海外の制度等の状況を踏まえた離島・へき地等におけるオンライン診療の体制の構築についての研究

文献情報

文献番号
202122054A
報告書区分
総括
研究課題名
海外の制度等の状況を踏まえた離島・へき地等におけるオンライン診療の体制の構築についての研究
課題番号
21IA2007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
原田 昌範(公益社団法人地域医療振興協会 地域医療研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古城 隆雄(東海大学健康学部)
  • 阿江 竜介(自治医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
930,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
元来、医療へのアクセスが特に制限される離島・へき地においてオンライン診療は期待され限定的に認められてきた経緯があるが、様々規制等により十分に活用されてこなかった。令和元年度「へき地医療の推進に向けたオンライン診療体制の構築についての研究(厚生労働行政推進調査事業費補助金:H30-医療-指定-018)」で、オンライン診療に関する海外調査(米国、豪州、英国、デンマーク)と山口県の離島へき地でオンライン診療の実証を行った。本研究を通じて、特にコロナ禍における諸外国のオンライン診療の現状を追加調査し、我が国の制度と比較し、指針の改訂等に活かす。山口県の実証や全国の有効な実例を集積・整理し、モデル事例がどうすれば全国のへき地で安全性・信頼性を担保して活用できるのかを明らかにする。また、へき地医療の確保につながるオンライン服薬指導や電子処方箋、遠隔医療健康相談の活用についても実証を行う。
研究方法
国内へき地におけるオンライン診療の実態および諸外国のオンライン診療の実施状況を調査した。令和元年からの山口県のへき地における実証を継続し、異なる場所でも新規実証を検討した。へき地におけるオンライン服薬指導、ネットワークやセキュリティ等に関する課題を整理した。また、医師不足地域における5Gや遠隔健康医療相談の活用についても検討した。なお、都道府県のオンライン診療のニーズに関する調査(古城班)とへき地医療におけるオンライン診療の有用性の高い対象の特定のための研究(阿江班)は、それぞれ分担研究報告書にて報告する。
結果と考察
新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、オンライン診療に関する規制が国内外で大幅に緩和されている。しかし、実際に活用されているのは、感染が流行する都市部が中心で、診療形態についてもビデオを介したオンライン診療ではなく、電話診療が大多数を占めている。規制が緩和されたことで、特に医師が不足するへき地での活用が期待されるが、古城班の研究報告では、思うようには活用が進んでいないが、三重県鳥羽市のバイタルのモニタリングを併用した活用事例や岩手県網地島の看護師と連携した離島での看取り(遠隔死亡診断)の事例などは参考となる。令和元年から山口県内の4箇所のへき地で開始した実証を継続調査し、加えて令和3年度は、島の人口減少に伴い非常勤体制となった離島や当直のため院外に出られないへき地の病院、新たに巡回診療を始める計画のある診療所等、へき地医療機関を新たに4箇所加え、D to P with Nの形式によるオンライン診療の活用の場面をさらに検討した。また、へき地に勤務する若手医師等を5Gや新たなデバイスでリアルタイムに遠隔支援できる仕組み(D to P with D)についても山口県内で検証を開始した。
2023年1月に運用開始を予定しているオンライン服薬指導は、へき地・離島の住民に対する薬学的サービスの提供に有用であると期待される。また、医師、薬剤師が不在の離島において、看護師等とのオンライン連携で薬剤を渡すことができるようになった事務連絡は重要である。
遠隔健康医療相談が、過疎地域における産婦人科・小児科医療の課題に対して解決の一助となる可能性が示唆された。特に若い世代では、スマホ等のデジタルデバイスの活用が期待でき、ビデオ機能やチャットを用いた相談により専門家を身近に感じ、子どもの病気、子育て、妊娠経過、出産に関する疑問を遠隔相談でも解決しうる。また専門家までのアクセスが困難で、プライバシーも守りにくく、孤立しやすいへき地に暮らす住民の安心・安全にも寄与すると考える。
結論
へき地でオンライン診療の活用が進まないのは、制度だけの問題ではないと考える。オンライン診療がどのような場面で、どのように役立つかといった具体的な提案、つまり地域特性に合わせてオンライン診療をどのように活用するのか具体的に示すことが重要である。また、へき地の通信環境は都市部に比べ遅れているため、オンライン診療を普及させるためには、コストやセキュリティの課題も整理し、使用するネットワークやデバイスなどを検討し、具体的に提案していく必要がある。オンライン診療と合わせて離島・へき地の住民にどうやって服薬指導して薬を届けるのかも重要な視点である。
コロナウイルス感染症がきっかけで、オンライン診療の規制が世界的に大幅に緩和され、また多くの企業が、医療のDX化に向け、技術開発を急いでいる。現在、分担研究の阿江班では、どの地域、どのような患者にオンライン診療を優先的に導入すべきか、具体的にスコア化するなどして示すことを検討している。医師が不足するへき地においても地域包括ケアを推進するために、どのようにオンライン診療を組み合わせるのか、これからも多くの課題に対して、海外の好事例を調査しつつ、実証を重ねていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
2023-10-16

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122054Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,200,000円
(2)補助金確定額
1,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 604,122円
人件費・謝金 223,200円
旅費 0円
その他 102,678円
間接経費 270,000円
合計 1,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
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