文献情報
文献番号
202123006A
報告書区分
総括
研究課題名
労働災害防止を目的とした高年齢労働者の身体機能を簡易に測定するためのプログラム開発と実装検証
課題番号
20JA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
研究分担者(所属機関)
- 大須賀 洋祐(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 村上 遥(神戸大学 未来医工学研究開発センター/工学研究科電気電子専攻)
- 高野 賢一郎(独立行政法人労働者健康安全機構 関西労災病院 治療就労両立支援センター)
- 野村 卓生(関西福祉科学大学 保健医療学部)
- 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
- 小山 善子(金城大学 医療健康学部)
- 松平 浩(東京大学 医学部附属病院22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
- 篠崎 智大(東京理科大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,610,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
少子・高齢化が進む我が国では、高齢者雇用安定法が改正(2012年)され、65 歳までの雇用機会が確保されるようになった。また休業 4 日以上の労働災害による死傷者において、高年齢労働者(60歳以上)が占める割合も増加傾向にあり、その対策は喫緊の課題である。2018~2022 年度を計画期間とする第13次労働災害防止計画でも、加齢に伴う身体・精神機能の低下を考慮した対策が重点事項として盛り込まれており、高年齢労働者が安全に働くための基礎的条件となる身体機能評価法の確立が求められている。
中央労働災害防止協会の「高年齢労働者の身体的特性の変化による災害リスク低減推進事業」(2010年)にて、身体機能面(筋力=2ステップテスト、敏捷性=座位ステッピングテスト、平衡性= ファンクショナルリーチ・閉眼/開眼片足立ち)から転倒等労働災害リスクを評価するチェックリストが公表されているものの、この10年間で高齢者の運動能力の向上傾向は鮮明であり(スポーツ庁、体力・運動能力調査:2019年)、チェックリストで利用される基準値のアップデートは必須である。
また近年、情報インフラが拡充し、高齢者の約5割がスマートフォン所持(60歳代46.4%、2018年総務省通信利用動向調査)しており、これをウェアラブル端末として身体機能を評価することも現実のものとなっている。
本研究の目的は最新技術を駆使して高年齢労働者の身体機能を簡易に測定するためのプログラム(チェックリスト+スマートフォンを併用したePRO評価)を作成することである。
中央労働災害防止協会の「高年齢労働者の身体的特性の変化による災害リスク低減推進事業」(2010年)にて、身体機能面(筋力=2ステップテスト、敏捷性=座位ステッピングテスト、平衡性= ファンクショナルリーチ・閉眼/開眼片足立ち)から転倒等労働災害リスクを評価するチェックリストが公表されているものの、この10年間で高齢者の運動能力の向上傾向は鮮明であり(スポーツ庁、体力・運動能力調査:2019年)、チェックリストで利用される基準値のアップデートは必須である。
また近年、情報インフラが拡充し、高齢者の約5割がスマートフォン所持(60歳代46.4%、2018年総務省通信利用動向調査)しており、これをウェアラブル端末として身体機能を評価することも現実のものとなっている。
本研究の目的は最新技術を駆使して高年齢労働者の身体機能を簡易に測定するためのプログラム(チェックリスト+スマートフォンを併用したePRO評価)を作成することである。
研究方法
下記の3つのサブテーマに基づき研究を遂行した。
1.高年齢労働者の基礎的身体機能に関する実態調査と基礎的検討
2. 身体機能を簡易に測定するプログラムの作成
3. 産業衛生フィールドにおけるプログラムの実証(青壮年労働者と高年齢労働者の比較)
1.高年齢労働者の基礎的身体機能に関する実態調査と基礎的検討
2. 身体機能を簡易に測定するプログラムの作成
3. 産業衛生フィールドにおけるプログラムの実証(青壮年労働者と高年齢労働者の比較)
結果と考察
1.高年齢労働者の基礎的身体機能に関する実態調査と基礎的検討
高齢労働者の労働災害が、雇用の年齢差別撤廃による比較的新しい社会問題であること、産業衛生学と老年医学の狭間にある問題であり、縦割り型の学問体系によって見過ごされてしまっていることから本研究成果を国際的に展開するために、「高年齢労働者における転倒・転落事故の個人要因:スコーピングレビュー」が必須であることが研究者とステイクスホルダーとの協議により確認されたため英語論文の執筆に着手した
2. 身体機能を簡易に測定するプログラムの作成
成果物となるプログラムとして①転倒等リスク評価セルフチェック票-ePRO版、②働くシニアのための就業安全評価質問紙-紙ベース、③働くシニアのための就業安全評価質問紙- ePRO版、④運動計測スマホアプリが完成した。このアプリケーションはJavaScriptが有効になっているスマーフォンであればOSや機種に依存せずに動作するシングルページアプリケーションである。Validationの過程において、計測者間の誤差が問題となったため、測定に関するマニュアルを完備する必要があると考え、これも作成した。
3. 産業衛生フィールドにおけるプログラムの実証(青壮年労働者と高年齢労働者の比較)
20-49歳の若年労働者388名、高齢労働者498名の(埼玉県東松山市、和歌山は若年労働者のみ、石川は高齢労働者:p3,P4上部に内訳を記載)の上記①③④のアプリケーションでの計測(2ステップ、5 回椅子立ち座り、ステップテスト、開眼片足立ち、閉眼片足立ち、閉眼バランス、ファンクショナルリーチ、歩行速度:6m歩行、握力)にて、統計学的検討とAIによる機械学習によって選定された加齢変化を反映し労働災害を精度高く判定しうる指標は5 回椅子立ち座りであることが示唆された。
高齢労働者の労働災害が、雇用の年齢差別撤廃による比較的新しい社会問題であること、産業衛生学と老年医学の狭間にある問題であり、縦割り型の学問体系によって見過ごされてしまっていることから本研究成果を国際的に展開するために、「高年齢労働者における転倒・転落事故の個人要因:スコーピングレビュー」が必須であることが研究者とステイクスホルダーとの協議により確認されたため英語論文の執筆に着手した
2. 身体機能を簡易に測定するプログラムの作成
成果物となるプログラムとして①転倒等リスク評価セルフチェック票-ePRO版、②働くシニアのための就業安全評価質問紙-紙ベース、③働くシニアのための就業安全評価質問紙- ePRO版、④運動計測スマホアプリが完成した。このアプリケーションはJavaScriptが有効になっているスマーフォンであればOSや機種に依存せずに動作するシングルページアプリケーションである。Validationの過程において、計測者間の誤差が問題となったため、測定に関するマニュアルを完備する必要があると考え、これも作成した。
3. 産業衛生フィールドにおけるプログラムの実証(青壮年労働者と高年齢労働者の比較)
20-49歳の若年労働者388名、高齢労働者498名の(埼玉県東松山市、和歌山は若年労働者のみ、石川は高齢労働者:p3,P4上部に内訳を記載)の上記①③④のアプリケーションでの計測(2ステップ、5 回椅子立ち座り、ステップテスト、開眼片足立ち、閉眼片足立ち、閉眼バランス、ファンクショナルリーチ、歩行速度:6m歩行、握力)にて、統計学的検討とAIによる機械学習によって選定された加齢変化を反映し労働災害を精度高く判定しうる指標は5 回椅子立ち座りであることが示唆された。
結論
次年度に中災防とも連携し、事業場に導入を開始、策定した身体機能評価基準の普及に努める。
公開日・更新日
公開日
2022-05-24
更新日
-