医療の質評価と医療情報の提供に関する調査研究

文献情報

文献番号
202122065A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質評価と医療情報の提供に関する調査研究
課題番号
21IA2018
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際大学 専門職大学院・公衆衛生学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 猪飼 宏(京都府立医科大学 医学・医療情報管理学講座)
  • 石川 直子(独立行政法人地域医療機能推進機構 )
  • 岩渕 勝好(山形市立病院済生館 呼吸器内科)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 嶋田 元(聖路加国際病院 消化器・一般外科)
  • 高橋 理(聖路加国際大学 専門職大学院・公衆衛生学研究科)
  • 名越 究(島根大学医学部)
  • 伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
  • 藤本 賢治(恩賜財団済生会)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 矢野 諭(一般社団法人 日本慢性期医療協会)
  • 大出 幸子(聖路加国際大学 専門職大学院・公衆衛生学研究科)
  • 堀川 知香(聖路加国際大学 聖路加国際病院 医療情報課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 病む人が適切な医療を受けるためには、医療機関で提供される医療の質が高く、受診する医療機関を選択するための情報が必須である。
 本研究では、これまでにない数(1,000程度)の病院を対象に、医療の質指標(Quality Indicator:QI)の測定・改善活動の可視化・検証を行い、そして、各都道府県が独立して運営してきた医療機関に関する情報検索サイト(医療情報ネット)について、全国統一化を視野に、周知状況や利用者の属性等に関する調査研究を行う。
研究方法
 QIに関する研究では、最初に、多くの病院(将来的には我が国の全病院)で測定してもらうためのQIを、これまでの厚労科研でわれわれが開発し提唱してきた共通QIセット(23種類36指標)をベースに、14種類を抽出した。並行して、欧米では患者の主観的な感覚に基づいた定量的指標の測定が広く行われつつあることに鑑みて、満足感や生活の質(QOL)などを測定するためのQIとして、Euro-QOL(EQ-5D)を用いることを決定した。
 次に、2010年度~2019年度に行われた厚生労働省『医療の質の評価・公表等推進事業』に参加した9病院団体(日本病院会、全日本病院協会等)等、計10病院団体に、上記で決定したQIの測定への協力を依頼した。また、協力病院を対象に、「貴院は、外部評価を受けていますか?」「痛みの程度を定量的に測定している患者群または診療科または部署はありますか?」「痛みの程度を定量的に測定している場合、どのような方法で行っていますか?」「事前指示の記録をしている患者群または診療科または部署はありますか?」という4つの質問から成るアンケート調査を実施した。
 医療情報ネットに関する研究では、以前われわれが行った調査研究と同様、調査会社(株式会社日本能率協会総合研究所)が保有する調査パネルを用い、一般住民を対象にWEBでのアンケート調査を行った。医療機関を選ぶ際の情報源、医療機関を選択時の重要とする項目について尋ね、次に医療情報機能提供制度で定められている都道府県別の医療情報ネットの認知度、認知経路、利用の有無、医療機関選びに役立ったかなどについて尋ねた。
結果と考察
 QIの測定について協力の意向が表明されたのは5団体のみで、2団体はシステム開発費や人件費がかかることを理由に辞退された。結果として、5病院団体の345病院から、QIデータの測定結果を提出してもらっている。
 2021年4月から2021年12月までのデータを提出中で、現時点では信頼性のある結果の予測は不可能であるが、病院団体の垣根を越えてばらつきが見られない指標が多いこと、いくつかの指標(脳卒中患者、大腿骨頸部骨折)については比較的ばらつきが大きいことなどが示唆された。
 Euro-QOL(EQ-5D)の測定には、11病院が協力の意向を示された。
 協力病院345のうち238病院(69.0%)が、日本医療機能評価機構やJCI等の外部評価を受けていた。2022年3月現在、全国にある8227病院中、外部評価を受けているのは2042病院(24.8%)であることから、QIを測定している病院は外部評価をも受けていて、医療の質や安全に対する意識が高い病院ともいえよう。
 医療情報ネットに関するWeb調査では、1960名から回答が得られた。医療情報ネットの認知度は、前回調査時と同じ11%であったが、当該サイトを知っている回答者での利用度や有用性については改善が認められた。医療機関毎の診療の質指標を追加することについて、アンケート回答者の94%が受診する医療機関を選択する上で役立つと回答しており、医療の質指標の値を広く公表することを推進する必要があると思われる。
結論
 5病院団体の345病院にて、14種類のQIの測定が行われている。次年度(2022年度)にかけて、21か月分(2021年4月~2022年12月)のデータを収集・解析し、各病院にフィードバックする予定である。全国展開するための足掛かりとしたい。
 医療のアウトカムについて患者の主観的側面の定量化を行うEuro-QOL(EQ-5D)は、11の協力病院にて2022年8月~2023年3月の8か月間、消化器外科、整形外科の予定手術を受ける患者の入院時、退院時、6か月後の3時点での測定データを収集する予定である。
 日本医療機能評価機構やJCI等の外部評価を受けている病院では、QIを測定している割合も高いことが示された。
 医療機関検索サイト(医療情報ネット)の認知度は、5年前の前回調査時から改善していなかったものの、今後、医療機関毎のQIを公表項目に加えることで、国民の医療機関選択時の有用な情報となりうる。

公開日・更新日

公開日
2022-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122065Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
4,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
750,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 100,596円
人件費・謝金 836,748円
旅費 0円
その他 2,160,400円
間接経費 1,153,000円
合計 4,250,744円

備考

備考
自己資金 744円

公開日・更新日

公開日
2022-12-01
更新日
-