母乳のダイオキシン類汚染の実態調査と乳幼児の発達への影響に関する研究

文献情報

文献番号
200837032A
報告書区分
総括
研究課題名
母乳のダイオキシン類汚染の実態調査と乳幼児の発達への影響に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-017
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
多田 裕(東邦大学医学部 新生児学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 中村好一(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門)
  • 近藤直実(岐阜大がk大学院医学系研究科小児病態学)
  • 板橋家頭夫(昭和大学医学部小児科学教室)
  • 宇賀直樹(東邦大学医学部新生児学教室)
  • 岡明(東京大学大学院医学系研究科小児医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における母乳中のダイオキシン類濃度を測定し汚染状況とその変化を検討すると共に、母乳中のダイオキシン類が乳幼児の健康に及ぼす影響を評価する。
研究方法
初産婦から生後30日の母乳約25~50mlの提供を受け、母乳のダイオキシン類濃度を測定した。母乳を採取する定点地域は千葉県、新潟県、大阪府の3府県とし、母乳中のダイオキシン類等の測定を実施した。これらの母乳を哺育した児が1歳になった時点で健康診査と採血を行い乳児の健康への影響を評価した。また、1歳時点の血液中のダイオキシン類濃度を測定し、母乳中のダイオキシン類濃度および母乳哺乳量と関連を検討した。幼児期、学童期の発育発達をアンケートで評価する方法についても検討した。
結果と考察
平成20年度は27検体の母乳中のダイオキシン類濃度を測定した。平成19年度の測定結果では、初産婦の産後1か月の母乳中ダイオキシン類濃度は平均値15.6 (7.0~35)pgTEQ/gfat であった。母乳中のダイオキシン類濃度は近年減少傾向が認められているが、平成18年の測定値16.3 pgTEQ/gfatと大差はなかった。出生時および1ヶ月時、1歳時での児の健康への影響を身体計測値、甲状腺機能、免疫機能、アレルギー反応で評価した結果、多くの項目では影響が認められなかったが、母乳中のダイオキシン類の濃度が高い場合には出生時と1ヶ月時の体重が少ない傾向が認められ、今後ダイオキシン類の影響を検討することが必要であると考えられた。また喫煙習慣が無い群ほど母乳中のダイオキシン類濃度が高いことが明らかになった。1歳時の血液中のダイオキシン類濃度は1年間に母乳から摂取したダイオキシン類の量に相関していた。
結論
母乳中のダイオキシン類濃度には低下傾向が認められているが、近年は減少傾向が軽微になっていることが明らかになった。ダイオキシン類の乳幼児の健康への影響は、近年はダイオキシン汚染の少ない検体が得られるようになったことから、軽微な影響は否定出来ないとの結果となったと考えられる。また母乳からのダイオキシン摂取量の多い児では1歳時の血液中ダイオキシン類濃度は成人の値より高いことも明らかになった。以上の結果は、現在程度の汚染の母乳の哺乳に関しては問題がないが、ダイオキシン類の人体への影響を明らかにするためには、さらなる研究が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-03-25
更新日
-