医療安全に専門性を有する医師人材養成および医療機関のリスク量測定に関する研究

文献情報

文献番号
202122019A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に専門性を有する医師人材養成および医療機関のリスク量測定に関する研究
課題番号
20IA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
長尾 能雅(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 大川 淳(国立大学法人東京医科歯科大学 整形外科学)
  • 遠山 信幸(自治医科大学 医学部)
  • 南須原 康行(北海道大学医学部・歯学部附属病院医療安全管理部)
  • 兼児 敏浩(三重大学 医学部附属病院)
  • 浦松 雅史(東京医科大学 医療の質・安全管理学分野)
  • 梅村 朋(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 植村 政和(名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
  • 深見 達弥(名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,010,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筆者らは、平成27・28年度の厚生労働科学研究「医療安全管理部門への医師の関与と医療安全体制向上に関する研究」において、患者安全に専従・専任する医師の配置が患者安全の向上に大きく貢献する可能性があることを示した。さらに、平成30・31年度の厚生労働科学研究「医療安全管理体制の可視化と人材育成のための研究」において、①医療集団に潜在するリスク量の算出・比較方法(リスク指標)の開発と応用、②患者安全に専門性を有する医師人材養成プログラム(最高質安全責任者(CQSO)養成プログラム:150時間)の開発と実施、③患者安全に成果を上げることのできる「人材養成システム評価体制」の開発、を行った。
本研究では、これらをさらに発展させ、(1)CQSO養成プログラムの改定と研修の実施・修了生の中長期的支援、(2)医療機関のリスク低減への効果測定、(3)成果を出した医師のコンピテンシーおよび有用であった教育コンテンツの特定、(4)リスク評価技術のさらなる精度向上(計算式の多様化、データ収集、リスク原因の特定)に取り組むこととする。
研究方法
本研究では教育プログラムの効果を受講生の施設のリスク低減の観点で評価する。教育前後で受講生の施設のリスク量を測定し、リスク量低減に成功した受講生にはどのような特徴があるのかを分析し、次の教育プログラムの改編につなげる。
医療安全活動のループ(図 2)に基づき平成30・31年度の研究において作成された総授業時間150時間(受講期間は半年間)のカリキュラムについて、いくつかのカテゴリーごとに到達目標SBOs(Specific Behavioral Objectives)を定め(図 3~図 7)、受講前と受講後の到達レベルを4段階で評価する。各授業ごとに到達目標を定め、受講前と受講後の到達レベルをVASスケールで評価する(図 8)。また各授業ごとにニーズフィット度、リスク低減への効果等についてアンケートを実施する(図 9)。教育実施前後で受講生の施設のリスク量を測定する。



