人口動態や地域の実情に対応するへき地医療の推進を図るための研究

文献情報

文献番号
202122029A
報告書区分
総括
研究課題名
人口動態や地域の実情に対応するへき地医療の推進を図るための研究
課題番号
21IA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小谷 和彦(自治医科大学 地域医療学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 隆浩(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 井口 清太郎(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 総合地域医療学講座)
  • 小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
  • 松本 正俊(広島大学大学院 医系科学研究科)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 佐藤 栄治(宇都宮大学 地域デザイン科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の「へき地医療」は、医療計画の一事業として対策されてきている。へき地では超高齢化と人口減少が進行しており、その実情に即した医療提供体制づくりの研究が必要である。そこで、今後のへき地医療計画(指標を含む)の策定に寄与すると考えられる課題として以下を挙げて検討した。(1)人口や医療機関へのアクセス状況の変化を踏まえたへき地医療の需給、特に無医地区・準無医地区の設定、(2)へき地医療機関への情報通信技術(ICT)の導入と普及可能性、(3)ICTを伴う看護の確立可能性、(4)国内外のへき地医療の情報整理。なお、今年度の研究は、3年計画の1年目に当たる。
研究方法
(1)無医地区・準無医地区の設定;都道府県別に、99.9%の人口をカバーする時間距離を算出し、これに対して現状の無医地区・準無医地区の人口と時間距離の位置を観察した。地理情報システム(GIS)を用いた。(2)へき地医療拠点病院とへき地診療所におけるICTの普及の実態;全国のへき地医療拠点病院(N=334)とへき地診療所(N=1,006)を対象に、2022年2月に、オンライン診療を含む遠隔医療に関する質問紙調査を郵送で行なった。質問項目については、遠隔医療の利用、利用のための支援、普及に関する課題を中心にした。(3)ICTを用いた看護実践の実態;ICTを活用している看護師に対して半構造化インタビュー調査を行った。インタビュー項目については、ICTを活用する体制、ICTを活用した実践状況、その効果と課題を主とした。(4)世界のへき地遠隔心疾患診療のレビュー;へき地での心疾患の遠隔医療に焦点を当てたシステマティックレビューを行った。
結果と考察
(1)人口と時間距離との関係から見ると、99.9%の人口をカバーする時間距離以内に無医地区・準無医地区が位置する都道府県もあれば、その時間距離を超えて位置する都道府県もあり、すなわち、同地区の指定の状況には都道府県差があった。へき地医療の需給について、全国的に議論するためには、同地区の規定を一様化するような指標(指数)を作成することも考慮され得る。(2)へき地医療拠点病院の55.4%、へき地診療所の88.1%から回答を得た。へき地医療拠点病院の35.1%、へき地診療所の14.4%で遠隔医療は利用されていた。都道府県や自治体からの支援と遠隔医療の使用には正の関連があった。へき地医療への遠隔医療の普及には医療機関を支援する方策が必要で、また遠隔医療のメリットを踏まえての利用方法の工夫(例えば巡回診療との組み合わせ)を検討すべきである。(3)ICTを伴う看護実践は医療での対応の必要性を判断するのに役立った。一方で、機器への習熟やアセスメント用の情報選定を含めた看護能力の確立が求められた。ICTの活用を促しつつ、人的資源の確保と技能開発とを並行する必要性が伺えた。(4)世界のへき地遠隔心疾患診療は、へき地の医師から都市部の専門医をつなぐ相談を目的としている場合が多かった。わが国の遠隔心疾患診療への導入に際して参考になる結果と思われた。
結論
今後のへき地医療計画やその指標に寄与すると考えられる知見が得られた。全国的に無医地区の一様でない設定の状況、へき地医療拠点病院とへき地診療所におけるICTの普及支援の必要性、ICTを伴う看護における人的資源の技能開発の必要性などの示唆を得られた。引き続き、検討を蓄積したい。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,400,000円
(2)補助金確定額
3,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 66,704円
人件費・謝金 1,808,390円
旅費 0円
その他 744,906円
間接経費 780,000円
合計 3,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-12-21
更新日
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