特定行為研修修了者の複数配置に関する実態把握及び有効活用に影響する要因の調査

文献情報

文献番号
202122024A
報告書区分
総括
研究課題名
特定行為研修修了者の複数配置に関する実態把握及び有効活用に影響する要因の調査
課題番号
20IA2008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 郁子(国立大学法人千葉大学 大学院看護学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 武志(札幌医科大学 保健医療学部)
  • 山本 則子(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科)
  • 北川 裕利(滋賀医科大学 麻酔学講座)
  • 藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 医学部救急医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,716,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定行為研修修了者(以下、修了看護師)が複数所属している組織における活動・活用の実態を明らかにし(目的1)、組織が修了看護師を複数配置し、活用するための影響要因(促進要因・阻害要因)を明らかにする(目的2)。さらに、明らかになった調査結果から、組織内で修了看護師を活用するための提言及びガイドの作成をする(目的3)ことである。
研究方法
修了看護師の配置に関連する要因を把握するため2020年度の全国調査で収集した看護部長データを用いて、詳細多変量分析を行った(研究1-1)。
次いで、同一施設もしくは法人内において修了看護師の複数配置実績のある2組織において複数配置に至った経緯、管理者の管理実践、修了看護師の実践、活用の阻害要因と促進要因に関するインタビュー調査(研究2-1, 2-2)により実態把握と課題の解明を行った。
分担研究の結果を理論的に統合し、急性期病院における特定行為研修修了者活用配置モデルVer2を作成した。さらに、質的に検証するため、修了看護師を複数配置している施設の修了看護師および修了看護師の活動を管理する看護管理者、修了看護師とともに活動する医師の3者を対象にインタビュー調査を実施した(研究3-1)。インタビューデータを質的に分析し、複数の修了看護師の配置活用プロセスにおける修了看護師と看護管理者、医師それぞれの具体的なアクションが明らかとなった。このアクションリストをもとに、組織で複数の修了看護師を配置活用するためのガイドを作成した。
結果と考察
特定行為研修修了看護師の複数配置・活用分類は、横軸を配置、縦軸を活用ビジョンとして3象限に活動を分類したものであり、本研究班での2年間にわたる理論的検討と全国調査、インタビュー調査を統合し洗練化された配置活用分類である。横軸は配置であり、部署固定配置と組織横断型配置で分類した。縦軸は、医師と離れて包括的指示による患者マネジメントを行う活動と、医師とともに活動し手順書のほか具体的指示による医行為も実施するという活用ビジョンを示す。この2軸によりA、B、Cの3つの象限に分類した。A分類は以下のようなモデルで活動する。修了看護師は部署に固定配置され医師と離れて自律的に活動する。包括的指示により自律的に部署の患者管理を行う。修了看護師がその部署に看護チームの各勤務帯に1人以上常に存在し、患者の状況を臨床判断し、必要な特定行為を実施する。B分類は組織横断型配置により、包括的指示により限定された患者集団のマネジメントを行う活用配置分類である。ラウンドチームなどに配属され活動日を設けるなど、これまでの認定看護師、専門看護師の活用の方法と同様のマネジメントが援用できるため、看護管理者にとってはイメージしやすく活用しやすい。C分類では、修了看護師は手順書に基づいた特定行為の実施を行うほか、医師とともに活動し、具体的指示により限定された医行為を患者に適時適切に実施する。部署固定配置の場合も組織横断型配置の場合もある。
 修了看護師が組織から期待される役割を受け入れ発揮し、患者家族により良い診療ケアを提供することで医療の質を向上させるためには、組織が修了看護師の活躍を支援する組織として発展していく必要がある。発展過程は、大きく構想、育成、配置・活用、普及の5段階から構成され、修了看護師導入前に、構想、育成、配置が含まれる。また修了看護師導入後に活用、普及が含まれ、この5段階すべてを通じ、組織内外に周知を行う。第一の障壁とは、修了看護師の導入の困難を指し、第二の障壁とは、修了看護師の複数配置が困難な状態を指す。修了看護師が組織内で十分活用されていないため、修了看護師の増員が難しい状態である。
 以上のモデルをもとに、特定行為修了看護師の複数配置・活用ガイドを作成した。活用ガイドは管理チーム、医師、修了看護師それぞれに求められる行動を、修了看護師の活躍を支援する組織の発展過程(構想、育成、配置、活用、普及、周知)ごとに分類し説明し、これをもとにそれぞれのアクションリストを作成し付録とした。
結論
研究1では、2020年度に実施した看護部長データの追加解析を行い、各病院に修了看護師がいることに関連する要因を明らかにした。
研究2では、修了看護師を複数配置している2つの組織に対して、組織的活用プロセスにおけるインタビューおよび質問紙調査を実施し、複数配置に至った経緯と配置プロセス、認識している効果、組織的支援を明らかにした。
研究3では、修了看護師を複数配置している施設の看護管理者、医師、修了看護師を対象にインタビュー調査を実施し、配置活用プロセスにおけるそれぞれの具体的な活動を明らかにした。
研究成果を統合し、理論的検討により修了看護師配置活用モデルを精錬し、本研究の目的3である活用ガイドおよび提言を示した。

