臨床検査技術を応用した自然毒成分の新たな検出・定量法の樹立

文献情報

文献番号
202124048A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床検査技術を応用した自然毒成分の新たな検出・定量法の樹立
課題番号
21KA3007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 光貴(京都橘大学 健康科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 哲也(京都橘大学 健康科学部 臨床検査学科)
  • 伊藤 洋志(長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,082,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では現代においても, 食材中に含まれる自然毒を原因とした食中毒が数多く発生している。現在, 自然毒に対する臨床検査がほとんど実施されていない。この事は誤診や対応の遅れに直結するため, 対策が急務である。以上の背景から 自然毒が原因である食中毒について, 毒成分の同定と患者の病期(初期, 重症期, 完治など)の判定に有用な検査法の樹立が必要と考えた。また, 本研究を通じて樹立した手法は食品安全検査にも応用が可能である。令和3年度は主として, テトロドトキシン(TTX)に対する酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)の構築に尽力したので, その成果を中心に報告する。
研究方法
抗体はMouse Anti-Tetrodotoxin monoclonal antibody, clone TTX(CABT-L3089),TTX antibody(orb101965),TTX(5E7) antibody(orb7079)を用いた(以降, それぞれ Ab①, Ab②, Ab③と記載する)。なお, Ab③のみポリクローナル抗体であり, その他はモノクローナル抗体である。
TTX中毒の患者検体を入手することは困難であるため, 3つの溶媒, ①緩衝液(buffer)試料(100 mM クエン酸buffer pH3.0), ②urine試料および ③serum試料にTTX試薬を溶解したものを各測定試料とした。それらに対して, 測定試料内に含まれるTTXを一次および二次抗体で挟み込む, 非競合法を原理としたELISAの構築を試みた。
結果と考察
結果
1. TTXに対するELISAの構築
一次および二次抗体にそれぞれAb②とAb③-HRPを用いたELISA(Ab②-③ ELISA)のみ, 概ねTTX濃度に沿った発色が見られた。
2. 各ELISAにおけるTTX検量線の比較
次に, 各ELISAにおける検量線を作成した。他のELISAと比較して, Ab②-③ ELISA において, TTX濃度と吸光度の相関性に優れた良好な検量線を得ることができた。
3. 同時再現性の検証によるAb②-③ ELISAの性能評価
100 μg/mLに希釈したTTX試料14本を同時測定した。結果, buffer調製試料の測定結果は平均92.93 μg/mLとやや低めに算出されたが, ばらつきは小さかった。
4. urineおよびserumによるTTX測定結果の補正
次に, urine試料やserum試料を用いて調製したTTX希釈系列の測定結果から, 検量線を改めて作成した。結果, urine調製希釈系列では発色が抑制されるものの, 相関性に優れた良好な検量線が得られた。一方, serum調製希釈系列では全体的に強い発色を認め, SDも大きかった。
5. 除タンパク血清(dp-serum)によるTTX測定結果の補正
次に, dp-serum試料を用いて, 検量線の作成と同時再現性の検証を試みた。結果, 概ねTTX濃度に応じた吸光度が得られ, その値を基に検量線の作成が可能であった。この検量線に基づき, 改めて同時再現性を検証したところ, 依然ばらつきは認められたが, 平均値は111.29 μg/mLと算出され, 実際のTTX濃度に近似した値が得られた。
考察
本ELISAの検出感度は7.813 μg/mL程度と予想される。一方, 既存のELISAでは, 数十ng/mLのTTX濃度も測定可能とされており, これらと比較してAb②-③ ELISAは感度が劣る結果となった。しかし, 非競合法を原理とするAb②-③ ELISAではTTXの検出特異性が高いと思われ, この点は既存のELISAよりも優位と考えられた。
urine を測定試料に用いた場合,尿素が抗体を変性させ全体的な吸光度の低下に繋がったと考えられる。また, serumではタンパク質が強く影響し, 特に, 免疫グロブリンがELISAプレートと疏水性に結合し, これにHRP 標識二次抗体が結合することによる偽陽性反応が生じると予想された。この非競合ELISAはフグ科魚類などの食材からの抽出液を試料とすることで, 食品安全検査にも応用が可能と思われた。これまでTTXの測定手段が限られていた中で, 本研究において非競合法を原理とするELISAを構築できたことは, 今後のTTX検査の発展に有用な成果と考える。
結論
本研究において構築したAb②-③ ELISAは生体試料中TTXの測定が可能であるが, 主として感度に課題が残る。現段階で非競合ELISAは, 検査法としてある程度有用という評価に留まるが, 検体の調製法や測定条件の改善を図ることで, 将来的な実用化が期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-11-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-11-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,498,000円
(2)補助金確定額
2,498,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,250,741円
人件費・謝金 0円
旅費 43,120円
その他 788,139円
間接経費 416,000円
合計 2,498,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-11-10
更新日
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