作業経験の異なる建設作業者のリスク回避の認知過程に関する特性分析とリスク回避行動促進のための支援デバイスの検討

文献情報

文献番号
202123013A
報告書区分
総括
研究課題名
作業経験の異なる建設作業者のリスク回避の認知過程に関する特性分析とリスク回避行動促進のための支援デバイスの検討
課題番号
21JA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 明子(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 行恭(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究グループ)
  • 菅間 敦(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究グループ)
  • 島崎 敢(近畿大学 生物理工学部 人間環境デザイン工学科)
  • 中嶋 良介(電気通信大学 大学院情報理工学研究科情報学専攻)
  • 石垣 陽(電気通信大学 大学院情報理工学研究科情報学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,326,000円
研究者交替、所属機関変更
《研究者所属機関変更》 研究分担者 島崎敢 名古屋大学・未来社会創造機構 (令和3年4月1日~令和4年3月31日) →近畿大学生物理工学部 (令和4年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
建設業は死亡リスクの高い業種であり,様々な工学的対策や管理的対策が実施されているが,それらの対策だけでは“設備・保護具を不適切に使用する”,“危ないとわかっていて不安全な行動をする”などの労働者の(意図的な)リスクテイキング行動を防止するのは難しい.労働者のリスクテイキング行動を抑制し,リスク回避行動を促進するには,労働者の行動前に着目し,①労働者がなぜリスク回避行動(またはリスクテイキング行動)をとるのかという認知的要因を明らかにするアプローチと,行動後に着目し②労働者のリスクテイキング行動(またはリスク回避行動)を検出し評価するアプローチを実施し,それらの知見を基に安全教育や安全対策へどのように展開するかについて検討することが重要である.
さらに,建設業は年齢や作業経験により労働災害リスクが異なると考えられるため,①については特に作業経験に着目することとし,労働災害リスクの高い層のリスクテイキング行動とリスク回避行動の促進要因や,労働災害の発生傾向を調べることとした.また,②については,リスクテイキング行動またはリスク回避行動を検出するようなリスク回避行動の促進を支援するデバイスの検討を行うこととした.
研究方法
令和3年度,①リスク回避行動(またはリスクテイキング行動)の認知的要因に関するアプローチでは,建設作業者を対象としたリスク回避行動(またはリスクテイキング行動)を促進する認知的要因についてのインタビュー調査と,労働災害分析による災害傾向の把握を実施した.また,令和4年度の模擬作業現場での実験の準備として,従来の作業手順マニュアルに関する被験者実験と建設現場での作業実態に関する観察調査,ヒアリング調査を行った.
次に,②リスクテイキング行動(またはリスク回避行動)の検出・評価に関するアプローチでは,労働者のリスクテイキング行動(またはリスク回避行動)を検出し評価する支援デバイスの試作をするため,市販デバイスを用いた建設現場でのデータ取得に関する予備調査と,スマート脚立の試作を行った.
結果と考察
これらの結果,建設作業者を対象としたインタビュー調査については,リスク回避行動とリスクテイキング行動を促進する要因をそれぞれ定性的に検討することができ,建設作業者が作業経験の浅い時期(作業経験2,3年ごろ)のリスクテイキング行動の頻度を最も高いと評価していることがわかった.また,労働災害分析では年齢別・経験年数別の災害傾向を把握でき,特に経験の浅い労働者の災害リスクが高いことが明らかとなった.作業マニュアルに関する被験者実験と観察調査,ヒアリング調査では従来の作業手順書とOJT(On the Job Training)の限界と,新たな作業支援の必要性が明らかとなるとともに,建設作業へのIE分析の適用可能性を把握できた.
また,市販デバイスを用いた予備調査では,データ取得時の問題点と映像を基にした作業者の骨格モデル化の可能性を検討できた.スマート脚立の試作では脚立の各支柱にかかっている荷重のバランスの可視化を検討でき,作業者へのフィードバックの方法など検討事項を把握できた.
結論
本研究は,建設業における労働者のリスクテイキング行動を抑制し,リスク回避行動を促進するために,労働者の行動前に着目したアプローチと行動後に着目したアプローチを実施した.令和3年度は,前者については,インタビュー調査により,リスクテイキング行動とリスク回避行動の促進要因を定性的に明らかにできた.また,労働災害分析により,労働災害の年齢別・作業経験別の発生傾向を把握することができた.さらに,被験者実験と観察調査,ヒアリング調査により,作業手順の教示の問題点やIEの観点からの建設作業の評価方法を把握できた.後者については,市販デバイスを用いた予備調査により,建設現場でのデータ取得時の問題点と作業者の骨格モデル化の可能性を検討し,脚立作業の支援デバイスを試作できた.令和4年度は,令和3年度に得られた知見を活用し,さらに,調査研究を進める.

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202123013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,223,000円
(2)補助金確定額
8,208,000円
差引額 [(1)-(2)]
15,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,478,423円
人件費・謝金 92,750円
旅費 0円
その他 740,486円
間接経費 1,896,468円
合計 8,208,127円

備考

備考
計画通り予算を執行したが、予定よりも若干低予算で研究を実施することができたため。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-