食中毒原因細菌の検査法の整備のための研究

文献情報

文献番号
202124034A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒原因細菌の検査法の整備のための研究
課題番号
21KA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 大岡 唯祐(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 感染防御学講座 微生物学分野)
  • 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 伊豫田 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
30,719,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新興食中毒細菌として注目されている大腸菌近縁のEscherichia albertiiの食品での検査法の最終評価を行うこととした。また、病原大腸菌を原因とする食中毒が多発しており、astA(腸管凝集付着性大腸菌耐熱性エンテロトキシン1 ;EAST1をコードする遺伝子)保有大腸菌による大規模食中毒や腸管凝集付着性大腸菌(細胞への凝集付着性因子遺伝子aggRに加えてastA保有株も含む)や腸管病原性大腸菌(細胞への局在付着性因子:eae等保有株)による食中毒の発生も続いており、これらの病原大腸菌の食品等の検査法は国内外で確立されていないため、研究を行うことにした。さらに、令和3年に富山市で学校等給食によって発生した大規模食中毒の原因物質として疑われた大腸菌について、病原性解明のための研究を緊急的追加研究として実施した。
研究方法
(1)病原大腸菌食中毒の食品検査法確立では、食品でのE. albertii検査法について各種条件下で優れた分離培地等を検討し、それらの結果を参照して11試験検査機関とコラボレイティブ・スタディによる評価を行った。また、astA保有大腸菌の食品検査法の確立のために、地方自治体の協力のもとに菌株を収集し、増菌培養法、分離培養法およびリアルタイムPCR法を検討した。(2)病原大腸菌の検出指標遺伝子および病原性発現解析では、下痢症患児由来大腸菌株からのastA遺伝子保有株の同定、進化系統の異なる株のドラフトゲノム解析等を実施した。(3)病原性大腸菌食中毒事例株の解析では、2007年以降、国内で分離された大腸菌等の全ゲノム配列からBLAST検索によってastAの検出を行った。また、大規模食中毒由来大腸菌とその近縁株についてSNP解析を行った。(4)食品中の病原大腸菌の汚染実態および制御法に関する研究では、食品培養液から大腸菌の病原因子のスクリーニングPCRを行い、分離コロニーの病原因子をPCRで再確認した。(5)富山市の学校給食を原因として集団食中毒由来大腸菌の病原性に関する研究では、大腸菌株のゲノム解析、培養細胞での感染実験および動物モデル試験を行った。
結果と考察
(1)病原大腸菌食中毒の食品検査法確立では、E. albertii検査には増菌培地として薬剤AB加mEC等が、また、分離培地としてRX-DHL等が優れていた。これらを参照して実施したコラボレイティブ・スタディでは、E. albertii が検体あたり80 CFU以上であれば食品から全ての方法で高率に検出され、約18CFUでもリアルタイムPCR法で高率に、鶏肉では分離培養法でも高率に検出される優れた方法が確認された。また、astA保有大腸菌に適している増菌培地および分離培地が確認されたが、リアルタイムPCR法の新規開発の必要性が判明した。(2)病原大腸菌の検出指標遺伝子および病原性発現解析では、大腸菌株の約7.5% (907/12,035)がastA遺伝子を保有し、そのバリアントが35種類存在すること等が明らかになった。しかし、全株に共通の因子を同定するのは困難と思われた。(3)病原性大腸菌食中毒事例株の解析では、astAは約3%で認められ、多様な系統へ水平伝播していると考えられた。大規模食中毒由来大腸菌 O7:H4の国際ゲノム比較では、遺伝的に近縁な株が国際的に分布している可能性が認められた。(4)食品中の病原大腸菌の汚染実態および制御法に関する研究では、astA保有大腸菌の汚染は、食肉、特に鶏肉において高率に認められ、また、陽性率は低いものの野菜や魚介類においてもastA保有大腸菌の汚染が認められた。(5)富山市の学校給食を原因とした集団食中毒由来大腸菌の病原性に関する研究では、大腸菌株のゲノム解析にて主要ではないが多数の病原因子保有が認められた。また、培養細胞での感染実験では明確な病原性の確認はされなかったが、動物モデル試験では既知の病原大腸菌よりは低いものの非病原性大腸菌より高いマウス致死性が認められ、本菌が病原性を有する可能性が考えられた。今後、病原性発現についてさらに解明を進めたい。
結論
大腸菌近縁の新興食中毒細菌であるE. albertii およびastA保有大腸菌の食品検査法に関して、培養法やリアルタイムPCR法を検討し、また、リアルタイムPCRでの新たな対象遺伝子の検索につながる研究や事例株の解析、食品での汚染状況の解明について各分担研究が連携しながら実施した。また、緊急的追加研究として、富山市大規模食中毒の原因物質として疑われる大腸菌について、その病原性に関する研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2022-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-17
更新日
2022-09-27

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
31,545,000円
(2)補助金確定額
31,545,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,977,160円
人件費・謝金 7,643,343円
旅費 10,719円
その他 3,087,950円
間接経費 826,000円
合計 31,545,172円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
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