文献情報
文献番号
202125010A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の輸血医療における指針・ガイドラインの適切な運用方法の開発
課題番号
20KC1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
松本 雅則(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 松下 正(名古屋大学 医学部附属病院輸血部)
- 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学分野)
- 紀野 修一(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター)
- 奥田 誠(東邦大学医療センター大森病院 輸血部)
- 岡崎 仁(日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所研究開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,577,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
科学的根拠に基づいた血液製剤の使用ガイドラインの成果をもとに厚生労働省の「血液製剤の使用指針」(使用指針)が改定され、推奨の強さや推奨を支持するエビデンスのレベルも示された。これに続いて「輸血療法の実施に関する指針」(実施指針)も改定された。このように指針やガイドラインが整備されているが、実際の医療現場でどのように利用されているのかは必ずしも充分に検証されていない。このため、国内の様々なレベルの医療環境の中でどの程度で指針が遵守されているのか、また指針遵守のモニタリングを医療機関において輸血管理部門が行なっているか、調査する必要がある。本研究では、上記のような調査で明らかになった問題点、特に指針、ガイドラインで遵守できず臨床現場で実施されている点を明らかにし、ガイドラインをより実質化して今後の改定の際に参考にすることを目的とする。さらに、使用指針と実施指針を統合した新たな指針案を作成することを目的とする。
研究方法
以下の5項目について検討した。
1、血液製剤の適正使用や適正な輸血療法の実施を促進するための取組に関する情報収集
昨年に引き続き、血液製剤使用実態調査の中に質問事項を入れて調査した。
2、輸血医療(検査、運搬、保管等を含む)に関する実態把握のための調査
各種搬送容器並びに各種保冷庫の庫内温度の変化について実際に測定して評価を行った。
3、 海外での事例についての情報収集
COVID-19感染状況により令和3年度も現地調査が困難なことから、海外の輸血事情(輸血実施可能施設数、血液製剤の価格、保険の償還状況など)についてWebで調査した。
4、 関連指針の整理を行い、適正使用を促進するために関係者への周知を図る
上記の調査によって得られた項目から関連指針・ガイドラインの問題点を明らかにし、周知した。
5、輸血療法実践ガイド(輸血療法実施に関する指針と血液製剤の使用指針の融合)の作成
現状では、実施指針と使用指針は2つの別々の指針として発表されているものを、過不足ない内容で、1つの指針として統一した記載内容にするための案を作成するため、必要な項目の討議を行った。
1、血液製剤の適正使用や適正な輸血療法の実施を促進するための取組に関する情報収集
昨年に引き続き、血液製剤使用実態調査の中に質問事項を入れて調査した。
2、輸血医療(検査、運搬、保管等を含む)に関する実態把握のための調査
各種搬送容器並びに各種保冷庫の庫内温度の変化について実際に測定して評価を行った。
3、 海外での事例についての情報収集
COVID-19感染状況により令和3年度も現地調査が困難なことから、海外の輸血事情(輸血実施可能施設数、血液製剤の価格、保険の償還状況など)についてWebで調査した。
4、 関連指針の整理を行い、適正使用を促進するために関係者への周知を図る
上記の調査によって得られた項目から関連指針・ガイドラインの問題点を明らかにし、周知した。
5、輸血療法実践ガイド(輸血療法実施に関する指針と血液製剤の使用指針の融合)の作成
現状では、実施指針と使用指針は2つの別々の指針として発表されているものを、過不足ない内容で、1つの指針として統一した記載内容にするための案を作成するため、必要な項目の討議を行った。
結果と考察
