食中毒原因ウイルスの不活化および高感度検出法に関する研究

文献情報

文献番号
202124006A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒原因ウイルスの不活化および高感度検出法に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19KA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 亮介(国立感染症研究所 ウイルス第二部 第五室)
研究分担者(所属機関)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 片山 浩之(東京大学大学院工学系研究科)
  • 佐々木 潤(藤田医科大学 医学部)
  • 藤井 克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部 第一室)
  • 村上 耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
19,370,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食中毒の原因と疑われる食材からのウイルス検出は、汚染ウイルス量が少ない事や、食品に含まれる夾雑物が検出を妨げる事などから困難であり、原因食品や汚染経路の特定に至らず、効果的な対策を取る為の知見も不足している。本研究では、各食中毒の原因ウイルスを迅速・確実に検出するために、国内流行状況の調査をするとともに、食材やその洗浄水からのウイルス濃縮/精製法および高感度検出法を開発する。
研究方法
(1) 国内での報告が稀な遺伝子型1のE型肝炎ウイルスに感染した患者の検体からウイルス分離を行う。国内のA型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスの分子疫学調査を行う。
(2) アイチウイルスのリアルタイムRT-LAMP法について検出感度を検討する。
(3)ロタウイルスのリアルタイムPCR法について、非特異反応の少ない条件検討を行う。
(4)ノロウイルスをスパイクした汚染シジミを加温処理し、ウイルスの不活化条件を明らかにする。
(5) 野菜表面上のウイルスの回収法として、ふきとり法及びパウダリング法の検出感度の検討を行う。
(6) カキの中腸腺抽出液に段階希釈したノロウイルス懸濁液を使い、droplet digital PCRによる定量法を検討する。
結果と考察
(1)遺伝子型1のE型肝炎ウイルスの分離に成功し、感染性ウイルスの全長塩基配列情報を決定した。また2021年のA型肝炎ウイルスとE経口肝炎ウイルスの塩基配列情報について、系統樹解析を行った。
(2)アイチウイルスのRT-LAMP法により、10の3乗コピーのウイルスRNAまで検出できた。河川水からアイチウイルスRNAを検出した。
(3)ロタウイルスのリアルタイムPCR法について、プライマー・プローブの濃度の検討を行い、従来の方法と比較して、非特異反応の発生頻度がおよそ半減する条件が得られた。
(4)ノロウイルスを接種したシジミは、90℃の熱湯中で1分間の加熱により、ウイルスの感染性が失われる事が確認された。
(5)野菜表面上のウイルスの効率的な回収法として、液体窒素を用いたパウダリング法が効率良く、安定した検出能力を有していることが示された。
(6)カキの中腸腺抽出液に段階希釈したノロウイルス懸濁液についてdroplet digital PCR (ddPCR)によって定量した結果、ddPCR法、特にRT反応からddPCRまでOne-Stepで行う方法が最も検出感度が高い結果が得られた。
結論
(1)遺伝子型1のE型肝炎ウイルス(HEV)のウイルス分離を行い、感染性ウイルスの全長塩基配列情報を決定した。今後のHEV研究への利用が期待される。2021年のE型肝炎の報告数は例年並みで、またその遺伝子型は3および4で占められていた。
(2)アイチウイルスのRT-LAMP法により、10の3乗コピーのウイルスRNAまで検出できる条件が得られた。この方法により、河川水からアイチウイルスRNAが検出された。
(3)ロタウイルスのリアルタイムqPCR検出法において、幅広い遺伝子型を高い特異性で検出する最適な方法は、Freemanらが設計したプライマー・プローブセットを用い、それぞれの終濃度を0.4μM、0.2μM、0.2μMとし、アニーリング+伸長反応は56℃で行うものである。
(4) シジミから抽出したノロウイルスが腸管オルガノイドに感染すること、90℃・1分間の加熱で感染性が失われることを直接的に示した。得られた技術及び知見は、二枚貝中ノロウイルスの不活化方法の開発に活用されることが期待される。
(5) 野菜表面上からの効率的なウイルス検出手法の探索を行ったところ、最も誤差が小さく且つ高い検出感度を示したパウダリング法が適した手法であることが示された。
(6)カキの中腸腺抽出液に段階希釈したノロウイルス懸濁液についてqPCRおよびddPCRによって定量した結果、ddPCR法、特にRT反応からddPCRまでOne-Stepで行う方法が最も検出感度が高いことを明らかにした。これらの結果は、今後の食中毒原因ウイルスの感染制御に向け、有益な方法論を提供するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202124006B
報告書区分
総合
研究課題名
食中毒原因ウイルスの不活化および高感度検出法に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19KA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 亮介(国立感染症研究所 ウイルス第二部 第五室)
