医師養成課程を通じた偏在対策の効果検証のための研究

文献情報

文献番号
202122052A
報告書区分
総括
研究課題名
医師養成課程を通じた偏在対策の効果検証のための研究
課題番号
21IA2005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 松本 正俊(広島大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、新たに導入された医師偏在指標について、人口10万対医師数との比較を行うとともに、過去の偏在指標を試算、その推移を明らかにするとともに、医師の多拠点診療の実態や二次医療圏ごとに算出した地域医療システムの質指標と地域の医師数・専門医数との関係を検討すること等を通じ、医師養成課程を通じた偏在対策の効果検証のための基礎資料を得ることにある。
研究方法
 医師偏在指標の算出にあたっては、2000~2018年までの期間について、過去のデータが利用可能なものについては過去のデータを用い、過去のデータが得られないものについては条件が変わらないものとして、三次医療圏・二次医療圏単位で医師偏在指標を算出した。その上で、2018年の医師偏在指標と人口10万対医師数を比較した。さらに2000年時点の偏在指標の上位・中位・下位1/3が2018年までの間にどのように推移しているかについて示した。
 医師の多拠点診療の実態については、株式会社日本アルトマークのMDBの医師データ(個票データ)および医療機関データ(以下、アルトマークデータ)を用い、2施設以上で勤務する医師を兼業医師とし、時系列、医師の年代別、診療科別の兼業医師の占める割合を分析した。
 地域医療システムの質指標と医師数の関係についての検討では、京都大学大学院医学研究科医療経済学分野がデータ利用許可を受けたレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)より、2013年度の急性心筋梗塞症例を抽出し、入院日またはその翌日にPCIが行われた症例の割合を二次医療圏ごとに算出、算出した二次医療圏ごとの緊急PCI実施割合を目的変数、国勢調査などの公的統計データより収集した様々なデータを説明変数としたPLS(partial least square)回帰分析を行った。
結果と考察
 医師偏在指標とその推移に関する研究では、医師偏在指標と人口当たり医師数の相関は高いこと、近年、医師偏在指標は改善の傾向を見せており、2000年時点の医師少数区域からは、同一の閾値を用いた場合には、2018年には、三次医療圏・二次医療圏のそれぞれで約8割、約6割が脱出できていることが明らかとなった。一方、2000年時点の医師多数区域についても、医師偏在指標の値が改善しているため、全体として水準の向上が図られているものの、地域間の格差が必ずしも縮小しているわけではないことも明らかになった。今後、これまでよりも一層強力な医師確保計画の推進が求められることを示唆する所見が得られたものと考えられる。いずれにしても、どのような指標も、指標の中にすべての要素を取り込むことは難しい点があり、それぞれの指標がもつ性質や、目的に応じた使い分けが重要であり、医師偏在指標についても、「医師確保計画のガイドライン」にこれらの限界は触れられており、医師少数スポットの指定等、指標の限界を踏まえた対策も記載されているが、数値の一人歩きが起こらないよう、一層の周知活動も重要であると考えられる。
 医師の多拠点診療の実態検証については、地域の医師数にこだわり医師を医師少数地域に配置するのだけではなく、医師少数「地域の医療をいかに充実させるか」を検討する視点が重要であることが明らかになった。「多拠点診療」の支援・推進のためには、要資源集中領域での「拠点(hub & spoke model)形成」の推進、ICT 等を活用した医師少数地域での専門研修の充実化(多拠点診療、拠点形成、遠隔指導・遠隔診療支援)がポイントとして挙げられる。
 地域医療の質と医師数・専門医数の関係についての検討では、二次医療圏単位での急性心筋梗塞の緊急PCI 実施割合を算出、各二次医療圏の人口経済学的因子、医療資源との関係を調べ、人口当たりの医師数、専門医数は緊急PCI の実施割合増加と関連があることを明らかとしたが、医療資源の量だけでは説明できない因子も同定され、医師数と独立して、PCI の拠点形成など、医療サービス提供の効率化も、緊急PCI 実施割合の増加に繋がる方法の一つとして検討する必要があると考えられた。
結論
 医師偏在指標の推移についての研究、医師の多拠点診療の実態と地域医療システムの質指標と医師数の関係についての研究を通じ、医師養成課程を通じた偏在対策の効果検証のための基礎資料を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122052Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,200,000円
(2)補助金確定額
2,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 373,847円
人件費・謝金 1,159,635円
旅費 12,210円
その他 147,308円
間接経費 507,000円
合計 2,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-12-01
更新日
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