食品添加物の安全性確保に資する研究

文献情報

文献番号
202124001A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の安全性確保に資する研究
課題番号
19KA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部)
  • 多田 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 北村 陽二(金沢大学疾患モデル総合研究センター)
  • 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,716,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の安全性確保のため、リスク評価及びリスク管理に摂取量推定が欠かせないことから、1)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究、2)香料使用量に関わる調査研究、3)マーケットバスケット(MB)方式による低揮発性香料の摂取量調査を行った。また、香料化合物の品質の確保のために、4)香料化合物規格の国際整合化に関わる調査研究において、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議 (JECFA)規格の見直しを行った。さらに、食品添加物の規格試験法(食品添加物公定書 一般試験法)の向上のため、5)食品添加物公定書一般試験法の改良に関する調査研究、6)赤外スペクトル測定法に関する研究並びに7)残留溶媒試験法に関する研究を行った。
研究方法
1)食品添加物製造・輸入業者を対象に、指定添加物第13回調査として令和元年度の製造・輸入量の追調査を、既存添加物第8回調査として令和2年度の製造・輸入量のアンケート調査を行った。2)令和2年1月から12月に国内で食品香料製造に使用した香料化合物及び天然香料の量について、食品香料を製造している会社に調査を依頼し、回答を得た。3)低揮発性ケトン系香料を対象にQuEChERS法をガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)と組み合わせ、MB試料を分析し、摂取量を求めた。4)JECFA規格の検証未終了の28品目について、問題点を検証、整理し規格案の設定を行った。5)これまでの検討で得られた結果を基に、食品添加物公定書一般試験法の質量分析法に記載すべきと考えられる内容について、文章案を検討した。6)減衰全反射法(ATR法)により、赤外スペクトル測定を行った。7)ヘッドスペース(HS)- GC/MS により、ショ糖脂肪酸エステルの残留溶媒試験法を検討した。
結果と考察
1)指定添加物については昨年度の追調査において89.0%の回収率が、既存添加物については初年度調査において81.1%の回収率が得られ、回収された調査票をもとに集計を行った。2)日本で使用されている香料化合物及び天然香料の品目数及び総使用量は前回調査(平成27年)とほぼ同様であった。香料化合物の使用量の99.6%はFEMA GRAS品であり、天然香料の使用量は香料化合物より多かった。3)MB方式により調査した低揮発性ケトン系香料のマルトールとエチルマルトールについてADIに対する一日摂取量の割合(対ADI比)を求めたところ、最大でも3.1%と十分に低く、現状において、安全性上の特段の問題はないと考えられた。4)令和2年度に分析方法や問題点を検討した28品目について、これまで収集したデータに今回のデータを加えてJECFA規格の妥当性を検討した。新たな考え方を取り入れることにより25品目については規格設定が可能であったが、3品目は化合物自体変化しやすく規格設定が困難であった。5)第十八改正日本薬局方の質量分析法を参照して作成された質量分析法の原案について、これまでの研究の結果等に基づいて検討し、食品添加物公定書一般試験法の質量分析法(案)を作成した。6)これまでの検討結果を踏まえ、食品添加物公定書一般試験法の赤外吸収スペクトル測定法にATR法を取り入れる場合の改正案を提案した。7)SIMモードを用いたHS-GC/MSがショ糖脂肪酸エステル中のメタノール、2-プロパノール、2-ブタノン及び酢酸エチルの定量法として有用な方法であることを示すとともに、多くの添加物で共通の操作方法として使用されている蒸留法と水素炎イオン化検出器を用いたGCをまとめ、食品添加物公定書一般試験法の残留溶媒試験法(案)を作成した。
結論
食品添加物の生産量統計調査を基にした摂取量の推定、香料化合物及び天然香料の使用量の調査、MB方式による低揮発性香料の摂取量調査により、食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、これらの結果は食品の安全の確保に資すると考えられる。香料化合物規格については、JECFA規格の検証未終了であった品目について、検証を行い、設定困難なものを除き、規格設定を行った。食品添加物公定書一般試験法の改良に関する研究では、食品添加物公定書一般試験法の質量分析法(案)を作成し、赤外スペクトル測定法に関する研究では、赤外吸収スペクトル測定法にATR法を取り入れる場合の改正案を提案した。また、残留溶媒試験法に関する研究では、残留溶媒試験法(案)を作成した。今回作成した一般試験法案及び改正案は、第10版食品添加物公定書検討会において議論され、合意が得られた。

