献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究

文献情報

文献番号
202122058A
報告書区分
総括
研究課題名
献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究
課題番号
21IA2011
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
伊達 洋至(一般社団法人日本外科学会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度な手術治療を安全に提供するにはトレーニングが欠かせない。従来手術手技の修練にはOJT(on the job training)が行われてきたが、高難度手術や希な疾患の手術法の習得には、献体を使用した手術手技研修(CST: Cadaver Surgical Training)が有効である。国内でのCSTは2012年に日本外科学会と日本解剖学会により『臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン』を制定したことにより可能となった。
これまで、ガイドラインの記載に沿って、日本外科学会CST推進委員会が各大学のCST等の報告書を受理し、実施内容の妥当性、予算運営の公正性、企業関連のCOI等に関する透明性を審査し、必要に応じて指導を行い承認してきたが、CSTの普及に伴い報告書の約3/4は日本外科学会の領域外となっているのが現状である。このような背景から、これまで日本外科学会が行ってきた各大学のCSTの審査、ガイドライン改訂などのルール策定、並びに将来構想の策定等の業務は、将来的には外科系各領域を統括する組織が行いつつ、各領域でプロフェッショナル・オートノミーを強化することで、CSTを健全に普及させる必要性も生じてきた。
そこで、本研究は、これまでの地域医療基盤開発推進研究事業「献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究」の成果を踏まえ、日本医学会連合による統括体制を想定し、新たなCSTを統括する組織の構築のために、これまでのCST報告の問題点を洗い出し、提言案をまとめることを目的とした。
研究方法
CSTの将来性を考え、現在のCST推進委員会と連動して、各学会からの若手研究者を募りワーキンググループ(以下、WG)を組織した。研究分担者の小林英司をWG長とし、生命倫理の専門家の橳島次郎氏と外科系の各領域でCSTをけん引する医師からなるWGが実務を担うことが承認された。WGでは、各学会のCSTの実施における課題を取りまとめ、理想的なCSTのあり方について、多方面からの検討が行われた。
結果と考察
① 現行の報告システムの改善
CSTの報告が最も多い整形外科のCSTに対し、現在は外科学会と解剖学会に所属する委員を主とし、整形外科学会1名のみで審査している。各学会が実施している内容を適切に評価・指導するためには、報告システムの最適化が必要である。
② プロフェッショナル・オートノミーの強化
ガイドラインが、日本外科学会と日本解剖学会の連名で公表された経緯から、外科系の各学会への周知は必ずしも十分とは言えない。そこで、各学会に働きかけ、学術集会等における講習会等の実施を提案し、ルールの周知を図ることとした。
③ 新ガイドラインとリコメンデーションの作成
国内でCSTを適切に実施するためには、ガイドラインの周知が欠かせない。また、医療機器開発において、PMDAが遺体での検証を求める例があり、無償の篤志を基盤とした献体制度と営利を目的とした企業活動との整合性を取る必要がある。今後、令和5年度をめどに、日本医学会連合のもと、各学会合同で、医療機器開発の実施要項も含めた共通項目に関する新ガイドラインを作成するべく、令和4年度はその準備活動に充てることが提案された。また、CSTの実施内容は領域ごとに異なるため、新ガイドラインの公表に合わせて、各学会に領域別のリコメンデーションの作成を提案することも計画に盛り込まれた。
④ 一般市民に理解していただくための活動
WGでは、生命倫理の専門家の橳島次郎先生、日本の献体制度に詳しい香西豊子先生との意見交換を行い、わが国の解剖の歴史的背景を踏まえ、臨床医学の教育・研究目的の遺体利用の原点を再確認する必要があることを確認した。
結論
3年計画の本研究の初年度の活動として、WGによる4提案をまとめた。 国内のCSTを健全に発展させるためには、日本医学会連合による統括体制の構築が理想的であり、①現行の報告システムの改善、② プロフェッショナル・オートノミーの強化、③ 新ガイドラインとリコメンデーションの作成、④ 一般市民に理解していただくための活動、の早急な実施が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122058Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,800,000円
(2)補助金確定額
1,467,000円
差引額 [(1)-(2)]
333,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 100,000円
旅費 0円
その他 967,961円
間接経費 400,000円
合計 1,467,961円

備考

備考
・物品費、旅費、その他が交付決定額より減額した理由

物品費:コロナ禍のため班会議を対面形式からWEB会議に切り替えて行った。そのため、会議室の借用やプリント用紙等を購入せず、物品費を使わなかった。
旅 費:コロナ禍のため班会議を対面形式からWEB会議に切り替えて行ったため、当初想定していた金額よりも減額した。
その他:コロナ禍のため想定外の支出はほとんどなく、ほぼ委託費のみに抑えることができた。

経費減額の変動はあったが、研究に支障はなく、研究目標を達成できた。
・自己資金額931円、その他30円

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
2022-12-06