食中毒調査の精度向上のための手法等に関する調査研究

文献情報

文献番号
200837043A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒調査の精度向上のための手法等に関する調査研究
課題番号
H20-食品・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 寺嶋 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 春日 文子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 小沢 邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 松舘 宏樹(岩手県環境保健研究センター)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 津田 敏秀(岡山大学大学院環境学研究科)
  • 徳田 浩一(鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 医療環境安全部)
  • 黒木由美子(財団法人日本中毒情報センターつくば中毒110番)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
31,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の食中毒調査の精度向上のために、1.広域食中毒事例の探知と対応手法の開発、2.食品媒介経路の占める比率や原因食品の寄与率(アトリビューション)推定手法の開発、3.個々の疾病の疫学に関する詳細検討、4.疫学的解析手法の開発と啓発、5.化学物質や自然毒等による食中毒事例調査向上のための検討の5点を目標とした。
研究方法
1、2では、諸外国の担当者への聴き取り調査と日本の現状評価を行った。3、4、5は結果のみを示す。
結果と考察
1.米国ではPulseNetによる監視を広域散発食中毒事例探知の発端とし、OutbreakNet担当者に日々連絡して疫学調査に結び付けている。オーストラリアではOzFoodNetにより管轄区間の情報交換が促進され、効率的な広域事例の探知と対応を可能としている。パルスネットジャパンの過去の食品由来広域散発事例分析から、分離株に関する解析情報のリアルタイムな把握と関係機関での共有が重要であることが認識された。2.米国ではFoodNetの散発例の症例対照研究によるアトリビューション算出に顕著な成果があり、デンマークでは患者、家畜、食肉から分離されたサルモネラが型別比較され、アトリビューションが算出されていた。わが国の各地方衛生研究所・食肉衛生検査所等の調査から、関係機関の連携強化や国立感染症研究所の機能強化、家畜や食品等を対象としたベースライン調査等が重要と考えられた。また、ネット調査を利用した腸管出血性大腸(EHEC)感染症の散発事例の症例対照研究についての予備調査を行った。3.ノロウイルス広域散発食中毒事例の早期探知にはシークエンス解析とデータ活用のシステム構築が必要である。またEHEC症例の調査より、現行の感染症発生動向調査での疾患重篤性の過小評価が示唆された。4.国際標準に沿った食中毒事件の疫学調査研修のあり方を検討した。5.日本中毒情報センター受信統計等から化学物質等による未報告の食中毒事例が多数判明した。
結論
広域食中毒事例対応のために、患者発生情報を早期に自治体から発信し、国としてそれを受信、疫学の専門家も加えて分析し、自治体へ連絡調整を図る体制の整備、さらに病原体の検出と平行した疫学解析の導入が必要である。国、自治体それぞれにおいて既存の組織等を有効利用しつつ、可能な増員や専門性の付与と研修体制について具体的に検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-