障害をもつ労働者の労働災害の実態把握と安全衛生対策の確立に資する研究

文献情報

文献番号
202123015A
報告書区分
総括
研究課題名
障害をもつ労働者の労働災害の実態把握と安全衛生対策の確立に資する研究
課題番号
21JA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
北原 照代(滋賀医科大学 社会医学講座衛生学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 辻村 裕次(滋賀医科大学 社会医学講座衛生学部門)
  • 白星 伸一(佛教大学 保健医療技術学部)
  • 垰田 和史(びわこリハビリテーション専門職大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,604,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 就労障害者の労災事故や二次障害をはじめとする健康問題について、対面聴き取り調査・質問紙調査を通じて発生状況を把握するとともに、多職種が関わって就労障害者の心身機能と作業環境を評価し、安全衛生におけるリスク低減のための改善提案を行うことを目的として、本研究を立案した
研究方法
 COVID-19拡大を鑑み、対面調査が可能となったタイミングで、障害者が働く事業所・作業所計4か所(2作業所、2事業所)を訪問し、職場見学及び聴き取り調査(以下、訪問調査)を行った。調査内容は、事業所/作業所の情報(作業所の種類、主な事業内容、就労障害者数、職員数、勤務時間、休憩時間等)、安全衛生の体制と教育、就労障害者に対する留意事項と対策(転倒、衝突、熱中症、ケガ、痛み、疲労、交通事故、身体機能低下、重量物運搬等)、時間的配慮、設備・道具の工夫、作業環境、事故や災害の発生状況などとした。
結果と考察
・A作業所(就労継続支援B型作業所、利用障害者27人・障害者の職員5人、主に聴覚障害者)
 主な事業内容は縫製、菓子製造、下請け軽作業。聴覚障害者は視覚情報が重要なため建物内が全体に明るかった。また、人と人・物との衝突リスクに対し、注意喚起の貼り紙や、角のある物にはカバーや角を丸くする工夫がされていた。一方、手持ち電動ドリルを把持してのワッシャー取り付け作業では上肢を挙上して反復作業が行われており、一般企業でのノウハウが共有されていなかった。
・B作業所(就労継続支援B型作業所、利用障害者26人、主に車いす利用者)
 主な事業内容はパソコン作業(ウェブページ作成、各種校正・印刷)。椅子の高さ調整や、仰臥位で作業する利用者の眼に天井設置照明光が直接入らないようシェードを設けるなど、障害特性に合わせた作業環境が工夫されていた。一方、筋力低下が進行する障害者から、「車いすから便座への移乗で床に転落する事がある」との訴えがあった。ADLが加齢に伴って急速に変化する障害者の特性に対応し、定期的にADLレベルをアセスメントし、職場環境等を調整・整備する必要性を認識した。
・C事業所(民間会社、就労障害者4人…知的障害、精神障害、内部障害、肢体不自由各1名)
 主な事業内容はバネの設計と製造(金型加工・プレス成形などを含む)。総職員数50人未満。安全衛生の意識が高く、毎月、勉強会と安全パトロールを実施している。業務内容から、切創/刺傷、腰痛などが多いが、障害者の労災事例はない。本調査において、病気が進行している障害者について、主治医との連携が必要であることが認識された。また、障害者雇用継続に関して、就労障害者に配慮しつつも、事業所の観点から相談/指導できる専門家や介入の仕組みが必要と考えられた。
・D事業所(民間会社、就労障害者5人…身体障害3人、知的障害2人)
 主な事業内容は、建機の外装部品・手すり・エンジンの塗装、取引先工場内での塗装ライン請負。総職員数324人。毎月、安全衛生委員会で職場巡視し産業医に報告、常時「改善提案」の受入れがある。業務内容から切創/刺傷、腰痛などが多く、事業所として腰痛予防研修の必要性を認識している。障害者に対する配慮は特にしておらず、労災事例もない。
 COVID-19拡大の影響により、調査開始時期が予定より遅れたものの、上記の結果をふまえて、次年度の訪問調査における評価視点の整理と確立を行い、評価用紙をほぼ確定させた。
結論
 作業所では、障害特性に応じて、さまざまな配慮が行われていた。一方で、一般企業で実施されている上肢負担軽減策や腰痛対策などの情報やノウハウが共有されていないことがあった。また、プライバシー上の配慮から、排泄における障害者の不便やトラブルは、管理者側から把握されにくく、今回初めて障害者からのヒアリングにて明らかになった事例もあった。
 調査した2つの事業所(民間会社)は、いずれも安全衛生の意識が高く、障害者からの相談に適切に対応していた。ヒアリングを通じて、滋賀県「障害者働き・暮らし応援センター」といった事業所外の就労支援サービスとの連携、及び事業者が障害者雇用継続に関して相談/指導できる専門家や介入の仕組の必要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202123015Z