新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保とリスクコミュニケーションのための研究

文献情報

文献番号
202124030A
報告書区分
総括
研究課題名
新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保とリスクコミュニケーションのための研究
課題番号
21KA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田 識人(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 吉場 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 早川 英介(沖縄科学技術大学院大学 進化神経生物学ユニット)
  • 富井 健太郎(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
  • 小泉 望(大阪府立大学生命環境科学研究科)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
30,132,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子改変技術を応用した食品開発は、技術的には外来遺伝子導入による遺伝子組換え食品(GM 食品)から生物自身が持つ内在性遺伝子改変で新たな形質を生み出すゲノム編集技術応用食品(ゲノム編集食品)へ、また、その生物が持たない多数の遺伝子を導入した酵母などから新規食品機能成分を産生させる合成生物学利用へと変化している。配列に依存しない意図しない塩基変化やそこから生じる代謝成分の変化を網羅的に検出または予測し、その変化が与える影響を正確に評価することは、食品の安全性確保において急務の課題である。本研究では、(1)多様な遺伝子改変技術と開発に関する情報収集、(2)一様でない意図しない変化の影響解析のための手法開発(ゲノム、代謝成分、アレルゲン性)、(3)ゲノム編集食品の理解の前段階として不可欠な国内 GM 食品利用の現状と審査届出制度の理解に重点したリスクコミュニケーション(若手研究と連携)、(4)リスク評価側の最新技術理解と能力向上、人材育成を柱に若手研究代表者とも連携して実施する。
研究方法
本研究班構成では、意図しないゲノムDNA配列の変化の解析手法開発と実用化を柴田が、意図しないタンパクの生成に伴うアレルゲン性の評価手法開発と実用化およびアレルゲンデータベースADFSの維持更新を安達、為広、富井が、また、意図しない代謝物変化の網羅的開発手法の開発と実用化を早川が担当した。リスクコミュニケーションについては、合成生物学利用食品に重点を置きながら小泉が担当した。
結果と考察
1) 意図しないゲノムDNA配列の変化
ゲノム編集食品の安全性評価において重要な外来性DNAの残存の有無を網羅的に調べる方法として、全ゲノムシークエンスによって得られたデータを用いた解析手法の標準化に取り組んだ。その結果、ゲノムへの挿入が想定される外来性DNA配列が予め(部分的にでも)判明していれば、ショートリードシークエンサーおよびロングリードシークエンサーによって得られた全ゲノムシークエンスデータを構造変異解析やアセンブリ解析に供することで、外来性DNA残存の有無、挿入箇所、挿入された配列を明らかにすることが可能である。
2) アレルゲンデータベースADFSの維持更新
令和2年6月から令和3年5月までの1年間にNCBI PubMed に収載された論文から、エピトープ配列決定に関する9報のピアレビューを行い、6種のアレルゲンについて、総数27のエピトープ情報をADFS に追加し、データベース更新を実施した。
3) アレルゲン性評価手法
先行研究が用いている学習用データセットを調査して、機械学習に要する正例/負例のデータセットとして活用できることを確認した。また、ヒト由来MHCクラスII分子配列情報と構造情報を関連付けた。MHCクラスII分子とペプチドとの結合部位における両者の残基間相互作用の関係性を抽出する作業を重点的に行なっている。
4) リスクコミュニケーション手法
合成生物学を含めたフードテックに関する調査から、植物ベース代替肉および培養肉、組換えタンパク質を混合することで製造する代替乳、合成生物学により作られる食品添加物などの研究開発、実用化が主に海外で進んでいることが明らかとなった。
昆虫食、植物ベース代替肉、培養肉、代替乳、微細藻類の代替タンパク質に関する意識調査では、昆虫食に対する忌避感がもっとも強く植物ベース代替肉に対する受容度が最も高い傾向にあった。今後これらの結果を踏まえて、最適なリスクコミュニケーション手法を検討していく。
結論
ゲノム変化、代謝物変化、タンパクアレルゲン性予測、新開発食品に関するリスクコミュニケーションに関して、それぞれ必要な、新規評価手法の構築へ向けて進んでいる。リスクコミュニケーションも、合成生物学利用食品から培養肉・乳などまでカバーして国民理解促進へ向けて取り組んでいる。

公開日・更新日

公開日
2024-02-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-02-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
33,480,000円
(2)補助金確定額
33,363,000円
差引額 [(1)-(2)]
117,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,194,507円
人件費・謝金 5,465,104円
旅費 0円
その他 13,355,843円
間接経費 3,348,000円
合計 33,363,454円

備考

備考
若干の直接経費の各項目の使用額が変化した。備品費において予定されるものを購入したが、キャンペーン等を利用して想定より安くなった。

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-