食中毒調査の迅速化・高度化及び広域食中毒発生時の早期探知等に資する研究

文献情報

文献番号
202124014A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒調査の迅速化・高度化及び広域食中毒発生時の早期探知等に資する研究
課題番号
20KA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大西 真(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 林 哲也(九州大学大学院医学研究院基礎医学部門病態制御学講座細菌学分野)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
  • 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所  衛生微生物部)
  • 寺嶋 淳(岩手大学 農学部共同獣医学科 )
  • 平井 晋一郎(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
37,506,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症の事例調査のためにこれまで各種の分子型別法が開発され、利用されてきた。反復配列多型解析法(MLVA法)が迅速性、精微性に優れていることから、国内では主にMLVA法を用いた解析が行われている。本研究ではこれまで蓄積されてきたMLVA型データを基盤に有効性を明確にし(R2年度)、R3年度には、MLVA 型が一致した場合あるいは類似型であった場合の検査結果の評価の仕方を整理し、R3-R4年度にかけて、集団事例における評価を行うことで検証する。MLVA解析の利用を一層進めるために、検査結果の正確性を担保する精度管理手法の確立を行う。R2年度には、精度管理手法のためのマニュアルを整備し、R3年度に地方衛生研究所の協力で試行し、R4年度にはMLVA解析を実施している地方衛生研究所に対して精度管理を実施する計画とする。また食中毒事例由来株、家畜由来株の体系的な収集システムの構築を目指す。
研究方法
研究代表者らにより、感染研に送付された腸管出血性大腸菌2020年分離株に対してMLVA法により解析した。方法はIzumiyaら(2008、2020)の方法に従って実施した。EHEC O76:H7およびO111:H8の菌株を対象に、より高精度なSNP解析法の検討を行った。SNP解析時には、参照配列および解析を行うデータセットが重要と考えられたため、それぞれに複数の条件を設けて解析を行った。O76:H7では、参照配列として、近縁(O76:H7 JNE132847株の完全長ゲノム配列)または遠縁(O157:H7 Sakai株)の2株を用いた。データセットとしては、多様な大腸菌を含む34株(O76:H7 8株を含む)またはO76:H7 8株のみでの解析、の2条件で行った。O111:H8の解析では、計878株分のゲノムデータを用いた。この中には79事例のクラスター(疫学関連のある事例)が含まれており、このうち10株以上のクラスター15事例を対象とした。参照配列としては、O111:H8の代表株(11128株)、クラスター内の株、またはO157:H7 Sakai株の3種を用いた。データセットしては、O111:H8 878株をまとめて解析、またはクラスター内の株のみで解析、の2条件を設けた。5名の分担研究者によりそれぞれの課題に取り組み、その結果を代表研究者が総括した。
結果と考察
感染研細菌第一部において、2430株について分子型別解析を実施した。このうち2058株についてMLVA法による解析を実施した。解析依頼施設数は85施設であった。各血清群において同定された型数は、O157が526、O26が160、O111が71、O103が44、O121が16、O145が10、O165が6、O91が29であった。
MLVA型別を実施する地方自治体は、現在25施設であった。これらの施設は、感染研に各自治体で解析した菌株のMLVAデータを送付し、感染研において統一型名を付与した。その菌株数は684株であった。このうち416株については、菌株が感染研に送付され、感染研の結果と比較し精度確認が行われた。感染研の結果と一致したものは92%であり、それ以外の株もほとんどすべてが1遺伝子座違いであった。
2014-2020年に発生した集団事例のうち、菌株数10以上の事例97件、約2500株について、各事例内で各遺伝子座の標準偏差を算出し、各遺伝子座の多型についての評価を行った。
最適なSNP解析条件を検討するために、参照配列と解析するデータセットの2条件が型別能に与える影響ついて、EHEC O76:H7およびO111:H8の全ゲノム配列データをもとに検討した。この結果、近縁株を参照配列に用いて、近縁株のみで解析した場合に型別能が最大になることが明らかとなった。さらに参照配列の選択よりも、近縁株のみで解析することの方が、型別能に与える影響が大きいことが示された。
結論
ゲノム解析を含めた分子型別手法とサーベイランスを連携して、実務として対策・対応に結びつけていくことが重要である。それぞれの解析手法の特性の理解が進んだ。事例対応にはMLVA法の利便性が高い。しかしながら、汎用性の高いゲノム解析の利用を進める方策を考案する必要がある。同時に家畜・食中毒事例による食品からの分離菌株の体系的な収集とそのデータベース化も重要である。その活動は緒についたばかりであるが、継続的に実施していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2022-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-24
更新日
2022-09-14

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,837,000円
(2)補助金確定額
36,498,000円
差引額 [(1)-(2)]
3,339,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 25,529,613円
人件費・謝金 6,308,484円
旅費 0円
その他 2,329,632円
間接経費 2,331,000円
合計 36,498,729円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
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