公開日・更新日

公開日
2022-08-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-08-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202124001B
報告書区分
総合
研究課題名
食品添加物の安全性確保に資する研究
課題番号
19KA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部)
  • 多田 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 北村 陽二(金沢大学疾患モデル総合研究センター)
  • 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の安全性確保のため、リスク評価及びリスク管理に摂取量推定が欠かせないことから、1)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究、2)香料使用量に関わる調査研究、3)マーケットバスケット(MB)方式による低揮発性香料の摂取量調査を行った。また、香料化合物の品質の確保のために、4)香料化合物規格の国際整合化に関わる調査研究において、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議 (JECFA)規格の見直しを行った。さらに、食品添加物の規格試験法(食品添加物公定書 一般試験法)の向上のため、5)食品添加物公定書一般試験法の改良に関する調査研究、6)赤外スペクトル測定法(IR法)に関する研究並びに7)残留溶媒試験法に関する研究を行った。
研究方法
1)指定添加物の第12回調査として、平成28年度の製造・輸入量のアンケート調査等を元に、各食品添加物の摂取量を推定し、許容一日摂取量(ADI)との比較を行い、既存添加物の第7回調査として、平成29年度の製造・輸入量のアンケート調査等を実施し、生産量統計を取りまとめた。また、それぞれ第13回及び8回調査を開始した。2)令和2年1月から12月に国内で食品香料製造に使用した香料化合物及び天然香料の量について、食品香料を製造している会社に調査を依頼し、回答を得た。3)低揮発性エステル系、アルデヒド系及びケトン系香料を対象にQuEChERS法をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)と組み合わせ、MB試料を分析し、摂取量及びADIに対する一日摂取量の割合(対ADI比)を求めた。4)平成25-30年度までに検討の終了していない173品目と未調査分の269品目を対象に実測値調査等を実施し、JECFA規格との比較検討を進めた。5)ステビオール配糖体の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)の検討を行い、得られた結果を基に、食品添加物公定書一般試験法案を検討した。6)ペースト法、液膜法及び減衰全反射法(ATR法)により、赤外スペクトル測定を行い、一般試験法改正案を検討した。7)ヘッドスペース(HS)- GC/MS により、ショ糖脂肪酸エステルの残留溶媒試験法を検討し、一般試験法案を検討した。
結果と考察
1)第12回調査のADIとの比較において問題となる品目は無かった。第7回調査では、製造量、輸入量の合計値を食品への使用量とみなし、参考までに、摂取量を求めた。2)香料化合物及び天然香料の品目数及び総使用量は前回調査(平成27年)とほぼ同様であった。香料化合物の使用量の99.6%はFEMA GRAS品であり、天然香料の使用量は香料化合物より多かった。3)対ADI比は、マルトールが3.1%で最も高く、いずれも摂取量はADIに比べて十分に低いことが示された。4)検討に必要なデータが得られた品目のうちJECFA規格で問題なしは16品目、JECFA規格には合致しないが規格案を作成できたものが87品目、規格設定が困難と判断したものが3品目であった。残りの336品目は、使用会社数が少なく検討対象から除外した。5)ステビオール配糖体分析法を用いてLC/MSによる定量法の課題について検討した。得られた結果を基に、第十八改正日本薬局方の質量分析法を参照して作成された質量分析法の原案について検討し、質量分析法(案)を作成した。6)透過法とATR法の比較検討結果を踏まえ、IR法にATR法を取り入れる場合の改正案を提案した。7)HS-GC/MSがショ糖脂肪酸エステル中の残留溶媒試験法として有用な方法であることを示すとともに、多くの添加物で共通の操作方法として使用されている蒸留法と水素炎イオン化検出器を用いたGCをまとめ、残留溶媒試験法(案)を作成した。
結論
食品添加物の生産量統計調査を基にした摂取量の推定、香料化合物及び天然香料の使用量の調査、MB方式による低揮発性香料の摂取量調査により、食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、これらの結果は食品の安全の確保に資すると考えられる。香料化合物規格については、JECFA規格の検証未終了であった品目について、検証を行い、設定困難なものを除き、規格設定を行った。食品添加物公定書一般試験法の改良に関する研究では、食品添加物公定書一般試験法の質量分析法(案)を作成し、IR法に関する研究では、ATR法を取り入れる場合の改正案を提案した。また、残留溶媒試験法に関する研究では、残留溶媒試験法(案)を作成した。今回作成した質量分析法(案)、赤外スペクトル測定法(改正案)及び残留溶媒試験法(案)は、第10版食品添加物公定書検討会において議論され、合意が得られた。

公開日・更新日

公開日
2022-08-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202124001C

収支報告書

文献番号
202124001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,716,000円
(2)補助金確定額
9,716,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,512,595円
人件費・謝金 156,000円
旅費 0円
その他 3,047,405円
間接経費 0円
合計 9,716,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-