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202122024B
報告書区分
総合
研究課題名
特定行為研修修了者の複数配置に関する実態把握及び有効活用に影響する要因の調査
課題番号
20IA2008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 郁子(国立大学法人千葉大学 大学院看護学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 則子(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科)
  • 山本 武志(札幌医科大学 保健医療学部)
  • 北川 裕利(滋賀医科大学 麻酔学講座)
  • 藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 医学部救急医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、特定行為研修修了者が複数所属している組織における活動・活用の実態を明らかにし(目的1)、組織が修了者を複数配置し、活用するための影響要因(促進要因・阻害要因)を明らかにする(目的2)。さらに、明らかになった調査結果から、組織内で修了者を活用するための提言及びガイドの作成をする(目的3)ことである。
研究方法
研究目的1に対して、国内文献の体系的検討(中間報告書;研究1-1)により調査枠組みを開発し、これをもとに特定行為研修修了者が勤務している病院1,300か所の施設管理者と看護管理者を対象に調査を行い、特定行為研修修了者単独配置群と複数配置群で比較した(中間報告書;研究1-2)。また研究1-2の参加者のうち、同意を得られた施設管理者と看護管理者に対して修了者複数配置に影響する要因についてインタビュー調査を実施し、内容分析を行った(中間報告書;研究1-3)。これらの研究結果から修了者の活用配置モデルVer1を作成した。研究目的2を達成するために修了者を複数配置している2つの組織に対して、組織的活用プロセスにおけるインタビュー及びアンケート調査を実施し、複数配置に至った経緯、認識している効果、組織的支援、今後の課題について分析した(2020年度)。
これらの各研究結果を統合し、修了者の活用配置モデルを理論的に検討することで特定行為研修修了者活用配置モデルVer2を作成した。さらに研究目的3を達成するために、修了者を複数配置している施設の修了者および修了者の活動を管理する看護管理者、修了者とともに活動する医師の3者を対象にインタビュー調査を実施し、特定行為研修修了者活用配置モデルVer2を質的に検証し、修了者配置活用の発展段階ごとの修了者、看護管理者、医師の具体的なアクションを明らかにした。研究期間は2020年4月から2022年3月であった。
結果と考察
特定行為研修修了看護師の複数配置・活用分類は、横軸を配置、縦軸を活用ビジョンとして3象限に活動を分類したものである。横軸は配置であり、部署固定配置と組織横断型配置で分類した。縦軸は、医師と離れて包括的指示による患者マネジメントを行う活動と、医師とともに活動し手順書のほか具体的指示による医行為も実施するという活用ビジョンを示す。この2軸によりA、B、Cの3つの象限に分類した。A分類では修了看護師は部署に固定配置され医師と離れて自律的に活動する。B分類は組織横断型配置により、包括的指示により限定された患者集団のマネジメントを行う活用配置分類である。C分類では、修了看護師は手順書に基づいた特定行為の実施を行うほか、医師とともに活動し、具体的指示により限定された医行為を患者に適時適切に実施する。部署固定配置の場合も組織横断型配置の場合もある。
 組織がこのような修了看護師の活躍を支援する組織として発展していく必要がある。その発展過程は、大きく構想、育成、配置・活用、普及の5段階から構成され、修了看護師導入前に、構想、育成、配置が含まれた。また修了看護師導入後に活用、普及が含まれ、この5段階すべてを通じ、組織内外に周知を行う。第一の障壁とは、修了看護師の導入の困難を指し、第二の障壁とは、修了看護師の複数配置が困難な状態を指す。修了看護師が組織内で十分活用されていないため、修了看護師の増員が難しい状態である。
 以上のモデルをもとに、特定行為修了看護師の複数配置・活用ガイドを作成した。活用ガイドは管理チーム、医師、修了看護師それぞれに求められる行動を、修了看護師の活躍を支援する組織の発展過程(構想、育成、配置、活用、普及、周知)ごとに分類し説明し、これをもとにそれぞれのアクションリストを作成し付録とした。
また最終的に特定行為研修修了看護師活用の組織的指標の明確化と提言を行った。
結論
特定行為研修修了看護師活用の組織的指標は、修了看護師を導入する組織としての目的を明確にしている、組織の導入目的を達成するための修了看護師の配置・活用ビジョンを策定し組織的合意を得ている、組織として修了看護師への役割期待を明確にしている。職員の学習環境の整備を行っている、修了看護師のキャリア開発の仕組みを作っている。修了看護師の役割、活動および特定行為およびその効果、意義に関する周知を定期的に行っているなどの11項目があげられた。

