長時間労働を行う医師の健康確保の手法等に関する研究

文献情報

文献番号
202122021A
報告書区分
総括
研究課題名
長時間労働を行う医師の健康確保の手法等に関する研究
課題番号
20IA2004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 裕雄(順天堂大学 大学院医学研究科公衆衛生学講座)
  • 中野 博(国立病院機構福岡病院呼吸器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和3年(2021年)5月に成立した「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(以後、改正医療法)」では「医師の働き方改革」が推進されている。しかしながら、令和6年(2024年)の施行時で約10%の医師が、地域医療体制の維持および自己研鑽等の理由で、年間1,860時間に達する時間外労働に従事する見込みであることが明らかとなった。これらの長時間労働を行う医師の健康確保を目的に「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」が作成された。同マニュアルの幾つかある特徴の一つとして、慢性の睡眠不足および疲労の客観的評価を行うことが推奨されいる。さらに、その一手法として、アクチグラフの活用、および、精神運動覚醒テスト(psychomotor vigilance task, PVT)の活用を提案している。本研究では、オンライン版PVTを客観的評価アプリとして作成した。2020年度は客観的評価アプリ・テスト版を用いて、個人レベルの疲労あるいはうつ症状を客観的に評価できる可能性が示された。そこで、2021年度の研究では、本格的な社会実装を目指して客観的評価アプリ・社会実装版を作成し、その検証および社会実装の際の問題点を抽出した。
研究方法
2021年度の研究では、本格的な社会実装を目指して客観的評価アプリ・社会実装版を作成し、その検証および社会実装の際の問題点を抽出することを目的とした。なお、新型コロナウイルスパンデミックの中、本年度は医療従事者を対象とする調査を実施出来なかったため、小児の疫学研究に参加して多人数を同時に対象とする環境で検証作業を試みた。
 調査研究は、東京都某区の区立小学校(6校)の小児および保護者(約2,000名)を対象とし、保護者には質問表調査、小児には客観的評価アプリ・社会実装版を施行して貰うことにより、客観的評価アプリ・社会実装版について、社会実装の可能性についての検証を行った。
 対象の区では、政府のICT政策の一環として、全員に同じChromebook(日本HP Chromebook x360 11 G3 EE, Wi-Fiモデル)が配布されており、授業等で活用されている。本Chromebookを活用し、客観的評価アプリ・社会実装版の検証を行った。各個人間の機器による差は皆無であると考えられた。
結果と考察
全児童数2,789名のうち2,120名(76%)の保護者から有効回答を得た。また、全児童数2,789名のうち2,049名(73%)の児童から有効回答を得た。客観的評価アプリ・社会実装版における覚醒度検査の平均反応速度は、1・2年生、3・4年生は300~350ミリ秒、5・6年生は250~300ミリ秒に分布することが明らかになり、学年が上がるにつれ反応速度が早くなると考えられた。さらに、本研究を実施する際に、プライバシー保護、データ入出力、結果返し等を適切に遂行可能であることが示された。小児とその保護者という一児童につき複数の回答者がいる複雑な状況にも対応可能であった。一部の1・2年生に、実施方法が把握できないというユニバーサルデザインの観点からの課題も見られ、現場での追加説明が必要となったが、高学年では同様の状況は観察されず、小学校高学年以上では問題なく本客観的評価アプリ・社会実装版を実施可能であると考えられた。 
結論
本研究班で開発した客観的評価アプリ・社会実装版アプリを用いて、長時間労働の医師の健康について客観的評価を下す際に、多人数の医師を対象とすることによる参加者が極めて多い状況でのアプリの動作性能、さらには、プライバシー保護、セキュリティー、デザイン、フィードバックの手法にかかる問題等が懸念されたが、本研究により本客観的評価アプリ・社会実装版による社会実装が可能であることが明らかとなった。 

公開日・更新日

公開日
2023-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,200,000円
(2)補助金確定額
3,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 748,850円
人件費・謝金 178,119円
旅費 0円
その他 1,535,031円
間接経費 738,000円
合計 3,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-10-24
更新日
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