文献情報
文献番号
202122020A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療構想の実現のためのNCDの利活用についての政策研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20IA2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 裕章(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 岩中 督(東京大学 医学部附属病院)
- 瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
- 掛地 吉弘(神戸大学大学院医学研究院 食道胃腸外学)
- 横山 斉(福島県立医科大学 医学部)
- 本村 昇(東邦大学 医学部)
- 神野 浩光(帝京大学 医学部)
- 佐藤 幸夫(筑波大学 医学医療系 呼吸器外科学)
- 岡本 高宏(東京女子医科大学 医学部 内分泌外科)
- 香坂 俊(慶應義塾大学 医学部 循環器内科)
- 隈丸 拓(東京大学 医学部附属病院)
- 山本 博之(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
- 高橋 新(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,168,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究はNCDデータの活用によって、日本における都道府県および二次医療圏といった地域毎の医療提供体制の実態を把握し、よりよい医療提供が可能となる指標を確立するものである。NCDデータを用いて、地域毎の手術症例数、疾患領域別の症例分布などを分析し実態を把握する。これまで具体的には把握されていなかった地域単位の手術治療実績を可視化することで、地域毎の医療提供体制の過不足を予測し、適切な医療提供体制を検討することが可能となる指標を確立する。
研究方法
本年度の研究では,NCDに登録されている2011年から2020年手術症例データを用いて,都道府県単位で外科手術数における経年推移が可能となるよう集計を行った。また、公表されている人口将来推計値を用いて2015年から2045年までの手術症例数の将来推計を算出した。将来推計の算出には、消化器外科領域の高難度手術として食道切除再建術、心臓血管外科領域における緊急手術として急性大動脈解離手術を対象とした。
結果と考察
本年度は,各都道府県および二次医療圏単位での2011年から2020年までの10年間の手術症例データを用いて、地域単位での手術実績の経年比較および、消化器外科領域および心臓血管外科領域の手術実績を参考に2045年までの将来推計を行った。NCDデータを活用することで,都道府県や二次医療圏といった地域毎の医療提供体制の実態を把握することが可能であった。全国単位で検討した場合、食道切除再建術および急性大動脈解離手術共に、90歳以上については2040年をピークとして手術実施が増加することが見込まれた。また、85歳以上90歳未満については、2035年に症例数のピークを迎え2040以降は減少傾向となることが明らかとなった。一方で、都道府県単位で推計値の変化を確認すると、大都市圏は2040年頃まで増加傾向にあるものの、地方都市などはすでに症例のピークを迎えている都道府県も確認された。これにより各専門領域における専門家の育成や教育,適正配置について、根拠に基づいた議論を行うことが期待できるものである。また収集したデータは日本全体をカバーする悉皆性の高い情報であるため,厚生労働行政における医療機関の機能の棲み分けや、地域医療構想のあり方を検討する上で不可欠な資料を提供することが可能となる.厚生労働行政が検討する複数の施策案についても,NCDの実証データに基づき政策がもたらす影響について事前に検証することも可能である。政策が各地域における病院機能,専門医育成,救急搬送体制,患者アクセス,医療資源等の側面にもたらす影響を事前に検証することは,より適切な厚生労働施策を選択する上で有用な方法であると思われる。
NCDの各専門領域は外科系以外にも,がん領域や循環器疾患の領域では既に内科系との連携が始まっており,手術や侵襲的治療にとどまらず,内科的治療も含めた総合的な品質評価が実現されつつある。日本全国を網羅したネットワークを活用して,今後は一般外科以外の領域についても横断的に研究を進めることが可能である。
NCDの各専門領域は外科系以外にも,がん領域や循環器疾患の領域では既に内科系との連携が始まっており,手術や侵襲的治療にとどまらず,内科的治療も含めた総合的な品質評価が実現されつつある。日本全国を網羅したネットワークを活用して,今後は一般外科以外の領域についても横断的に研究を進めることが可能である。
結論
NCD登録された2011年から2020年の10年分の手術症例データを用いて地域における手術実績の把握を行うことが可能であった。人口推計データを活用することで,2045年までの手術症例の将来推計が可能となり,地域における手術治療の需給を検討することが可能となるものである。大規模データベースを用いることで日本における治療実績の実態把握が可能であり、今後の政策検討においてエビデンスにつながることが期待されるものである。
公開日・更新日
公開日
2025-05-26
更新日
-