1、血液製剤の適正使用や適正な輸血療法の実施を促進するための取組に関する情報収集
血液製剤使用実態調査を利用し、回答施設数は4,733 (回答率50.39%)であった。各血液製剤の使用基準遵守についての輸血部門での評価は、赤血球製剤(RBC)36.5%、血小板製剤(PC)27.5%、血漿製剤(FFP)23.0%、アルブミン製剤(ALB)22.5%、免疫グロブリン製剤(Ig)10.9%の順に多く実施されていた。不適切な使用法が認められるのは、RBCやPCは少なく、FFPとALBで目立つことが報告された。
2、輸血医療(検査、運搬、保管等を含む)に関する実態把握のための調査
搬送バックや保管する保冷庫について実際の温度変化を測定した。血液専用保冷庫では大きな問題はなかったが、薬品保冷庫や家庭用保冷庫においては氷点下まで温度が低下することが観察され、特に赤血球製剤の凍結による溶血が危惧された。
3、海外での事例についての情報収集
オンライン上に掲載されている情報をもとに調査したところ、日本の輸血実施可能施設は、アメリカ、カナダ施設、イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、イタリアに比べてかなり多く、医療へのアクセスの良さがあらためて認識された。
4、関連指針の整理を行い、適正使用を促進するために関係者への周知を図る
上記2のように血液製剤の保冷庫が氷点下以下に低下することから、学会などで緊急に周知を行い、令和4年度に製剤自身の内部温度を確認する。
5、輸血療法実践ガイド(輸血療法実施に関する指針と血液製剤の使用指針の融合)の作成
使用指針と実施指針を1つの指針として融合することを目的として輸血療法実践ガイドを作成するため昨年度にたたき台を作成した。本年度はガイドラインで必要な統一した項目を検討した。さらに今後実践ガイドを作成するため、2021年末までの期間でクリニカルクエスチョンに対する文献検索を行い、統一した記載方法について必要な事項を検討する予定である。
血液製剤使用実態調査を利用し、回答施設数は4,733 (回答率50.39%)であった。各血液製剤の使用基準遵守についての輸血部門での評価は、赤血球製剤(RBC)36.5%、血小板製剤(PC)27.5%、血漿製剤(FFP)23.0%、アルブミン製剤(ALB)22.5%、免疫グロブリン製剤(Ig)10.9%の順に多く実施されていた。不適切な使用法が認められるのは、RBCやPCは少なく、FFPとALBで目立つことが報告された。
2、輸血医療(検査、運搬、保管等を含む)に関する実態把握のための調査
搬送バックや保管する保冷庫について実際の温度変化を測定した。血液専用保冷庫では大きな問題はなかったが、薬品保冷庫や家庭用保冷庫においては氷点下まで温度が低下することが観察され、特に赤血球製剤の凍結による溶血が危惧された。
3、海外での事例についての情報収集
オンライン上に掲載されている情報をもとに調査したところ、日本の輸血実施可能施設は、アメリカ、カナダ施設、イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、イタリアに比べてかなり多く、医療へのアクセスの良さがあらためて認識された。
4、関連指針の整理を行い、適正使用を促進するために関係者への周知を図る
上記2のように血液製剤の保冷庫が氷点下以下に低下することから、学会などで緊急に周知を行い、令和4年度に製剤自身の内部温度を確認する。
5、輸血療法実践ガイド(輸血療法実施に関する指針と血液製剤の使用指針の融合)の作成
使用指針と実施指針を1つの指針として融合することを目的として輸血療法実践ガイドを作成するため昨年度にたたき台を作成した。本年度はガイドラインで必要な統一した項目を検討した。さらに今後実践ガイドを作成するため、2021年末までの期間でクリニカルクエスチョンに対する文献検索を行い、統一した記載方法について必要な事項を検討する予定である。
結論
日本の輸血医療現場での指針/ガイドラインの利用状況について調べたところ、FFP、アルブミンで不適切な使用が認められると報告された。血液製剤の保管する冷蔵庫の温度調査により、薬品保冷庫や家庭用保冷庫では氷点下まで低下する可能性が示唆された。実施指針、使用指針の統合指針に関しては、今後使用指針に記述を統一したものにするため、令和4年度に文献検索を実施し、輸血ガイドラインの改定作業を開始する予定である。
公開日・更新日
公開日
2022-08-10
更新日
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