文献情報
文献番号
202124002A
報告書区分
総括
研究課題名
食品や環境からの農薬等の摂取量の推計と国際標準を導入するための研究
課題番号
19KA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
- 根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
- 大河内 博(早稲田大学 創造理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,096,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究の目的:厚生労働省では食品を介した残留農薬等の暴露量を推定し、ADIの80%を超えないよう食品中残留農薬等の基準値を設定している。しかし、食品以外の暴露経路も懸念され、例えば、家庭用殺虫剤を使用することで経気暴露の可能性がある。食品を介した農薬等の暴露推定のみを根拠とした食品中残留農薬の基準値設定は、食品以外の暴露量に不確定な要素があるため、精密なリスク管理には食品以外の経路も含めた総合的評価が必要である。
また、国内の残留農薬等の検査における検査部位は『食品、添加物等の規格基準』に規定されているが、一部の食品はCODEX基準と一致していない。検査部位の不一致は輸出入の際に係争の原因となるため、国際的な整合性を図る必要がある。CODEX基準の検査部位を採用した場合、現行法とは試料マトリックス等が異なるため、試験操作や分析結果に影響を及ぼす可能性がある。そのため、影響の有無や程度を明らかにするとともに対処法について提案する必要性がある。
そこで、下記の4課題を行うことで、上記の課題について検討を行った。
1) 食品を介した農薬等の摂取量推定に関する研究
2) 食品以外の暴露要因である環境中の農薬濃度の評価に関する研究
3) 総合的な摂取量評価における推定値の精緻化および信頼性の向上に関する研究
4) 検査部位の変更が残留農薬等の検査及び分析結果に及ぼす影響と対処法の検討
また、国内の残留農薬等の検査における検査部位は『食品、添加物等の規格基準』に規定されているが、一部の食品はCODEX基準と一致していない。検査部位の不一致は輸出入の際に係争の原因となるため、国際的な整合性を図る必要がある。CODEX基準の検査部位を採用した場合、現行法とは試料マトリックス等が異なるため、試験操作や分析結果に影響を及ぼす可能性がある。そのため、影響の有無や程度を明らかにするとともに対処法について提案する必要性がある。
そこで、下記の4課題を行うことで、上記の課題について検討を行った。
1) 食品を介した農薬等の摂取量推定に関する研究
2) 食品以外の暴露要因である環境中の農薬濃度の評価に関する研究
3) 総合的な摂取量評価における推定値の精緻化および信頼性の向上に関する研究
4) 検査部位の変更が残留農薬等の検査及び分析結果に及ぼす影響と対処法の検討
研究方法
課題1) ADIに対する推定摂取量の割合が高いと推定されている農薬、国民の関心が高まっているネオニコチノイド系農薬および残留性の高い有機塩素系農薬に対して、食品を介した摂取量評価を行った。
課題2) 令和2年度から3年度にかけては、地方部 (愛媛県) と都市部 (東京都) において、大気中農薬濃度の継続的なモニタリングを行い、季節変動等の把握を行った。
課題3) 不検出値を含むデータに対する統計的妥当性の高い推定法の検討とモンテカルロシミュレーション(MCS)を用いた確率論的な摂取量推定を行った。
課題4) 検査部位が変更される果実を含めた10食品について、通常の常温磨砕法よりも均質な試料が得られる可能性が高い凍結粉砕法を用いた試料調製を検討した。凍結粉砕法の操作手順を確立した後、試料の粉砕状況及び分析値のばらつきを常温磨砕法と比較した。
課題2) 令和2年度から3年度にかけては、地方部 (愛媛県) と都市部 (東京都) において、大気中農薬濃度の継続的なモニタリングを行い、季節変動等の把握を行った。
課題3) 不検出値を含むデータに対する統計的妥当性の高い推定法の検討とモンテカルロシミュレーション(MCS)を用いた確率論的な摂取量推定を行った。
課題4) 検査部位が変更される果実を含めた10食品について、通常の常温磨砕法よりも均質な試料が得られる可能性が高い凍結粉砕法を用いた試料調製を検討した。凍結粉砕法の操作手順を確立した後、試料の粉砕状況及び分析値のばらつきを常温磨砕法と比較した。
結果と考察
