食品中の放射性物質の規制継続による線量低減効果に関する研究~蓄積検査結果の有効活用による検証~

文献情報

文献番号
202124027A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質の規制継続による線量低減効果に関する研究~蓄積検査結果の有効活用による検証~
課題番号
20KA3004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小山内 暢(弘前大学 大学院保健学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 幸清(弘前大学 大学院保健学研究科)
  • 對馬 惠(弘前大学 大学院保健学研究科)
  • 細川 翔太(弘前大学 大学院保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,235,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 東京電力(株)(当時)福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)を受け、平成23年3月に設定された暫定規制値に続き、平成24年4月からは食品中の放射性物質に関する現行の基準値(以下「基準値」という。)が適用されている(一般食品の場合で100 Bq/kg)。この基準値を指標として、原子力災害対策本部で定めたガイドラインに基づき17都県を中心に地方自治体においてモニタリング検査が継続して行われている。原発事故から10年あまりが経過した現在までに蓄積されたモニタリング検査結果は相当数に及ぶ。本研究では、当該検査結果を有効活用し、基準値以内の検査結果群及びすべての検査結果群それぞれから放射能濃度を無作為抽出して食品摂取に係る内部被ばく線量を推定し、基準値の設定や違反食品の流通制限といった規制の効果を検証した。
研究方法
 研究2年目である令和3年度は、平成24年度から平成28年度までに採取・購入された試料を対象として検証を行った。また、今年度は、新たな試みとして、地元住民にとって多様な価値があるが山間部に自生し栽培管理が困難なことが多い山菜(以下「山菜」という。)の摂取量を反映させた線量推定も行った。まず、厚生労働省が公表している食品中の放射性物質の検査結果と食品摂取量を紐づけるために、検査結果の品目名を国民健康・栄養調査における食品の98小分類に飲料水や山菜を加えた合計100分類に対応させた。次に、検査結果から食品の種類(全99または100種類)ごとに放射能濃度(セシウム134と137の合計値(Bq/kg))の無作為抽出を繰り返し、各食品の年間摂取量(kg)及び半減期で加重平均した経口摂取に係る内部被ばく線量係数(Sv/Bq)を乗じて全ての99または100種類分を合算し、仮想10,000人分の預託実効線量(mSv/年)を算出した。すべての検査結果、基準値以内の検査結果から抽出し算出した預託実効線量をそれぞれ、「規制なし」(基準値設定や違反食品の流通制限がないものと仮定)、「規制あり」(基準値設定や違反食品の流通制限があり)の場合とした。
結果と考察
 平成24 年度の推定内部被ばく線量(山菜の摂取量を反映した場合)の中央値、95パーセンタイル値、99パーセンタイル値は、規制なしの場合でそれぞれ 0.0485、0.183、10.6 mSv/年であり、規制ありの場合ではそれぞれ 0.0431, 0.0786, 0.236 mSv/年であった。このように、平成24 年度は特に規制の効果が大きかった。平成25年度以降は、規制ありと規制なしの内部被ばく線量に顕著な違いはなく、年の経過とともに被ばく線量は減少する傾向にあった。各年度の規制ありの内部被ばく線量は、基準値設定根拠の1 mSv/年を大幅に下回った。また、山菜の摂取量を反映させた場合とさせない場合の推定線量は同等であったが、山菜の摂取量を反映させることで、高パーセンタイルに対して内部被ばく線量の過大評価を防ぐことができ、より精緻な線量推定が可能であると考えられた。
結論
 自生しており栽培管理が困難なことが多いために比較的高濃度の放射性物質を含むことのある山菜の摂取を考慮しても、日本における放射性物質に関する食の安全は確保されていることが確認できた。

公開日・更新日

公開日
2022-11-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-11-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,905,000円
(2)補助金確定額
2,905,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,920,263円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 314,737円
間接経費 670,000円
合計 2,905,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-11-14
更新日
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