食品中の放射性物質の基準値施行後の検証とその影響評価に関する研究

文献情報

文献番号
202124039A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質の基準値施行後の検証とその影響評価に関する研究
課題番号
21KA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
明石 真言(東京医療保健大学 東が丘・立川看護学部看護学科)
研究分担者(所属機関)
  • 塚田 祥文(福島大学)
  • 青野 辰雄(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構)
  • 高橋 知之(京都大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
14,715,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東京電力福島第一原子力発電所(福島原発)事故により食品の摂取による内部被ばくが懸念され、厚生労働省は平成24年4月以降、食品からの内部被ばくを年間1 mSvとして導出された基準値を適用した。内部被ばく線量に対する放射性Csおよびその他の核種の寄与率は、環境モニタリングや環境移行パラメータから推定されており、その評価は十分安全側と考えられるが、実際に食品中濃度を測定した結果に基づくものではない。そこで現行の基準値によって食品中の放射性物質について安全性が十分に確保されていること、食品中の放射性物質の基準値に対して、国民が安心・安全を得ることができること、そして国内の食品の安全に関する根拠を示すことを目的に、食品中の放射性物質の基準値の妥当性について検証や食品中に含まれる放射性物質の濃度等に関する科学的知見の集約を行った。
研究方法
福島県で人口が多く、放射性Cs沈着量が比較的高かった福島市周辺地域で栽培された作物を網羅的に採取し、福島原発事故から10年以上を経過した現在の作物中放射性Cs濃度を測定し、比較・検証した。また、福島県内に流通する福島相双海域の魚類を入手し、これらの放射性物質の濃度測定を行った。本研究で得られた農作物中放射性物質濃度等のデータを用いて、農作物摂取による年間内部被ばくの線量推定を行った。さらに食品中の放射性物質の規制値や基準値の設定の議論や決定プロセスについて関係者に調査を行い、時系列で関連する会議議事録と合わせて取りまとめを行った。
結果と考察
穀類(玄米)、芋類、葉菜類、根菜類、豆類、果菜類(果実類を含む)及びその他作物中137Cs濃度測定の結果、基準値を超える作物はなく、時間の経過と共に次第に減少していた。今回、タケノコ中137Cs濃度が、33 Bq/kg-生重量と最も高い値であった。森林など表土の腐植除去に留まっている地域から採取される山菜などの自生植物中放射性Cs濃度については今後も比較的高い濃度にあることを周知しておくことが必要である。作物中Sr濃度から類推した90Sr濃度は、全て0.1 Bq/kg-生重量以下と極めて低い濃度であることが確認できた。令和3年10月に採取したマダイ、スズキ及びイシガレイ可食部中137Cs濃度はいずれも1 Bq/kg-生重量以下と低い濃度で、令和2年度の調査結果と大きな違いは認められなかった。魚類中の137Cs濃度は生息環境の海水中濃度を反映している一方で、福島原発事故時の134Cs/137Cs放射能比から現在の137Cs濃度範囲では134Csを検出することは難しいことが明らかとなった。放射性セシウムによる被ばく線量(134Csと137Csの合計値)被ばく線量の推定結果が最も高い年齢性別区分は【19歳以上男子】で、その推定値は年間 0.0033 mSvであった。また、90Srによる被ばく線量の推定結果が最も高い年齢性別区分は【13-18歳男子】で、その推定値は年間 0.00020 mSvであった。いずれについても、介入線量レベルである年間 1 mSvを大幅に下回っていた。本評価では市場希釈、調理加工等に伴う放射性Cs濃度の低減は考慮していないため、実際に喫食される食品中の放射性Cs濃度は減少しており、被ばく線量も低くなっていると考えられる。さらに、「食品中の放射性物質の基準値の設定に関わるプロセスの検証」に関連する会議で公開されている資料や議事録等を参照し、これまでの調査の結果を踏まえ「食品中の放射性物質の基準値の検証に関する調査」にまとめた。
結論
福島市とその周辺で栽培されている作物及び直販場で採取した自生野菜や福島相双海域で採取された市場流通する魚介類可食部中放射性Cs濃度で、基準値を超えるものはなかった。農作物の摂取に起因する放射性Cs及び90Srによる内部被ばく線量をそれぞれ推定し、比較検討を実施した。いずれについても、介入線量レベルである年間 1 mSvを大幅に下回っており、また、事故に起因する90Srの寄与は極めて小さく、放射性Cs以外の放射性核種の寄与を安全側に考慮した放射性Csに対する基準値の算定値は、妥当であったと考えられる。国際機関や法令に基づいたデータを引用し、かつリスクを考慮した結果を基準値に適用し、実測の結果を用いて基準値の妥当性について科学的な検証が行われており、基準値によって食品中の放射性物質については安全性が十分に確保されていることが確認され、食品中の放射性物質の基準値は科学的根拠に基づいた合理的なものであった。

公開日・更新日

公開日
2022-08-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-08-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,128,000円
(2)補助金確定額
19,118,000円
差引額 [(1)-(2)]
10,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,078,573円
人件費・謝金 3,570,462円
旅費 264,958円
その他 3,791,916円
間接経費 4,413,000円
合計 19,118,909円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-10-02
更新日
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