文献情報
文献番号
202124028A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト末梢血誘導型ミクログリア細胞技術を用いた食品の神経毒性評価システムの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
20KA3005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
扇谷 昌宏(旭川医科大学 医学部 解剖学講座機能形態学分野)
研究分担者(所属機関)
- 原口 祥典(佐賀大学 医学部精神科)
- 加藤 隆弘(九州大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,342,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品中に微量に含まれる汚染物質(金属類)が示す毒性は様々である。その中でも神経毒性は重篤であり、注意が必要である。近年、神経毒性はニューロン(神経細胞)だけでなく、周囲のミクログリアも関与していることが明らかとなり、その相互作用が特に注目されている。
一方、食品安全の分野においては未だニューロンしか研究対象にされておらず、本事業(食品の安全確保推進研究事業)においてもミクログリアに着目した研究は皆無である。
本研究は、汚染物質(金属類)のミクログリアおよびニューロンに対する影響を明らかにし、科学的根拠に基づく食品安全行政に寄与することを目的としている。
一方、食品安全の分野においては未だニューロンしか研究対象にされておらず、本事業(食品の安全確保推進研究事業)においてもミクログリアに着目した研究は皆無である。
本研究は、汚染物質(金属類)のミクログリアおよびニューロンに対する影響を明らかにし、科学的根拠に基づく食品安全行政に寄与することを目的としている。
研究方法
(1)使用細胞
マウス由来のBV2細胞株(ミクログリアとして)およびNeuro2A細胞株(ニューロンとして)を実験に使用した。
(2)使用金属
実験に使用した金属は、リチウム、亜鉛、マンガン、銅、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、ガドリニウム、カドミウム、ガリウムおよびアルミニウムの塩化物を使用した。
(3)ニューロンおよびミクログリアの共培養系の構築
当然ながら、生体(脳)ではニューロン単独ではなく、グリア細胞であるミクログリアが存在している。本研究はヒトでの神経毒性評価系の構築が最終目標であるため、ただ、単純にニューロンとミクログリアを1:1で混合するのではなく、より生体を模倣する実験系を用いた。文献検索の結果、ヒトのニューロンとミクログリアの細胞数の比率が5:1であることが報告(Sandra E.Dos Santos, et al., J. Neurosci.)されており、本実験の参考にした。本研究での共培養系とは、Neuro2A細胞とBV2細胞を細胞数比=5:1で混合し、培養したものとしている。
(4)毒性評価
毒性評価は、酵素活性測定法であるWST法を用いて測定を行った。細胞を96穴プレートに播種し、24時間後に各金属種を添加した。添加24時間後にWST-8試薬を添加し、吸光度を測定した。得られた吸光度から生存率を算出した。50%細胞増殖抑制濃度(IC50値)は、濃度依存性の生存率曲線からGraphpad Prismソフトウェアを用いて算出した。
(5)FACSを用いた共培養後の細胞分取
共培養の影響を細胞ごとに評価するため、共培養後の細胞集団を回収し、FACSを用いてニューロンとミクログリアに分離して回収した。分離にはCD11b抗体を用いて、CD11b陽性細胞をミクログリア、陰性細胞をニューロンとした。なお、コントロールとして用いた単独培養の細胞もFACSを用いて同様の操作を行った。
(6)遺伝子発現解析
FACSによって分取した細胞は、Total RNAを抽出し、cDNAライブラリを合成した。その後、リアルタイムPCR装置を用いて、各種遺伝子発現を解析した。対象とした遺伝子は、ニューロン・ミクログリアの障害性と関連が深い神経炎症に関わる遺伝子を用いた。
