文献情報
文献番号
202123014A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における化学物質のリスクの認知と対処方法の分析を踏まえた自律的な化学物質管理支援の研修・評価デバイスの開発
課題番号
21JA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
原 邦夫(産業医科大学 産業保健学部)
研究分担者(所属機関)
- 石松 維世(産業医科大学 産業保健学部)
- 樋上 光雄(産業医科大学 産業保健学部 作業環境計測制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
職場における化学物質規制体系の見直しが報告され、自律的化学物質管理について具体的な方策などが求められるため、中小零細企業に対し化学物質のリスク認知能力やリスク対処能力を向上させることを目的に、4テーマについて研究を実施した。
研究方法
<1>労災に影響する属人および職場環境などの要因の特定について、『職場のあんぜんサイト』内の災害事例をもとに主に安全性の面から、約20年分の化学物質関連の労災事例を収集し、属人・職場環境の要因と類似労災との関連性について記述的にまとめた。
<2>法規制の強弱によるリスク認知の実態調査は、コロナ禍により計画を変更し、化学物質を取扱う事業所に勤務する約2000名に対しネット調査を行った。
<3>職場における自律的な化学物質のリスクアセスメント(RA)研修方法のあり方検討では、化学物質に関する専門職が不足がちな社員50人未満の小零細事業場で90名に質問紙調査を行った。
<4>「自律的な化学物質管理の指導者養成コース」設計は、産業医科大学大学院医学研究科産業衛生学専攻の特別講義「自律的化学物質管理の概要」として6回コースで実施した。
<2>法規制の強弱によるリスク認知の実態調査は、コロナ禍により計画を変更し、化学物質を取扱う事業所に勤務する約2000名に対しネット調査を行った。
<3>職場における自律的な化学物質のリスクアセスメント(RA)研修方法のあり方検討では、化学物質に関する専門職が不足がちな社員50人未満の小零細事業場で90名に質問紙調査を行った。
<4>「自律的な化学物質管理の指導者養成コース」設計は、産業医科大学大学院医学研究科産業衛生学専攻の特別講義「自律的化学物質管理の概要」として6回コースで実施した。
結果と考察
<1>収集した化学物質による労働災害事故事例の大部分は有害性による健康障害であり、有害物質の種類(起因物)として特別則対象物質が多く、公開されたデータは危険性の面から整理されていた。「発生要因(物)」では、「物自体の欠陥」のうち「設計不良」が多く、発生要因(人)では、「心理的要因」のうち「危険感覚(のずれ)」が多く、「発生要因(管理)」では、「保護具、服装等の欠陥」が多かった。また、化学物質の対策は、① 安全衛生教育(知識的な問題、管理体制としての問題等)、② 保護具の使用、換気の改善(局所排気装置等)、③ 作業主任者による作業指揮、④ 定期点検、⑤ 作業手順の周知、徹底が特に重要であるとまとめられた。対象とした労働災害事故事例データベースは日本の化学物質による労働災害事故を必ずしも代表しないが、現状では化学物質による労働災害が発生するに至った状況や原因、対策を詳細に確認するためのデータベースは作成されていないことから、特に危険性についての対策の手掛かりとなる可能性は十分にあると考えられた。今後は、国連GHS勧告に基づき有害性の面も含めて整理、解析する必要があると考えられる。
<2>規制の強制力が高い約130の特別則対象物質等と他の化学物質等に対するリスク認知では、特別則対象物質の方が危険性・有害性が高いと認識していることが明らかになった。ただし、法規制対象化学物質は「危険有害性がある」と認識されているが、逆に「安全である」と考える作業者が20%近く存在することが判明した。この事実をふまえた上で、事業場では化学物質の危険有害性についての教育を行うことが重要だと考えられる。今後さらに詳細に調べる必要があると考えられる。
<3>小零細事業場では化学物質の危険有害性に関わる教育方法として、職場の先輩による教育が多いこと、また、RAを使用した教育の効果は高いと考えているが現場では他の方法ほどは用いられていないことが示唆された。
<4>6回とも約150名の参加を得て、終了後に自由記述式の質問に対して多くの意見が寄せられた。 今後、6回の講義終了後のアンケート回答についてまとめる予定であるが、多くの回答が寄せられ、新しい自律的化学物質管理に関しての不安と準備に取り掛かっている様子がうかがえた。
<2>規制の強制力が高い約130の特別則対象物質等と他の化学物質等に対するリスク認知では、特別則対象物質の方が危険性・有害性が高いと認識していることが明らかになった。ただし、法規制対象化学物質は「危険有害性がある」と認識されているが、逆に「安全である」と考える作業者が20%近く存在することが判明した。この事実をふまえた上で、事業場では化学物質の危険有害性についての教育を行うことが重要だと考えられる。今後さらに詳細に調べる必要があると考えられる。
<3>小零細事業場では化学物質の危険有害性に関わる教育方法として、職場の先輩による教育が多いこと、また、RAを使用した教育の効果は高いと考えているが現場では他の方法ほどは用いられていないことが示唆された。
<4>6回とも約150名の参加を得て、終了後に自由記述式の質問に対して多くの意見が寄せられた。 今後、6回の講義終了後のアンケート回答についてまとめる予定であるが、多くの回答が寄せられ、新しい自律的化学物質管理に関しての不安と準備に取り掛かっている様子がうかがえた。
結論
『職場のあんぜんサイト』内の災害事例をもとに主に安全性の面から整理したところ、化学物質の対策は、① 安全衛生教育(知識的な問題、管理体制としての問題等)、② 保護具の使用、換気の改善(局所排気装置等)、③ 作業主任者による作業指揮、④ 定期点検、⑤ 作業手順の周知、徹底が特に重要であるとまとめられた。今後は、国連GHS勧告に基づき有害性の面も含めて整理、解析する必要があると考えられる。次に、規制の強制力が高い約130の特別則対象物質等と他の化学物質等に対するリスク認知では、特別則対象物質の方が危険性・有害性が高いと認識していることが明らかになった。ただし、法規制対象化学物質は「危険有害性がある」と認識されているが、逆に「安全である」と考える作業者が20%近く存在することが判明し、この実態を踏まえた教育が必要であるといえる。また、小零細事業場では化学物質の危険有害性に関わる教育方法として、職場の先輩による教育が多いこと、リスクアセスメントを使用した教育の効果は高いと考えているが有効な方法が十分ではなく、国連GHS勧告のラベルが示す危険性・有害性情報と注意書きが示す対応を基にした研修方法の検討が必要である。最後に、現在、新しい自律的化学物質管理に関しての研修等の要望が高く対応していく必要性があった。
公開日・更新日
公開日
2023-05-25
更新日
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