災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動期間及び質の高い活動内容に関する研究

文献情報

文献番号
202122033A
報告書区分
総括
研究課題名
災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動期間及び質の高い活動内容に関する研究
課題番号
21IA1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
太刀川 弘和(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学)
研究分担者(所属機関)
  • 五明 佐也香(獨協医科大学 医学部)
  • 丸山 嘉一(日本赤十字社医療センター 国際医療救援部・国内医療救護部)
  • 高橋 晶(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学)
  • 辻本 哲士(滋賀県立精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動は要領やマニュアルに即して行われているが、一方で活動開始や活動終了時期についての基準は明確でない。このため、被災県と支援を行うDPAT事務局の間で活動開始の判断にしばしば意見の相違が生じた。本研究は、DPAT活動の開始・終了基準の提案、先遣隊以外のDPATの役割を明確化し、災害時のDPATの活動期間及び質の高い活動内容を定めることを目的とする。また、新型コロナウイルス感染症におけるDPATの活動実績の調査を実施し、DPATの位置づけのための課題を明確化させる基礎資料として用いることを目的とする。
研究方法
今年度は以下の研究を実施した。
1. DPAT活動の開始基準と終結基準の認識の調査、並びに先遣隊以外のDPATの運用に関してのアンケ―ト調査(全国の精神保健福祉センター、自治体のDPAT事業担当課、DPAT隊員)
2. 新型コロナウイルス感染症に関するDPAT活動のアンケート調査並びにヒアリング調査
3. DPATが出動したJ-SPEEDデータの解析
4. 心理社会的支援(PSS)への移行時期にDPAT活動の調整の担い手であったスタッフへインタビュー調査
5. 文献調査
結果と考察
各分担班結果から、自治体、DPATはいずれも3割に開始・終了基準がなく、マニュアル記載があっても行政手続としての記載にとどまり、内容も様々であった。先遣隊以外のDPATの役割としては、活動拠点本部や現地での活動が多く挙げられた一方、研修不足を挙げる声もあった。
調査結果と文献調査を踏まえ、DPAT活動開始・終了基準(案)を次のように定めた。
1.DPAT活動開始基準(案)
下記のいずれかの状況が生じた場合、DPAT活動調整本部を設置し活動を開始することが望ましい。
•自都道府県で、震度6弱以上(東京都の場合は23区内において震度5強以上、その他の地域において震度6弱以上)の地震が発生した。
•自都道府県で大津波警報が発表された。
•自都道府県に特別警報(大雨洪水等)が発令された。
•自都道府県に災害対策本部や保健医療調整本部等の上位本部が設置された。
•自都道府県にDMAT調整本部が設置された。
•隣接する都道府県がEMIS災害モードに切り替わった。
•その他 自都道府県の知事が必要と認めた。

2.DPAT活動終了基準(案)
下記の全ての条件を踏まえ、 DPAT活動の引継ぎ先を明確に決定し、DPAT活動の終結並びに調整本部撤収を検討すること。
•EMIS内の被災圏域の精神病床を有する医療機関等が緊急時入力項目において「支援不要」となる。
•避難者数やDPAT活動における処方数、相談件数から精神保健活動や支援者支援のニーズの減少を総合的に推定できる。
•被災地の精神保健医療福祉に関わる機関(行政、保健所、精神保健福祉センター、被災地の精神科医療機関等)による対応が可能となる。
•保健医療調整本部等の合同会議において、災害医療コーディネーター、精神保健福祉センター長の他、被災地の精神保健医療福祉に関わる機関や他の保健医療福祉支援チーム等から終了の同意が得られている。

また、新型コロナウイルス感染症へのDPAT活動調査から、DPATがクラスター対応をすべきだと考えている自治体は全国で半数に満たず、実際に活動した自治体はさらに少数であったこと、ただし、活動した自治体では、災害精神医療チームであるDPATならではの活動が功を奏し、特に精神病棟の対応はDPAT以外の支援チームでは困難であることがわかった。課題として事前の感染症対策のトレーニングや自治体による補償、および平時からの他医療チームとの連携の重要性が示された。
結論
今年度の活動によって、DPATに求められるニーズや課題を明確化でき、DPATの活動開始・終了基準案を作成することができた。また、新型コロナウイルス感染症に関するDPAT活動の実態調査をすることにより、新興感染症対応体制におけるDPATの位置づけのための課題を明確化させる基礎資料を作成できた。次年度はDPAT事務局が主催する研修・訓練で基準案等を実際に使用し、その内容が現場で使用可能かについて議論の上、結果をDPAT事務局に提言し、活動マニュアルの修正や加筆の必要性を検討する。他に、先遣隊以外のDPATの役割の明確化、J-SPEED入力をより効率的にするための「簡易ユーザーガイド」の作成等を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-12-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-12-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 476,566円
人件費・謝金 785,346円
旅費 0円
その他 1,778,088円
間接経費 460,000円
合計 3,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
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