自然毒等のリスク管理のための研究

文献情報

文献番号
202124033A
報告書区分
総括
研究課題名
自然毒等のリスク管理のための研究
課題番号
21KA1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 敏之(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 )
研究分担者(所属機関)
  • 松嶋 良次(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター 衛生管理グループ)
  • 渡邊 龍一(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター)
  • 内田 肇(国立研究開発法人水産研究・教育機構中央水産研究所 水産物応用開発研究センター)
  • 髙橋 洋(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校)
  • 辰野 竜平(水産研究・教育機構 水産大学校 食品科学科)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所  安全情報部第三室)
  • 南谷 臣昭(岐阜県保健環境研究所 食品安全検査センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
26,762,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、フグ毒をはじめとした動物性自然毒やきのこを含む有毒植物など植物性自然毒に係る知見を収集・整理し、関係事業者に効果的な対策を提供するとともに、消費者に対して正確な情報提供を行うことを目的とする。
研究方法
 動物性自然毒においては、天然フグの主要な水揚げ地において、漁獲および流通状況の調査を行う。雑種フグの出現状況については、分子マーカーを用いて種・雑種の割合を明らかにするとともに、雑種フグに含有されるテトロドトキシン(TTX)を部位別にLC/MS/MS法により調べる。麻痺性貝毒については、国際的に妥当性が評価されているLC/MS/MS法を国内で効果的に利用するために、主要生産海域のホタテガイなどの毒組成をLC/MS/MS法により明らかにし、現在の貝毒検査の公定法であるマウス毒性試験との相関について検証する。植物性自然毒については、高等植物及びキノコの毒成分を対象に、中毒発生時に保健所と協力して原因究明にあたる地方衛生研究所(地研)にとって有用なLC/MS/MS分析法を検討し、妥当性評価などにより分析法を確立する。自然毒による食中毒の予防策を効果的かつ効率的に講じるために、主に植物性自然毒(キノコ・高等植物)を原因とする食中毒を対象に、その発生の実態や原因等を調査して傾向を解析する。また、厚生労働省ホームページ(以下、HP)に掲載されている「自然毒のリスクプロファイル」について、全般的な更新を行う。
結果と考察
 今年度は,宮城県気仙沼市および北海道稚内市において、漁獲された計9種1834個体および1種1179個体を調査した結果、雑種混獲率はそれぞれ13.348%および0.085%であった。両市共に、雑種は漁獲後、純粋なフグと区別されずに水産加工会社等に購入された後、フグ処理者の監督の下で排除されていた。東京都中央卸売市場における調査においては、卸売市場に搬入される際に、雑種の疑いがもたれ流通から除外されたフグ試料21検体を入手し、雑種疑いの根拠となった外観の特徴を収集・整理した。雑種フグの部位別毒性を明らかにするにあたり、今年度は、抽出手順の簡略化(一回抽出)と、その簡略方法にて各組織からTTXが定量的に回収できているか確認するためのTTX添加回収試験を実施した。ゴマフグとショウサイフグの交雑種由来の各組織(皮、筋肉、精巣、肝臓)では簡略化した抽出方法で良好な回収率が得られた。卵巣については従前どおりの2回抽出法を適用することで、良好な回収率が得られた。
 国際的に妥当性確認されたLC-MS/MS法にて、主要な水産物であるホタテガイを分析した。その結果、貝に一般的に含まれる主要な麻痺性貝毒約15成分の認証標準物質が少なくとも必要であることが示唆された。テトロドトキシン(TTX)はわずかに二枚貝から検出されたため、二枚貝検査に含めるかどうか更なるデータの蓄積が必要である。また、主要な水産物であるホタテガイを分析し、現在の貝毒検査の公定法であるマウス毒性試験 (MBA) との相関について検証した。その結果、MBAの半分程度の毒力しか機器分析で説明できなかった。その原因として、二枚貝代謝物M-toxinsの影響が考えらえた。
 主に国内での食中毒発生件数が多いキノコや死亡事例が多いキノコを対象として、毒成分を化学的性質により2系統に分類し、LC-MS/MS法により分析する方法を検討した。R3年度は食中毒の発生件数や死亡事例が多いキノコに含まれる低極性の毒成分のLC-MS/MSによる定量分析法(分析法1)の添加回収試験を実施し、良好な結果が得られた。分析法1で定量できなかった高極性のキノコ毒は、誘導体を調製することによりLC-MS/MSにより高感度に分析することが可能であった(分析法2)。
 我が国における植物性自然毒による食中毒の傾向を把握するため、令和3年度の研究では、平成3年から令和2年の30年間に厚生労働省へ報告されたキノコを原因とする食中毒事件に着目し、その発生件数及び患者数の経年変化、原因となったキノコの種類、発生地域、発生時期、原因施設等の傾向を解析した。
結論
 宮城県および北海道で漁獲されたフグの流通状況や雑種フグの出現状況を把握した。麻痺性貝毒公定法であるマウス毒性試験と国際的に妥当性が確認されたLC/MS/MS法の検査結果を比較した結果、LC/MS/MSの測定結果が低くなることが明らかになり、その一因として毒代謝物の毒性が関与していることが示唆された。主に国内での食中毒発生件数が多いキノコや死亡事例が多いキノコを対象として、毒成分を化学的性質により2系統に分類し、LC-MS/MS法により分析する方法を検討した。我が国における植物性自然毒による食中毒の傾向を把握し、自然毒のリスクプロファイルの更新に向けて情報を収集した。

公開日・更新日

公開日
2022-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,516,000円
(2)補助金確定額
29,372,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,144,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,352,540円
人件費・謝金 8,977,494円
旅費 866,154円
その他 1,421,812円
間接経費 3,754,000円
合計 29,372,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-