新型コロナウィルス感染症対策に取組む食品事業者における食品防御の推進のための研究

文献情報

文献番号
202124037A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウィルス感染症対策に取組む食品事業者における食品防御の推進のための研究
課題番号
21KA1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 マネジメント学部)
  • 田口 貴章(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 加藤 礼識(別府大学 食物栄養科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
19,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、食品への意図的な毒物混入事件が頻発したこともあり、通常の食品事業者においては食品防御への対応が進んできているところであるが、飲食物の運搬を請負う事業者については参考となる食品防御ガイドラインが存在せず、十分な対応が行われているとは言えない。今後も一定期間、新型コロナウィルス感染症への対処が続くものと仮定すれば、飲食物の運搬における安全・安心の実現は急務である。本研究では、従来の食品事業者だけではなく、飲食物の運搬を請負う事業者においても、食品への意図的な毒物混入を防御するための方策について研究する。
研究方法
今年度は、以下に示す9つの項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、学術論文・書籍等既存の公表情報の収集整理と、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。3事業者についてオンライン訪問、フードコート1箇所についてオンサイト訪問を行い、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理し、これまでの研究成果で策定された「食品防御対策ガイドライン」への改善を行い、より実用的なものとなるような改訂を検討した。
結果と考察
(1)「フードチェーン全体の食品防御上の安全性向上に向けた脆弱性評価」については、デリバリー部門を含む4箇所についてオンラインヒアリング/オンサイト訪問を行い、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理し、その結果として、今後、食品防御ガイドラインに反映できる可能性のある脆弱性16点を抽出した。
(2)「新型コロナウィルス感染症対策と調和した食品防御ガイドラインに関する検討」については、国内の食品事業所における新型コロナウィルス感染症のクラスター発生事例(9事例)、海外の同様事例と国による防止対策の動向(3か国)および、米国CDC等が発出した接触感染リスクに係る資料に関する概要を整理し、比較検討を行った。その結果、今後、食品防御ガイドラインとの調和を検討すべきポイント7点を抽出した。
(3)「テイクアウト・デリバリー施設における食品防御対策の現状調査」については、テイクアウト・デリバリー施設においては、大手ブラントならびに中小ブランド双方の店舗で食品防御対策の取り組みが不十分であり、今後より一層の普及・啓発が求められることがわかった。
(4)「購入した食品に異常があった場合の対応に関する意識調査」については、ウェブアンケート調査結果を基に購入した食品への異物混入等に対する意識を明らかにした。
(5)「フードデリバリーサービスの広がりによる食品防御上の新たな課題」については、フードデリバリーサービスという仕組みの中で調理済み食品をどう守るのかという対策が喫緊の課題であることがわかった。
(6)「血液・尿等人体試料中毒物及び食品中の毒物・異物の検査手法の開発と標準化」については、人体試料中の高極性農薬の分析法は、前処理に用いる溶媒の種類・量の検討及びLC条件における平衡化時間の検討が必要であると判明した。
(7)「食品のデリバリーやテイクアウト用の容器等における新型コロナウィルスのモデルウィルスを用いた生残性評価」については、感染性ウイルスの残存性は食品用容器・包装の種類によって異なること、野菜用包装袋および発泡スチレンボックスの表面では、他の4種類の容器・包装表面と比較して残存性が低い可能性が示唆された。
(8)「新興感染症流行時における地方自治体の食品防御対策の検討」については、行政機関における食品防御対策の検討として、食監へのアンケートの実施方法の検討、他の自治体の監視指導の状況調査及び食品衛生分野の行政機関の有事における対応の課題検討を実施した。
(9)「海外における食品防御政策の動向」については、米国FDAの公表情報や、研究班会議において収集した情報等に基づき、米国FDA「食品への意図的な混入に対する緩和戦略」規則・ガイダンスの更新状況と、COVID-19が食品防御対策に与え得る影響について整理した。
結論
近年、「オンラインフードデリバリーサービス」等の宅配事業、また自社サイトを通じて直接注文を受け付けるインターネット販売等も含めて、新しい飲食物の販路が開拓され、またそれらの多様化が押し進められた。今年度の研究では、特に、この調理・提供事業者と消費者とを接続する部分のサービスにおける、食品防御に関する懸念点の抽出を中心に行った。その結果、①アルバイト(配達)従業員の採用、②配達員への教育、③調理済み食品の封印、④走行履歴のトラッキング、⑤「置き配」に対する盗難・いたずら対策等に関する問題が明らかになった。以上を念頭に、次年度以降の研究では、これら新しい事業形態(飲食物の運搬)を行う事業者における、実行性のある食品防御の方法等の検討を実施する。

公開日・更新日

公開日
2022-09-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-09-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,320,000円
(2)補助金確定額
20,320,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,541,932円
人件費・謝金 4,862,468円
旅費 497,320円
その他 11,029,118円
間接経費 390,000円
合計 20,320,838円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」の差異838円は自己資金である

公開日・更新日

公開日
2023-09-06
更新日
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