文献情報
文献番号
200838015A
報告書区分
総括
研究課題名
大量出血時の止血能の評価と輸血療法に関する研究
課題番号
H18-医薬・一般-028
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高松 純樹(愛知県赤十字血液センター)
研究分担者(所属機関)
- 宮田 茂樹(国立循環器病センター 輸血管理室)
- 稲田 英一(順天堂大学医学部附属病院 麻酔科)
- 高本 滋(愛知医科大学医学部 輸血部)
- 西脇 公俊(名古屋大学医学部附属病院 麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
手術関連死亡の最大原因は術中の大量出血であるが、その治療の鍵は如何に止血凝固能を改善させて止血を図るかにある。しかしそのための適切な血液製剤の使用指針は確立されていない。本研究は術中大量出血時に起こる希釈性凝固障害の本態を明らかにし、止血のための輸血指針を提示することを目的とする。
研究方法
胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術、肝臓移植術、肝癌・肝門部癌切除術症例において、出血量増加時(1500~2000ml)に即座にフィブリノゲン値を測定し、低フィブリノゲン血症を認めた場合にはすみやかにクリオプレシピテ-ト製剤もしくはフィブリノゲン濃縮製剤によるフィブリノゲン補充治療を行って、フィブリノゲン値上昇効果と実際の止血効果を検討した。さらにこの止血治療が、胸部大動脈瘤手術および肝臓移植術における術中出血量・輸血量と患者予後に与える影響について、出血量の増加に応じて迅速にフィブリノゲン値測定およびフィブリノゲン補充を行っていなかった前年までの実態と比較検討した。
結果と考察
術中のフィブリノゲン値が150mg/dlを下回るか、下回る勢いで出血が持続している場合に、クリオプレシピテ-ト製剤3パックもしくはフィブリノゲン濃縮製剤3gの投与を行った。その結果フィブリノゲン値は30?100mg/dlほど上昇し、それとともに止血は良好となった。胸部大動脈瘤手術および肝臓移植術における平均術中出血量は前年比27%の減少、血液製剤の平均使用量は前年比37?55%の減少を認めた。以上より、術中大量出血時には迅速に凝固検査を行い、低フィブリノゲン血症に対してはすみやかにフィブリノゲン濃縮製剤を投与することが出血量・輸血量の減少に大きく寄与し、手術患者の予後改善に貢献すると考えられた。今後、術中の低フィブリノゲン血症に対してフィブリノゲン濃縮製剤を合法的に使用できるよう、その適応承認および供給体制の確立に向けて、厚生労働省や製薬企業(特に日本赤十字社)への働きかけが必要であると考える。
結論
術中の大量出血時には高度な低フィブリノゲン血症を本態とする希釈性凝固障害を生じ、止血凝固能が著しく低下する。この場合、フィブリノゲン値をすみやかに上昇させうるフィブリノゲン補充治療として、フィブリノゲン濃縮製剤の投与がきわめて有効である。
公開日・更新日
公開日
2009-04-21
更新日
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