抗毒素製剤の効率的製造方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200838018A
報告書区分
総括
研究課題名
抗毒素製剤の効率的製造方法の開発に関する研究
課題番号
H18-医薬・一般-034
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 元秀(国立感染症研究所 細菌第二部 第三室)
研究分担者(所属機関)
  • 大隈邦夫((財)化学及血清療法研究所 品質管理部長)
  • 千葉 丈(東京理科大学 基礎工学部)
  • 向本雅郁(大阪府立大学大学院  生命環境科学研究科)
  • 黒澤良和(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所)
  • 山本明彦(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ガス壊疽、ジフテリア、ボツリヌス等の毒素性細菌感染症の治療や、ハブやマムシの毒ヘビ咬症の治療に用いるウマ抗毒素製剤の安定供給のために、現行ウマ抗毒素製造の改良検討による効率化を計る。また、ウマ抗血清は治療時に血清病等の問題があり、これをヒトモノクローン抗体への改良・開発を目指して、現行ウマ抗毒素製造の具体的な改良点と対応策およびウマ血液由来製剤以外のヒト抗体の基礎研究を実施した。
研究方法
ウマ抗毒素製剤の製造方法は化血研独自の方法と千葉県血清研究所から承継した方法があり、両者は製造工程が微妙に異なるため、最終製剤の品質の違いを数種の方法で分析した。また、製造工程中のBSE対策とウイルス除去対策を検討した。ヒト型抗体の開発では、ボツリヌスは免疫ヒトリンパ球を用いた完全ヒト中和抗体作製を、また破傷風は完全型ヒト抗体を産生するトランスクロモマウスを用いる系で検討した。
結果と考察
ガスえそ抗毒素のBSE対策として、米国産牛由来原料の切替えはWelchii抗原とVS抗原は、米国産から豪州産への変更が可能となった。ウィルス除去対策は文献上では現行のペプシン消化が有効な手段であるため、今後チャレンジ・ウィルスを選定し、試験をおこなう。
A型ボツリヌス毒素中和マウスーヒトキメラ抗体のH鎖、L鎖遺伝子をシャッフルして得たキメラ抗体は、1μg/mlの抗体濃度でA型神経毒素を完全中和した。また、E型毒素中和キメラ抗体を産生する1クローンは、抗体濃度5μg/mlで完全中和した。
破傷風毒素に対するヒトIgG1抗体をKMマウスを用いて新たな7クローンを作製した。これらの抗体は、EBVハイブリドーマ法で得た中和抗体とは異なる破傷風毒素Hc断片上のエピトープを認識し、抗体を組み合わせた場合は、中和能が増強することを確認した。
結論
ヒトモノクローン抗体への開発移行における障害の検証では、ファージディスプレイ関連特許によりライセンスアウトを拒む企業政策が開発費への課題である。ボツリヌス症など超希少疾患の治療薬開発においては、国策として企業-国家の関係構築を具体化することが必要である。また、本研究結果でボツリヌスおよび破傷風抗体では複数のモノクローン抗体の組み合わせにより効果が期待されるオリゴクローン抗体の承認体制の整備が必要である。さらに現行の製造認可承認制度で求められる臨床治験の場を探すことは極めて困難である。

