香料を含む食品添加物の遺伝毒性から発がんに至る毒性評価スキーム確立に向けた基盤的研究

文献情報

文献番号
202124029A
報告書区分
総括
研究課題名
香料を含む食品添加物の遺伝毒性から発がんに至る毒性評価スキーム確立に向けた基盤的研究
課題番号
21KA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所  安全性生物試験研究センター 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 古濱 彩子(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 佐々 彰(千葉大学 大学院理学研究院生物学研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
30,860,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、遺伝毒性と発がん性の観点から香料の安全性をin silico、in vitroそしてin vivoで階層的に評価するスキームの開発に主眼に置き、その成果が同化学物質の効率的且つ信頼性の高い安全性評価の推進に資する新規な遺伝毒性・発がん性の包括的評価法の開発を目的とする。
研究方法
Ames試験が実施されているフラン骨格を有する香料12物質のQSAR解析と、カルボニル基とフラン骨格を有する香料様6物質のAmes実試験とQSAR予測結果との比較を行った。知識ベースと統計ベースの2種類のQSARを使用した。
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子突然変異試験をプラットフォームとして、エピジェネティックな変化を定量可能な新規試験法の構築を行った。
Ames/QSAR予測で陽性、かつAmes試験において最も顕著に陽性を示した条件下(非代謝あるいは活性化)に焦点を絞り、香料物質4種についてヒトリンパ芽球細胞を用いるTK遺伝子変異試験(TK6試験)で調べた。
In vivo遺伝毒性試験の特徴と課題に関して、遺伝毒性試験法の専門家による国際会議に参加して情報収集を行った。骨髄小核試験、肝臓小核試験、コメット試験、Pig-a試験, TGR試験についてフォローアップ試験としての課題を検討した。遺伝毒性の定量的評価に関して、in vivo遺伝毒性試験の用量反応データを用いたベンチマークドーズ(BMD)法による量的解析の検討を行った。BMD法の国内ワークショップを実施した。ゲノム解析を用いた新規の突然変異検出法の技術的予備検討を行った。
ITB用量設定試験では、500 mg/kg群で血清の肝毒性パラメーターが有意に上昇し、20 mg/kg群から肝細胞の空胞変性が認めたことから、本試験における投与量は5、50又は500 mg/kg体重/日とした。本試験では雄性gpt deltaラットにITBを13週間強制経口投与した結果、肝重量の増加及びALTの有意な上昇は50 mg/kg群から認められた。
6-MQの28日間経口投与試験の結果、1000 mg/kg投与群では全例が死亡した。500 mg/kg投与群では肝重量の増加と肝細胞肥大及び空胞変性が観察された。この結果より、本試験は肝臓を標的とした肝遺伝毒性・発がん性中期包括試験(GPGモデル)を実施することとし、投与用量は最大耐量の500 mg/kg体重/日に設定した。
結果と考察
Ames実試験とQSAR予測は一致するとは限らないが、構造に注目した考察を行い、QSARの予測精度向上に資する知見が得られた。
TK遺伝子をエピジェネティックに不活化した改良型試験細胞株LmTK6を樹立し、DNAメチル化酵素阻害剤5-aza-deoxycytidineおよび試験溶媒DMSOが引き起こすDNAメチル化状態の変動を定量することに成功した。
香料物質4種についてヒトリンパ芽球細胞を用いるTK遺伝子変異試験(TK6試験)で調べた結果、4陽性物質のうち1物質が陰性と判定された。
In vivo遺伝毒性試験の特徴と課題に関して、情報収集とその技術的課題検討を行なった。
香料の毒性評価スキームにおけるin vivo試験として、gpt deltaラットを用いた一般毒性・遺伝毒性・発がん性包括試験の有用性を検討するため、本法を用いた2-isopropyl-N-2、3-trimethylbutyramide(ITB)の包括的評価を実施した。
階層的評価におけるin vivo評価系としての遺伝毒性・発がん性中期包括試験の有用性を検討するため、in silicoおよびin vitroで遺伝毒性が明らかになった香料を対象として本法を用いた評価を行なった。本年度は6-methoxyquinoline (6-MQ)を被験物質として遺伝毒性・発がん性中期包括試験の用量設定試験を実施した。
標的臓器・組織レベルでの遺伝毒性と発がん性の両観点を同時に検証することを計画している本研究は、発がん性リスク評価からの食品の安全性確保に資するものであり、成果は厚生労働行政の施策等に直接反映できると考えられる。
結論
本研究課題で掲げる目的に対し、各階層からのアプローチによる研究を実施したことで、効率的且つ信頼性の高い安全評価法の開発にむけた基礎知見並びに予備検討結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2022-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,860,000円
(2)補助金確定額
30,860,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,170,544円
人件費・謝金 895,625円
旅費 125,570円
その他 9,668,370円
間接経費 0円
合計 30,860,109円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-13
更新日
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