修了看護師の組織的活用に向けての提言は以下の4点である。提言1 組織として修了看護師の活動を支援する体制と環境づくりに責任を持つ。提言2 組織として専門職連携実践を促進する。提言3 修了看護師は組織からの役割期待を自己の活動ビジョンおよびキャリアビジョンに統合し、自組織における役割開発を行う。提言4 医師と修了看護師は、協働的パートナーとして、互いの役割と責任、専門的知識を理解する。

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202122024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特定行為研修修了看護師の複数配置・活用分類と、特定行為研修修了者の組織的配置活用の発展過程からなる、特定行為研修修了者活用配置モデルを作成した。
臨床的観点からの成果
修了看護師を活用するためのガイドを作成した。ガイドは組織管理チーム、医師、修了看護師の方々を対象に行動レベルで活用可能であり、今後はガイドを普及し、現場で活用されることで修了看護師のさらなる配置活用の推進が期待される。高度な知識・技術を持つ修了看護師の増加が、患者に提供される医療の質の向上に貢献することを期待する。
ガイドライン等の開発
特定行為研修修了者活用配置モデルVer3を作成し、組織内で修了看護師を活用するためのガイドを作成した。ガイドは組織管理チーム、医師、修了看護師の方々を対象に行動レベルで活用可能であり、今後はガイドを普及し、現場で活用されることで修了看護師のさらなる配置活用の推進が期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究の結果から作成された特定行為研修修了看護師の組織的配置・活用ガイドは、組織管理チーム、医師、修了看護師の方々を対象に行動レベルで活用可能であり、今後はガイドを普及し、現場で活用されることで国の特定行為研修制度を修了した看護師のさらなる配置活用の推進が期待される。
その他のインパクト
研究活動で得られた成果は複数の学術集会等で公表し、参加者との討議を行い活用ガイドに反映させた。
学術集会等での反響から活用ガイドの需要の大きさが示唆されたため、今後は、修了者を活用した医療サービスの提供、医師-看護師間の連携等の推進に向けて、開発した活用ガイドを現場で広く活用してもらうために、引き続き学会発表等で普及活動を継続する。また、活用ガイドと連動した動画教材の作成を予定している。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
講演2件、シンポジウム開催6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山本武志, 佐伯昌俊, 西宮 岳, 小松 亮, 山本則子, 酒井郁子
特定行為研修を修了した看護師の導入・配置に関わる要因:全国300床以 上の病院の看護管理者を対象とした横断的研究
日本看護管理学会誌  (2023)
原著論文2
佐伯昌俊, 小松 亮, 西宮 岳, 酒井郁子
急性期病院において複数の特定行為研修修了者の 活動を支援する管理実践の要素 ―管理者へのインタビューによる質的研究―
日本看護管理学会誌  (2023)

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
2023-06-13

収支報告書

文献番号
202122024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,319,000円
(2)補助金確定額
11,319,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,315,583円
人件費・謝金 3,096,928円
旅費 10,140円
その他 2,293,349円
間接経費 2,603,000円
合計 11,319,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
2022-10-28