公開日・更新日

公開日
2009-10-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200838018B
報告書区分
総合
研究課題名
抗毒素製剤の効率的製造方法の開発に関する研究
課題番号
H18-医薬・一般-034
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 元秀(国立感染症研究所 細菌第二部 第三室)
研究分担者(所属機関)
  • 大隈邦夫((財)化学及血清療法研究所 品質管理部)
  • 千葉 丈(東京理科大学 基礎工学部)
  • 向本雅郁(大阪府立大学大学院  生命環境科学研究科)
  • 黒澤良和(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所)
  • 山本明彦(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ガス壊疽、ジフテリア、ボツリヌス等の毒素性細菌感染症の治療や、ハブやマムシの毒ヘビ咬症の治療に用いるウマ抗毒素製剤の安定供給のために、現行ウマ抗毒素製造の改良検討による効率化を計る。また、ウマ抗血清に替わるヒトモノクローン抗体への改良・開発を目指した基礎研究をおこなった。
研究方法
ガス壊疽抗毒素をモデルとして製造工程中のBSE対策とウイルス除去対策を検討した。ヒト型抗体の開発では、ボツリヌスは免疫ヒトリンパ球を用いた完全ヒト中和抗体作製を、また破傷風は完全型ヒト抗体を産生するトランスクロモマウスを用いる系で検討した。
結果と考察
ガスえそ抗毒素の製造培地におけるBSE対策として、米国産牛由来原料の切替えはWelchii抗原とVS抗原は、米国産から豪州産への変更が可能となった。ウィルス除去対策は文献上では現行のペプシン消化が有効な手段であることを確認した。ボツリヌストキソイド接種したドナーのリンパ球を元に抗体産生細胞を取り出してライブラリー化し、特定の中和抗体の組み合せるとA型毒素を特異的に中和することを確認した。研究班の目的であった「目的の性質を示す抗体を保有する1名のドナーから成分採血による抗体産生細胞の獲得→抗体ライブラリー作製→スクリーニング→単離抗体の活性評価・抗体の組合せ決定」という一連のストラテジーを達成した。他方、抗A型および抗E型神経毒素キメラ抗体作出でも、マウスハイブリドーマクローン由来のH鎖およびL鎖から作製したキメラ抗体は毒素を特異的に中和することを確認した。さらに、破傷風毒素を中和するヒトIgG1抗体をKMマウスおよびEBVハイブリドーマ法によって毒素を特異的に中和する抗体を作製し、組み合わせにより高い中和能を確認した。
結論
ウマ抗毒素製造方法の改良は、免疫用抗原製造工程のBSE対策に目処がたち、またウマ免疫法の再検討により高力価の抗体を得る手段を確認した。品質管理面では、製剤中のグロブリンサイズ(純度)定量法を導入することで製剤の高い品質評価が可能となり、さらにウィルス除去対策への取組みの具体化策を確認した。人型(化)抗体の開発では異なる技術・手法で検討した結果、作製したボツリヌス抗体は3-4種類組み合せることで十分治療効果を期待できることを動物モデルで確認した。これらの成果は、オリゴクローン抗体製剤の開発に利用が期待されるため、国際特許を含めて申請中である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200838018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現行の国有品であるウマ抗毒素製剤の製造と品質管理の問題点を洗い出し、製造所だけの人員と情報では解決できない点について具体化して製造の改良方針を見いだした。また、安定供給という見地からウマ抗毒素に替わる人型ボツリヌス抗体の開発ではA型毒素に対する基礎の技術研究は完了した。

臨床的観点からの成果
ウマ抗毒素製剤は患者(ジフテリア、ボツリヌス、ハブおよびマムシ咬傷)の緊急性に基づき医師の判断で使用される。安全性の高い製剤の供給に向けて旧来の製造方法の改良は望まれており、BSEやウイルス除去対策の具体策が示された。また、作製した人抗体は実験動物レベルでの有効性が確認された。実製造生産レベルでの検証と製法承認一部変更手続きなどの障壁とは別に臨床治療に向けて製剤の開発は確実に前進している。
ガイドライン等の開発
2008年にWHOの蛇毒抗毒素の製造、品質管理および規制に関するガイドライン案が作成され、日本国内の現状と考え方について情報も提供した。本年度のWHO Expert Committee on Biological Substances会議への提出が予定されている。国際間での現実対応には、特にGMP対応は差があり問題点もあり、今後各国とも相談しながら作製にあたる。さらに、国内版のガイドライン作成も今後検討する。

その他行政的観点からの成果
ボツリヌス毒素は生物兵器として高度に危険で注意を要することが感染症法でも規定されている。A型ボツリヌス毒素に対する人型抗体の候補品が実験動物を用いたレベルで有効性を確認した。現行の国有品であるウマ抗毒素製剤はボツリヌス食中毒患者の治療を目的として備蓄されており、テロ対策用としては不十分な備蓄量のために、本研究成果をより発展させて製剤化の一方策が示されたことになる。
その他のインパクト
研究の組織は製造所(化血研)、国家研究所(感染研)および大学(大阪府立大学、東京理科大学)を軸として、その他の各領域の研究協力者が協議して研究課題を絞って実施した。基礎研究を終了した成果に過ぎないが、いずれの課題についても今後の抗毒素製剤の安定供給のための実製造レベルでの基盤がえられ、特許申請中のものも含めて民間活用の期待が大きい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
「抗E型ボツリヌス神経毒素抗体」「組換え抗ボツリヌス神経毒素抗体」「A型ボツリヌス毒素中和組成物及びヒト抗A型ボツリヌス毒素抗体」
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
M.Kakita.,Y.Kurosawa., M.Takahashi et al.
Isolation of a human monoclonal antibody with strong neutralizing activities against diphtheria toxin.
Infect Immun. , 74 , 3682-3683  (2006)
原著論文2
Akira Ainai, Motohide Takahashi , Joe Chiba. et al.  
Renewal of EBV-hybridoma method: Efficient generation of recombinant fully human neutralizing IgG antibodies specific for tetanus toxin by use of tetroma cells.
Human Antibodies. , 15 (4) , 139-154  (2007)
原著論文3
Iwaki M, Horiuchi Y, Takahashi M. et al.
Toxoid flocuulation assay by laser light-scattering.
J of Immunological methods. , 318 , 138-146  (2007)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-