既存添加物・褐色系フラボノイド色素群の化学構造の解明

文献情報

文献番号
200837059A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物・褐色系フラボノイド色素群の化学構造の解明
課題番号
H20-食品・若手-022
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 裕才(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 既存添加物には,褐色系フラボノイド色素として「カカオ色素」等の8品目が存在する。これらは,光や熱に安定で染色性も高いことから使用頻度が非常に高い。色素本体はフラボノイド類であるとされているが,その化学構造は未解明である。その一因は,色素が高分子化合物であるため,単一成分として単離・精製することが極めて難しいことにある。食品添加物に対する国民の関心は高く,安全性の確保のためにも添加物中の有効成分は必ず解明されなければならない。今回の研究は,最新の機器類と新たな切り口で,褐色色素の化学構造の解明にせまることを目的とした。
研究方法
 本年度は,タマネギ色素を研究対象とした。黄色タマネギの乾燥外皮を10%エタノールで抽出し,抽出液をLC/MSで精査して低分子の色素を探索し,各種クロマトグラフィーとHPLCを用いて単離後,ESI-MS分析,二次元NMR測定,化学修飾を用いて構造決定を行った。得られた構造から,タマネギ色素の形成過程が推測されたので,その推測をもとに試験管内で色素の生成を試みた。また,褐色色素間で電気的特性に差があるのではないかとの推測もされたので,濾紙電気泳動法による分析の予備的検討も行った。
結果と考察
 黄色タマネギの乾燥外皮抽出液中から,新規色素化合物としてcepaic acid (9-carboxy-1,3,6,8-tetrahydroxyxanthylium)の単離と構造決定に成功した。得られたcepaic acidの構造は,本色素がフロログルシノールのグリオキシル酸への求核反応によって生成されることを示唆した。そこで両物質をリン酸緩衝液中で混ぜ攪拌したところ,反応液は褐変しcepaic acidの生成が確認された。しかしアスコルビン酸の存在下で色素生成は起こらなかった。これらの結果から,タマネギ色素の色素本体は,タマネギ鱗茎中に含まれるクエルセチンの酸化過程で生じるフロログルシノールの重合および酸化によって形成されるxanthylium色素である可能性が強く示唆された。また,4種の褐色色素(カカオ色素,カキ色素,タマリンド色素,タマネギ色素)は濾紙電気泳動によって中性条件下で陰極側に移動することが確認された。
結論
 黄色タマネギの乾燥外皮から新規色素cepaic acidの単離構造決定に成功し,タマネギ色素の色素本体が,タマネギ鱗茎に含まれるフラボノイド・クエルセチンの酸化分解物の重合および酸化によって生じるxanthylium色素であることが強く示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
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