食品中の複数の化学物質による健康影響に関する調査研究

文献情報

文献番号
200837034A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の複数の化学物質による健康影響に関する調査研究
課題番号
H19-食品・一般-019
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 卓二(金沢医科大学 腫瘍病理学講座)
  • 原田 孝則(財団法人残留農薬研究所 毒性部)
  • 出川 雅邦(静岡県立大学 分子毒性学分野)
  • 中澤 裕之(星薬科大学 薬品分析化学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中化学物質(食品添加物、農薬、汚染物質など)による複合影響の安全性評価に資するデータを収集するため、それら物質を併用投与し、相互作用を検討した。
研究方法
1) 発がんへの影響について、薬物代謝酵素を誘導するβ-ナフトフラボンとチアベンダゾールをラットに併用投与し、肝CYP1A2 mRNAレベルを解析した。また、レポーター遺伝子導入動物に四塩化炭素またはフルメキンをMeIQxと併用投与し、肝でのin vivo変異原性を調べた。2) 発がん抑制への影響について、肝薬物代謝酵素活性を抑制するクルクミンとケルセチンをマウスに併用投与し、microarray解析した。3) 神経毒性及び免疫毒性への影響について、有機リン剤とカーバメート剤をラットに併用投与し、その複合影響を調査した。4) 代謝活性化への影響について、ヒトPXR活性化物質レポーター細胞株HepG2-PXRLucA3を用いて、食品添加物(クルクミン、チアベンダゾール、没食子酸プロピル及びブチルヒドロキシトルエン)の影響を検討した。5) 酸化ストレスへの影響について、食品中フェノール性抗酸化物質と亜硝酸ナトリウムの複合曝露によるニトロ化反応で発生する活性酸素種への影響を検討した。
結果と考察
1) 肝CYP1A2 mRNA上昇には双方に閾値がある可能性が示された。また、レポーター遺伝子gptないしred/gamの変異頻度がMeIQx単独投与に比べて著しく上昇することが明らかとなった。2) 複合投与と単独投与の比較で、いくつかのpathwayで特徴的な遺伝子発現の変化がみられ、また雌雄差も観察された。3) 併用投与により血漿中のグロブリン及び総コレステロールが上昇することが示された。また、ラットに2種類の有機リン系農薬(パラチオンとメタミドホス)を併用投与した結果、単剤投与に比べ多動性などの神経行動毒性が増強される可能性が示された。4) チアベンダゾールのみに弱いPXR活性化能が見られ、他の3種の添加物はリファンピシンによるPXR活性化を濃度依存的に阻害した。5) ニトロ化された物質においても同様の抗酸化作用を示したが、ニトロ化を受けることにより、ラジカル発生作用は活性酸素種の発生量を増強することが判明した。
結論
食品中化学物質の複合影響により発がん性や神経毒性が増強される可能性が示され、代謝や酸化ストレスへの影響も示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
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