マウス由来のBV2細胞株(ミクログリアとして)およびNeuro2A細胞株(ニューロンとして)を実験に使用した。
(2)使用金属
実験に使用した金属は、リチウム、亜鉛、マンガン、銅、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、ガドリニウム、カドミウム、ガリウムおよびアルミニウムの塩化物を使用した。
(3)ニューロンおよびミクログリアの共培養系の構築
当然ながら、生体(脳)ではニューロン単独ではなく、グリア細胞であるミクログリアが存在している。本研究はヒトでの神経毒性評価系の構築が最終目標であるため、ただ、単純にニューロンとミクログリアを1:1で混合するのではなく、より生体を模倣する実験系を用いた。文献検索の結果、ヒトのニューロンとミクログリアの細胞数の比率が5:1であることが報告(Sandra E.Dos Santos, et al., J. Neurosci.)されており、本実験の参考にした。本研究での共培養系とは、Neuro2A細胞とBV2細胞を細胞数比=5:1で混合し、培養したものとしている。
(4)毒性評価
毒性評価は、酵素活性測定法であるWST法を用いて測定を行った。細胞を96穴プレートに播種し、24時間後に各金属種を添加した。添加24時間後にWST-8試薬を添加し、吸光度を測定した。得られた吸光度から生存率を算出した。50%細胞増殖抑制濃度(IC50値)は、濃度依存性の生存率曲線からGraphpad Prismソフトウェアを用いて算出した。
(5)FACSを用いた共培養後の細胞分取
共培養の影響を細胞ごとに評価するため、共培養後の細胞集団を回収し、FACSを用いてニューロンとミクログリアに分離して回収した。分離にはCD11b抗体を用いて、CD11b陽性細胞をミクログリア、陰性細胞をニューロンとした。なお、コントロールとして用いた単独培養の細胞もFACSを用いて同様の操作を行った。
(6)遺伝子発現解析
FACSによって分取した細胞は、Total RNAを抽出し、cDNAライブラリを合成した。その後、リアルタイムPCR装置を用いて、各種遺伝子発現を解析した。対象とした遺伝子は、ニューロン・ミクログリアの障害性と関連が深い神経炎症に関わる遺伝子を用いた。
結果と考察
本研究の申請時はミクログリア単独培養での評価系構築を想定してたが、ヒアリングで審査員の先生方から「ミクログリア+ニューロンの評価系を目指せばより望ましい」との貴重なコメントをいただいた。そこで、R2年度はミクログリアを用いた実験系の基礎構築に加え、当初の予定(申請書提出時)には無かったマウス由来ニューロンを用いた実験系の基礎構築も行った。その成果によって、本年度ではスムーズに共培養系の実験系を構築でき、共培養系を用いた毒性評価を行うことができた。
本年度の成果としてミクログリアおよびニューロンの共培養系において、ニューロン単独培養とは異なる毒性を示す金属種が存在していることを初めて明らかにすることができた。加えて、共培養系のみで遺伝子発現変化を伴う反応が起こっており、単独培養と共培養では細胞の状態が大きく変化してる可能性も示唆された。これは従来のニューロン単独培養での毒性評価では真の(生体を反映した)毒性評価には不十分であることを示唆しており、本研究の意義を示す重要な成果である。
本年度の成果としてミクログリアおよびニューロンの共培養系において、ニューロン単独培養とは異なる毒性を示す金属種が存在していることを初めて明らかにすることができた。加えて、共培養系のみで遺伝子発現変化を伴う反応が起こっており、単独培養と共培養では細胞の状態が大きく変化してる可能性も示唆された。これは従来のニューロン単独培養での毒性評価では真の(生体を反映した)毒性評価には不十分であることを示唆しており、本研究の意義を示す重要な成果である。
結論
今年度得られた成果は、従来のニューロン単独培養での毒性評価では真の(生体を反映した)毒性評価には不十分であり、グリア細胞との共培養系を用いることが必要であることを示唆している。従来のニューロンのみを対象としていた食品の安全性確保推進研究にミクログリアの重要性を提案できるものであると考える。
公開日・更新日
公開日
2022-09-28
更新日
-