研究分担者(所属機関)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 片山 浩之(東京大学大学院工学系研究科)
  • 佐々木 潤(藤田医科大学 医学部)
  • 藤井 克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部 第一室)
  • 村上 耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食中毒の原因と疑われる食材からのウイルス検出は、汚染ウイルス量が少ない事や、食品に含まれる夾雑物が検出を妨げる事などから困難であり、原因食品や汚染経路の特定に至らず、効果的な対策を取る為の知見も不足している。各食中毒の原因ウイルスを迅速・確実に検出するために、国内流行やその対応状況の調査を行うとともに、食材やその洗浄水からのウイルス濃縮/精製法および高感度検出法を開発する。
研究方法
(1)抗体を用いたHEVの濃縮方法の検討を行った。イノシシの血清についてHEV IgGおよびHEVゲノムの測定を行った。患者検体からHEVの分離および塩基配列の決定を行った。国内のHAVおよびHEVの遺伝子情報について系統樹解析を行った。
(2)アイチウイルスのリアルタイムRT-PCRおよびリアルタイムRT-LAMP法の条件検討を行った。河川水からのウイルスRNAの検出を試みた。
(3)ロタウイルスの検出法の検討として、ウイルスRNAの抽出法、qPCRの条件検討を詳細に行った。
(4)ノロウイルスをスパイクした汚染シジミを加温処理し、不活化条件を明らかにした。ノロウイルスの存在部位を視覚的に解析するために、シジミの透明化処理条件を検討した。
(5)野菜表面上のウイルスの回収法として、ふきとり法及びパウダリング法の検討を行った。
(6)地衛研の食中毒関連検査状況についてアンケートを実施した。カキの中腸腺抽出液に段階希釈したノロウイルス懸濁液を使い、droplet digital PCRによる定量法を検討した。
結果と考察
(1)培養液からHEVの濃縮が可能となった。イノシシ血清において26%がHEV IgG陽性であったが、HEVゲノムは検出されなかった。遺伝子型1のHEVの分離を行い、ゲノム全長の塩基配列を決定した。
(2)アイチウイルスのリアルタイムRT-PCRおよびRT-LAMP法の条件検討を行った。河川2か所で採集したサンプルについてアイチウイルスRNAを検出した。
(3)ロタウイルスのRNAの抽出方法の比較において感度良く検出される例が見られた。qPCRのプライマー・プローブセットの条件検討を行い、十分な感度を持ち、非特異反応を抑性する条件を見出した。
(4)ノロウイルスを接種したシジミを90℃で加熱したサンプルではウイルス増殖が認められなかった。シジミにおける中腸腺の透明化を検討したが、FITC標識デキストラン添加によるシグナルの観察には至らなかった。
(5)野菜表面のウイルス測定において、ガラスフィルター・ガラスウールが吸着特性において良い結果が得られた。野菜表面のウイルスの効率的な回収法として、パウダリング法が効率良く、安定していた。
(6)地衛研の食中毒関連検査の現状や要望、課題等を明らかにした。カキの中腸腺抽出液に段階希釈したノロウイルス懸濁液における定量法として、One-Step のddPCRで検出感度が高い結果が得られた。
結論
(1)HEVを含む培養上清からウイルス濃縮が可能となった。イノシシ血清からHEV IgG抗体が検出されたが、ウイルス遺伝子は検出されなかった。遺伝子型1のHEVのウイルス分離を行い、感染性ウイルスの全長塩基配列情報を決定した。
(2)アイチウイルスのリアルタイムRT-PCR法に関して、1-step法で高感度にウイルスRNAを検出できた。RT-LAMP法では10の3乗コピーのウイルスRNAまで検出できる条件が得られた。河川水からアイチウイルスRNAが検出された。
(3)ロタウイルスのリアルタイムqPCR検出法において、幅広い遺伝子型を高い特異性で検出する最適な条件が決定された。
(4)シジミから抽出したノロウイルスが腸管オルガノイドに感染すること、90℃・1分間の加熱で感染性が失われることを直接的に示した。シジミにおけるノロウイルスの局在解析にさらなる検討が必要であった。
(5) 水中のウイルス測定にはガラスウールに吸着させる方法が適していた。野菜表面上からの効率的なウイルス検出手法の探索を行ったところ、パウダリング法が適した手法であることが示された。
(6)自治体における食中毒検査体制、食中毒事例発生時の検査方法等について調査を行った。カキ抽出液に変量のノロウイルス懸濁液を添加する実験系を構築し、デジタルPCR法が従来のリアルタイムPCR法よりも検出感度が高いことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2022-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202124006C

収支報告書

文献番号
202124006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,731,000円
(2)補助金確定額
20,731,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 16,123,763円
人件費・謝金 2,826,375円
旅費 0円
その他 479,404円
間接経費 1,361,000円
合計 20,790,542円

備考

備考
自己資金 59,542円

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-