剤1個よりメタンジエノンを抽出し、内部標準法により定量した。
結果と考察
(1)国際的な偽造医薬品対策の進展:、米国他5大陸の12か国・地域並びに、国際刑事警察機構、欧州連合、経済協力開発機構、欧州評議会、世界保健機関、国連薬物犯罪事務所などの偽造医薬品対策と発生したCovid -19 ワクチン偽造をはじめ偽造医薬品関連犯罪を収集した。積極的な対策にも関わらず、偽造薬犯罪は多発していた。
(2)模造薬による健康被害に関する調査:検索式でヒットした318件中健康被害は1件だった。米国で27歳の男性が、オンラインで入手した「M30」と呼ばれる模造オキシコドンにより、重度の横紋筋融解症から血液透析を必要とする劇症腎不全となった。
(3)デキサメタゾンの個人輸入における保健衛生上の問題に関する研究:デキサメタゾン錠を広告する個人輸入代行サイト18サイトから、0.5mg錠4種23サンプルを入手した。溶出試験、含量均一性試験、含量試験の結果は概ね適合したが、サイト記載事項の不備、処方箋未確認、添付文書や説明書の欠如など不適正使用につながる恐れがあった。すべて薬価に比べて高額だった。自己判断での個人輸入は慎むべきである。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの含有成分の同定:2-amino-5-methyl benzoic acid(+)、Cetilistat Impurity B(-)、Cetilistat Impurity B(+)のそれぞれにおいて保持時間とピーク形状の良好なHPLC条件を構築した。感度が一番良いSRMトランジションにより、すべての検量線が良好な直線性を示した。今後、内部標準物質を用いた検量線の作成が必要である。
(5)LC/MS法を用いたメタンジエノン定量法の構築と個人輸入製品の分析: 2種の分析条件を比較した結果、水-アセトニトリル系の移動相にイソプロパノールを添加することでメタンジエノンのキャリーオーバーが解消され、原点を通る良好な直線性の検量線が得られた。15検体すべてに、メタンジエノンが表示含量の80%以上含まれていた。
結論
個人輸入代行サイトで販売される医薬品は、不適正使用を誘発する虞があった。国際的な対策強化にも関わらず、COVID-19 ワクチンなどの偽造薬関連犯罪は多発し、健康被害も生じていた。LC/MSは偽造薬の主成分や未知成分の同定に有用であった。

公開日・更新日

公開日
2022-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-27
更新日
2023-09-20

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202125015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,620,000円
(2)補助金確定額
1,620,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,059,192円
人件費・謝金 0円
旅費 146,640円
その他 41,168円
間接経費 373,000円
合計 1,620,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-07-18
更新日
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