文献情報
文献番号
202125012A
報告書区分
総括
研究課題名
国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究
課題番号
20KC1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 育子(国立大学法人 神戸大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 入江 徹美(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,424,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究班は、令和2年度に専門薬剤師に至るラダーとしてジェネラルな研修認定薬剤師、領域別認定薬剤師、専門薬剤師の3段階を基本とすること、また、専門薬剤師の質を担保するために新たな仕組みでの第三者機関認証の必要性と、そのための認定要件案について提示した。令和3年度は公開シンポジウム等で研究班の活動を広く周知するとともに、主な関連団体に対して個別ヒアリングを行うとともに、医薬系団体を対象にオンラインアンケートを実施し、広く意見を聴取することとした。また、分担研究として、薬剤師の職能・職域の特徴と類似点が多い歯科医師の専門制度について、WEB面談を含む追加調査を実施するとともに、米国・韓国における薬剤師の専門制度について調査し、わが国における薬剤師の専門制度の構築に向けて参考となる情報を取得することを目的とした。
研究方法
令和3年11月3日に薬剤師の卒後研修と専門制度の調和に関する公開シンポジウムを日本学術会議や関連学会と共同開催した。がん領域の専門薬剤師制度を有する団体及び薬剤師認定制度認証機構(CPC)とヒアリングを行い、検討を加えたのち、医薬系73団体を対象にアンケートを実施した。分担研究として、薬剤師の職能・職域の特徴と類似点が多い歯科医師の専門制度について、WEB面談を含む追加調査を実施するとともに、米国・韓国における薬剤師の専門制度について調査した。
結果と考察
公開シンポジウムの中で、令和2年度の研究班の活動を「薬剤師の専門性のあり方について」の演題で発表し広く周知した。また、CPCやがん領域の専門制度を持つ3団体に対するヒアリングを実施し、それらの意見も考慮したうえでオンラインアンケートを実施した(回収率75.3%)。その結果、薬剤師が専門薬剤師に至るキャリアパスとして「研修認定薬剤師を経て、専門性を有する領域別認定薬剤師や専門薬剤師に至る」ことや、研究班が提案する専門薬剤師の外形基準(①薬剤師としての実務経験が5年以上、②研修認定薬剤師であること、③カリキュラムに沿った専門研修、④専門領域で自身が関わった症例の報告、⑤専門認定試験の合格、⑥学会発表2回(うち1回は筆頭)あるいは筆頭論文1報、について70%以上の賛成する回答が得られた。そして、専門薬剤師について第三者機関が認証する仕組みの必要性等についても「賛成」との回答が多かった。一方、これらの意見に反対またはわからないと回答した理由としては、CPCとの認定制度の名称や役割との整合性、大学・行政・企業に勤務する薬剤師に対する専門制度への配慮、認定数や地域・領域別偏在に対する懸念等が挙げられた。
CPCとの意見交換では、現在CPCで規定されている専門薬剤師認定制度(S)で認証された認定制度がないため、専門薬剤師制度を認証する第三者評価機関としてCPCを新しい枠組みのなかで活用することも可能であると考えられた。
歯科医師の専門制度について追加調査した結果、医療専門職の専門制度創設において共通して考慮されたことは、①制度の質を担保し信頼性を高めるための第三者認証機関の必要性、②専門認定の目的は国民の健康と福祉の向上のための標準的な医療の提供であるという認識の共有であった。専門領域としては、外見基準を満たした5領域と新たな5領域について順次認証されていくことになっていた。
米国・韓国の専門薬剤師制度は①「社会的ニーズ」や「提供されるサービスの価値」等を評価して領域が設定されていること、②日本とは異なり、両国とも各学会が専門薬剤師制度を設定しているわけではなく、第三者的な機関を有すること、③専門薬剤師制度の国民への認知度は両国でもまだ高いわけではなく、韓国においては診療報酬への反映等の付加価値は検討段階であることが明らかとなった。そして米国の専門薬剤師制度の大きな特徴として、卒前教育や免許取得後のレジデントプログラムが専門薬剤師制度と密接に連携・接続し、関連学会や団体が提供するプログラムが有機的に結びつき、専門薬剤師制度の発展に大きく寄与している点であることが明らかとなった。
CPCとの意見交換では、現在CPCで規定されている専門薬剤師認定制度(S)で認証された認定制度がないため、専門薬剤師制度を認証する第三者評価機関としてCPCを新しい枠組みのなかで活用することも可能であると考えられた。
歯科医師の専門制度について追加調査した結果、医療専門職の専門制度創設において共通して考慮されたことは、①制度の質を担保し信頼性を高めるための第三者認証機関の必要性、②専門認定の目的は国民の健康と福祉の向上のための標準的な医療の提供であるという認識の共有であった。専門領域としては、外見基準を満たした5領域と新たな5領域について順次認証されていくことになっていた。
米国・韓国の専門薬剤師制度は①「社会的ニーズ」や「提供されるサービスの価値」等を評価して領域が設定されていること、②日本とは異なり、両国とも各学会が専門薬剤師制度を設定しているわけではなく、第三者的な機関を有すること、③専門薬剤師制度の国民への認知度は両国でもまだ高いわけではなく、韓国においては診療報酬への反映等の付加価値は検討段階であることが明らかとなった。そして米国の専門薬剤師制度の大きな特徴として、卒前教育や免許取得後のレジデントプログラムが専門薬剤師制度と密接に連携・接続し、関連学会や団体が提供するプログラムが有機的に結びつき、専門薬剤師制度の発展に大きく寄与している点であることが明らかとなった。
結論
研究班が提案した専門薬剤師に至るキャリアパスや専門薬剤師の外形基準については概ね賛同が得られた。研修の在り方・質についての定義づけや研修年限等について修正を加える必要がある。歯科医師の専門制度や米国・韓国の専門薬剤師制度においては、第三者機関が専門制度の質を担保するとともに、社会のニーズに合わせ専門領域の決定も行なっていた。これらの調査結果をもとに、国民のニーズに応える専門薬剤師制度の指針を作成する予定である。
公開日・更新日
公開日
2022-05-26
更新日
2023-07-28