課題1) 対象とした農薬の1日推定摂取量のADIに対する比率を算出したところ、全ての農薬において、対ADI比は1%未満であった。対ADI比が比較的高かったのは、クロルデン (0.32%), ヘプタクロル (0.19%), クロルピリホス (0.18%), アセフェート (0.13%)であった。
課題2) 2019年度に構築した分析法を基にして、都市部と地方部において大気中農薬濃度の分析を行った。地方においてブプロフェジンのみが検出され、都市部においてはフェニトロチオン、アセフェート、フルアジホップブチル等が検出された。検出された大気中農薬濃度はいずれも低値であり、1日に最大濃度の大気中農薬を24時間暴露したと仮定しても、全ての農薬においてADIに対する比率は1%未満であった。
課題3) 1日農薬摂取量の平均値について、ベイズ推定(BE)法の推定値を、最尤推定(MLE)法と比較した結果、BE法による推定結果の方がMLE法による推定結果よりも妥当である可能性が示唆された。また、ゼロ過剰対数正規 (ZILN) 分布を仮定して数値シミュレーションにより推定法の比較を行った。その結果、MLE法よりもBE法の方が、推定の真度・精度・妥当性が良好であった。上記の結果を基にゼロ過剰モデルも考慮して、各食品群中の農薬濃度分布をBE法で推定し、二次元MCSによる残留農薬摂取量分布を推定した。ADIを超過する確率は、アセフェートの0.001%が最大であった。
課題4) 検査部位の変更が残留農薬等の検査及び分析結果に及ぼす影響と対処法の検討:
通常の常温磨砕法よりも均質な試料が得られる可能性が高い凍結粉砕法を用いた試料調製を検討し、粉砕状況等を常温磨砕法と比較した。その結果、柔軟性のある果皮は凍結粉砕法の方が微粒子となったのに対し、硬い種子や果皮は常温磨砕法の方が小さくなる傾向が認められ、食品によって均質化しやすい試料調製法が異なることが明らかとなった。また、均質性が低い場合、少量の試料を分析に供すると農薬の分布によっては分析値のばらつきが大きくなることが示された。
課題2) 2019年度に構築した分析法を基にして、都市部と地方部において大気中農薬濃度の分析を行った。地方においてブプロフェジンのみが検出され、都市部においてはフェニトロチオン、アセフェート、フルアジホップブチル等が検出された。検出された大気中農薬濃度はいずれも低値であり、1日に最大濃度の大気中農薬を24時間暴露したと仮定しても、全ての農薬においてADIに対する比率は1%未満であった。
課題3) 1日農薬摂取量の平均値について、ベイズ推定(BE)法の推定値を、最尤推定(MLE)法と比較した結果、BE法による推定結果の方がMLE法による推定結果よりも妥当である可能性が示唆された。また、ゼロ過剰対数正規 (ZILN) 分布を仮定して数値シミュレーションにより推定法の比較を行った。その結果、MLE法よりもBE法の方が、推定の真度・精度・妥当性が良好であった。上記の結果を基にゼロ過剰モデルも考慮して、各食品群中の農薬濃度分布をBE法で推定し、二次元MCSによる残留農薬摂取量分布を推定した。ADIを超過する確率は、アセフェートの0.001%が最大であった。
課題4) 検査部位の変更が残留農薬等の検査及び分析結果に及ぼす影響と対処法の検討:
通常の常温磨砕法よりも均質な試料が得られる可能性が高い凍結粉砕法を用いた試料調製を検討し、粉砕状況等を常温磨砕法と比較した。その結果、柔軟性のある果皮は凍結粉砕法の方が微粒子となったのに対し、硬い種子や果皮は常温磨砕法の方が小さくなる傾向が認められ、食品によって均質化しやすい試料調製法が異なることが明らかとなった。また、均質性が低い場合、少量の試料を分析に供すると農薬の分布によっては分析値のばらつきが大きくなることが示された。
結論
課題1) 検討対象の全ての農薬において、食事を介した健康リスクは小さいと結論できた。
課題2) 検討対象の全ての農薬において、大気吸入による健康リスクは小さいと結論できた。
課題3) BE法は農薬の摂取量解析において有用な推定法である。
課題4) 食品によって適切な試料調製法を選択するのが望ましいと考えられた。
課題2) 検討対象の全ての農薬において、大気吸入による健康リスクは小さいと結論できた。
課題3) BE法は農薬の摂取量解析において有用な推定法である。
課題4) 食品によって適切な試料調製法を選択するのが望ましいと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2024-01-19
更新日
-