食品への混入が懸念されている環境中のマイクロプラスチックの表面性状に着目した安全性研究

文献情報

文献番号
202124047A
報告書区分
総括
研究課題名
食品への混入が懸念されている環境中のマイクロプラスチックの表面性状に着目した安全性研究
課題番号
21KA3006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
辻野 博文(大阪大学 総合学術博物館)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,029,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
5 mm よりも小さいサイズのプラスチック微粒子であるマイクロプラスチック(microplastics : MP)は、ヒトが口にする可能性のある様々な海洋生物に加え、飲料水や食塩からも検出されており、その安全性が懸念されている。しかしながら、環境中に存在する MP は曝される環境や時間に依存して、微少化や鋭利化などの形状変化に加え、酸素原子の添加や構造の開裂などの表面性状変化を示すため、その物理的性状は非常に複雑であり、安全性研究は進んでいない。そこで本研究では(1)種々条件における MP 標準品を獲得し、存在様式データベースの構築を試みる。さらに(2)ハザード解析に加え、動態解析手法の確立することで、MP の安全性に関する科学的な情報集積を行うものである。
研究方法
MPサンプルとして、ポリエチレン粉末サンプルを選択し、光照射によるポリエチレンMPサンプルの表面劣化を試みた。劣化前後のポリエチレンMPサンプルは、IRスペクトル測定により得られたスペクトルパターンを比較することで表面性状に関する情報を得た。
また、実環境中のMPサンプルについては、砂浜の満潮線付近の砂から水を用いた分離法により回収し、サンプルを十分に乾燥させ、その中からMPを回収し、環境中MPサンプルとした。得られた環境中MPサンプルをそれぞれ上記で示したポリエチレンMPサンプルと同様に、IRスペクトルを測定し、プラスチック素材を同定するとともに劣化状態に関する情報を収集した。加えて、上記にて作成したポリエチレンMPサンプルとの比較も実施した。
結果と考察
本年度は主にポリエチレン((-CH2CH2-)n)サンプルに対する(1)MP標準品サンプル獲得・データベース構築、を実施した。ポリエチレンサンプルに対して、真空紫外光照射装置による劣化処理を行い、様々な光劣化ポリエチレンサンプルを調整した。また、各サンプルの赤外分光スペクトルの測定を行い、データベース情報とした。
次に海洋環境中におけるマイクロプラスチック粒子の獲得と表面性状分析を実施したところ、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなどが確認された。また、海洋環境サンプルの多くに表面劣化が起こっていることも確認された。さらに、本研究にて作成したMPサンプルと赤外分光スペクトルが一致する海洋環境サンプルも存在していたことから、MP標準品が実環境に存在しうることが確認された。
結論
本年度は、主にポリエチレンに対して(1)MP標準品サンプル獲得・データベース構築、を実施し、真空紫外光照射装置を用いたプラスチックの表面劣化プロトコルの構築を行なった。加えて海洋環境中に存在するMPサンプルとの比較を実施し、実環境に存在し得るMP標準品群を獲得した。
次年度は異なるプラスチックサンプル(ポリスチレン)に対して(1)MP標準品サンプル獲得・データベース構築を実施することで、MP標準品群を充実させるとともに、本年度作成したポリエチレンMPサンプルに対して、(2)ハザード解析・動態解析を実施する予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,637,000円
(2)補助金確定額
2,637,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,708,240円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 320,760円
間接経費 608,000円
合計 2,637,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-09-29
更新日
-