小規模事業者等におけるHACCPの検証に資する研究

文献情報

文献番号
202124036A
報告書区分
総括
研究課題名
小規模事業者等におけるHACCPの検証に資する研究
課題番号
21KA1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
五十君 静信(東京農業大学 応用生物科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
17,197,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成30年公布された食品衛生法改正により、食品を取扱う事業者にHACCPの導入が制度化された。本研究班は小規模事業者等が制度を運用し事業が継続できるよう、手引書の作成や見直しにおける必要な科学的知見の収集、提供等を行うとともに、活用可能な検証手法を提供することを目的とした。また、制度化による効果を分析・評価するための検証手法を開発することも目的とした。
研究方法
HACCPに沿った衛生管理の制度の円滑な運用及び制度の導入効果の検証に資するため、科学的知見の収集、必要であれば研究を実施し、科学的根拠の提供等を行った。
①食品業種毎における手引書作成・見直しの支援では、業界団体が手引書を作成・見直しに当たり、危害要因分析、衛生管理の根拠となるデータの入手及び情報の提供等の支援を行った。
②HACCPプラン作成・見直しにおける科学的知見の提供では、HACCPプランを作成するにあたり、管理基準設定等の根拠となる食品ごとの加工条件等に係る知見を収集、以下については研究データの提供を行った。
②-1:深鍋調理食品におけるウェルシュ菌制御では、流水冷却の問題点を指摘し、高度耐熱性芽胞を用いて菌数変動を明らかにし、求められる温度管理条件を明らかにすると共に、偏性嫌気性菌であるウェルシュ菌の制御に食品中の酸素濃度または、酸化還元電位をコントロールする方法の有効性を検討した。
②-2:ヒスタミン様食中毒のサーべーランスとして、市販の高塩濃度の魚介食品等を購入し、食品中のヒスタミン濃度の測定を行った。
②-3: 弁当やそうざい等の微生物挙動では、仕出し弁当の調理後における常温保存時間の設定に資する検討を行うため、弁当を購入し、入手時点から室温で保存した場合の衛生指標菌数を求めた。同時に簡易迅速法を用いた試験も実施した。
③HACCPに沿った衛生管理の制度化による効果の分析手法及び弾力的運用の検討では、既にHACCPが導入されている諸外国における導入効果の分析・評価の状況及び小規模事業者のHACCP制度の検証手法の活用方法を含む弾力的運用状況について調査、分析・評価を行った。また国内における食品への異物混入に関する調査では、民間事業者から収集した食品への異物混入データの解析を行い、小規模事業者への指導に活用できる情報を検討した。
結果と考察
①業界団体から提案された手引書案の作成・見直しを行った。
②-1:深鍋調理食品におけるウェルシュ菌制御では、流水冷却では制御が難しいことから、開発した高度耐熱性芽胞作出条件を活用し、食品中の菌数変動を明らかにし、求められる温度管理条件を明確とすると共に、偏性嫌気性菌であるウェルシュ菌の制御に食品中の酸素濃度をコントロールする方法の有効性を検討した。
②-2:ヒスタミン様食中毒予防のためのサーべーランスとして、市販の高塩濃度の魚介食品等を購入し、ヒスタミン濃度の測定を行った。魚類の糠漬けにおいて、高いレベルのヒスタミンを検出した。
ヒスタミン様食中毒の主な原因菌であるモルガン菌の増殖しない高塩濃度の市販食品において高いヒスタミン濃度が記録されたことから、耐塩性乳酸菌との関わりなど更なる検討に加え、当該食品に関するヒスタミンの制御などの対策が求められる。
②-3: 弁当やそうざい等の微生物挙動では、仕出し弁当の調理後における常温保存時間の設定に資する検討の結果、常温保存を通じた仕出し弁当における微生物検出菌数及びその増殖挙動は検体により大きく異なったが、煮物やサラダ等を含む検体では相対的に初発検出菌数及び経時的増殖性が高い傾向がみられた。概ね調理後4~5時間までは耐え得るであろうとの知見を得た。検討した代替法による検出菌数は混釈法成績と概ね同等であり、微生物増殖挙動を図る試験に適した手法と考えられた。
③新型コロナウイルスの蔓延により海外現地調査は不可能となったため、本年度は米国の食品衛生関係者への電子メールでの問い合わせにより、HACCPの考え方にもとづく衛生指導導入の効果や評価に関連する情報の収集を行った。食品への異物混入調査に関しては民間事業者から収集したデータの解析を進めた。
結論
本研究成果は、厚生労働省・食品衛生管理に関する技術検討会にて審議された手引書案へ反映され、最終版として公開された。ヒスタミンに関する新たな知見は、次年度以降の追加の研究を行う予定でその結果は関連する事業者の手引書の改定にあたり、科学的データとして参考となる。食品への異物混入については監視指導時において異物混入の具体的な事例等の紹介等により、実際の現場の状況に即した指導に役立つ情報を提供可能となる。

公開日・更新日

公開日
2022-11-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,340,000円
(2)補助金確定額
19,340,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,960,393円
人件費・謝金 4,357,076円
旅費 75,118円
その他 1,804,413円
間接経費 2,143,000円
合計 19,340,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
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