フリーランスの業界団体における安全衛生対策と意識の実態把握のための調査研究

文献情報

文献番号
202123017A
報告書区分
総括
研究課題名
フリーランスの業界団体における安全衛生対策と意識の実態把握のための調査研究
課題番号
21JA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
横山 和仁(国際医療福祉大学 大学院医学研究科公衆衛生学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
  • 武藤 剛(北里大学 医学部 衛生学)
  • 岡村 世里奈(国際医療福祉大学大学院 )
  • 浦川 加代子(国際医療福祉大学 赤坂心理・医療マネジメント学部心理学科)
  • 遠藤 源樹(順天堂大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,056,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 フリーランスの業界団体における安全衛生対策と意識の実態把握のために、以下の目的で、研究1~4を実施した。研究1:フリーランスで働く人々の労働安全衛生の問題点を当事者に対する質問票調査で明らかにする。研究2:フリーランスで働く人々に仕事を発注している事業所の労働安全衛生対策を明らかにする。研究3:フリーランス労働者と取引関係があるIT業界の安全衛生上の課題を抽出する。研究4:近年急速にその数が増えてきているギグワーカーに対する法的保護の在り方を、欧米の事例をもとに検討する。
研究方法
 研究1:フリーランス当事者の報酬、キャリアアップ、育児介護等との両立、健康管理、安全衛生対策の取り組みや、費用負担、補償、ガイドラインの実地状況等の実情とニーズを、インターネットパネル調査会社に登録したフリーランスに該当する働き方をしている人々を対象に質問票調査を行い、2,750名の回答をまとめた。研究2:次年度の調査に向けて、関係者の意見を聴きながら、調査票を作成した。研究3:IT会社の担当者のインタビュー結果の分析を行った。研究4:「プラットフォーム労働における労働条件に関する指令案(EU欧州委員会、2021年12月)に関する文献の収集・分析等を行った。
結果と考察
 研究1:フリーランスで働く人々は、職場環境、仕事、プライベートにかかわる時間、自分の健康状態、達成感・充実感等については半数の人々が満足していたが、収入、仕事による災害・病気の補償、福利厚生等に不満を抱える者も多かった。健康診断未受診者が多く、健康状態が良くない/未治療の疾病がある者が目立った。仕事上の強い不安、悩み、ストレスを感じている人々は4割を占め、収入や安定性、将来性、老後など、お金や今後に強い不安を抱いている人が多かった。3割の回答者が自宅・自オフィス以外で働き、うち有害業務作業従事者は1割を占めた。労働災害防止には、4割ほどの人が関心を持っているが、そのうち2割が職場の労災防止対策を不適切と報告した。「ヒヤリ・ハット体験」では、「運転や運搬に伴う危険」が多かった。仕事で車両の運転・操縦をする人の3割が運転への不安を訴えていた。大部分は「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を知らず、発注側の問題行為を1~2割が経験していた。 
 研究2:実施計画について、所属大学の倫理審査委員会にて承認を受け、実調査を準備中である。調査内容は、仕事や職業生活に関する不安、悩みやストレスと感じる事柄に関して相談を受ける窓口、会員のためのスキルアップ・キャリアアップや福利厚生制度のサポート、報酬、会員の健康管理に関するサービス、交通安全、労働安全に関すること、有害物質を取り扱う会員に関すること、ガイドラインに関する事、労災保険の特別加入制度について、会員の健康課題、安全衛生への取り組み、福利厚生や自主的な安全ガイドラインの作成などの取り組み等である。
 研究3:第三次産業で元請け先に常駐する労働者についての労務時間や長時間残業の管理不徹底や、元請け―下請け間での安全衛生ルールの齟齬、さらに安全衛生管理担当者不在による下請け企業社員の被る不利益の実態が示唆された。
 研究4:当該EU指令案では、ギグワーカーの保護を図るため、ギグエコノミーのビジネスモデルの特徴である自動監視・意思決定システムによるアルゴリズム管理等を踏まえた上で、偽装労働者を防止するための労働者性の判断枠組みを設けるとともに、ギグワーカーの安全や健康に関するための措置や労働や契約条件等の明確性の確保を実現しようとしていることが分かった。
結論
 フリーランス当事者は、収入や将来への不安を感じていた。また、病気やけがで働けなくなった時の補償や、国民年金受給額、国民健康保険料等の社会保障システムに対する要望が目立ち、被雇用者として働く人々が受けている水準の社会保障を、フリーランサーは受けられていないことが明らかになった。取引先に対する立場の弱さが対等な交渉を難しくしており、適切な報酬を受けられていない、待遇が改善されることなく働き続けることを余儀なくしていることがうかがわれた。一方では、自分の裁量で自由に働くことが出来、ワークライフバランスが実現できると感じていた。こうした現状に対する、事業者およびフリーランス当事者の組織・団体の取り組みと今後あるべき方向についての調査・分析が求められている。従来とはまったく異なる新しい就業形態であるギグワーカーの保護を目的とした新たな法的枠組みを検討も必要であろう。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202123017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,872,000円
(2)補助金確定額
7,872,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 334,726円
人件費・謝金 2,402,980円
旅費 0円
その他 3,324,549円
間接経費 1,816,000円
合計 7,878,255円

備考

備考
自己資金使用のため

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-