結果と考察
・最高質安全責任者(CQSO)第3期生の養成を開始し、令和4年6月に9名が修了した。
・CQSOに対し半年ごとのフォローアップ研修と、計3回の研究会を実施、中長期的支援を開始した。
・リスク量測定に新たに「センチネル(コア)スコア」を追加した。
・リスク量算出の精度を向上させた。
・リスク量算出を自動で行うインシデントレポートシステムを開発した。
・リスク量測定に関してPCT国際出願を行い、「新規性・進歩性を有する」、「格別な効果を奏する」との回答を得た(現在、日米に移行中)。
結論
医療安全に専門性を有する医師人材養成、および医療機関のリスク量測定は、本邦患者安全の向上において有用であり、今後も継続した取り組みが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2022-09-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202122019B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全に専門性を有する医師人材養成および医療機関のリスク量測定に関する研究
課題番号
20IA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
長尾 能雅(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 大川 淳(国立大学法人東京医科歯科大学 整形外科学)
  • 遠山 信幸(自治医科大学 医学部)
  • 兼児 敏浩(三重大学 医学部附属病院)
  • 南須原 康行(北海道大学医学部・歯学部附属病院医療安全管理部)
  • 浦松 雅史(東京医科大学 医療の質・安全管理学分野)
  • 梅村 朋(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 植村 政和(名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
  • 深見 達弥(名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筆者らは、平成27・28年度の厚生労働科学研究「医療安全管理部門への医師の関与と医療安全体制向上に関する研究」において、患者安全に専従・専任する医師の配置が患者安全の向上に大きく貢献する可能性があることを示した。さらに、平成30・31年度の厚生労働科学研究「医療安全管理体制の可視化と人材育成のための研究」において、①医療集団に潜在するリスク量の算出・比較方法(リスク指標)の開発と応用、②患者安全に専門性を有する医師人材養成プログラム(最高質安全責任者(CQSO)養成プログラム:150時間)の開発と実施、③患者安全に成果を上げることのできる「人材養成システム評価体制」の開発、を行った。
本研究では、これらをさらに発展させ、(1)CQSO養成プログラムの改定と研修の実施・修了生の中長期的支援、(2)医療機関のリスク低減への効果測定、(3)成果を出した医師のコンピテンシーおよび有用であった教育コンテンツの特定、(4)リスク評価技術のさらなる精度向上(計算式の多様化、データ収集、リスク原因の特定)に取り組むこととする。また、1年目において全国の医療機関に緊急のアンケート調査を行い、COVID-19感染症拡大の影響下におけるインシデントやリスクを分析し、(5)COVID-19感染症影響下における効果的な医療安全管理体制について検討する。
研究方法
本研究では教育プログラムの効果を受講生の施設のリスク低減の観点で評価する。教育前後で受講生の施設のリスク量を測定し、リスク量低減に成功した受講生にはどのような特徴があるのかを分析し、次の教育プログラムの改編につなげる。
医療安全活動のループ(図 2)に基づき平成30・31年度の研究において作成された総授業時間150時間(受講期間は半年間)のカリキュラムについて、いくつかのカテゴリーごとに到達目標SBOs(Specific Behavioral Objectives)を定め(図 3~図 7)、受講前と受講後の到達レベルを4段階で評価する。各授業ごとに到達目標を定め、受講前と受講後の到達レベルをVASスケールで評価する(図 8)。また各授業ごとにニーズフィット度、リスク低減への効果等についてアンケートを実施する(図 9)。教育実施前後で受講生の施設のリスク量を測定する。
平成27・28年度の厚生労働科学研究「医療安全管理部門への医師の関与と医療安全体制向上に関する研究」で実施されたアンケートを参考にして、医療安全に対する医師の関与の有効性を明らかにするためのアンケートを行う。アンケートの対象は110床以上の全国4916施設であり、回答期間は令和3年2月26日~令和3年3月21日、回答方法はWeb(ID・パスワード)とする。回答は医師以外の資格を有する医療安全管理者に依頼する。


結果と考察
・最高質安全責任者(CQSO)第2期生9名を輩出するとともに、第3期生の養成を開始し、令和4年6月に9名が修了した。
・CQSOに対し半年ごとのフォローアップ研修と、計3回の研究会を実施、中長期的支援を開始した。
・リスク量測定に新たに「センチネル(コア)スコア」を追加した。
・リスク量算出の精度を向上させた。
・リスク量算出を自動で行うインシデントレポートシステムを開発した。
・リスク量測定に関してPCT国際出願を行い、「新規性・進歩性を有する」、「格別な効果を奏する」との回答を得た(現在、日米に移行中)。
・アンケートの回答件数は719件で、回答率は14.6%であった。また施設規模ごとの回答率は、小規模(199床以下):10.6%、中規模(200~399床):16.4%、大規模(400床以上):23.8%であった。
・専従・専任医師の配置は各医療機関における患者安全業務の成果向上に寄与することが示された。
・特に大規模施設においては専従医師の配置が有効であることがより明確に示された。
・医療安全責任者や専従・専任医師の医療安全に対する「積極性」「肯定性」が重要であることが示された(より質の高い人材養成プログラムの必要性が示唆される)。
・COVID-19影響下においては、患者安全と感染制御の分立、分業、連携の重要性が示唆された。
結論
医療安全に専門性を有する医師人材養成、および医療機関のリスク量測定は、本邦患者安全の向上において有用であり、今後も継続した取り組みが望まれる。また、COVID-19影響下においては、患者安全と感染制御の分立、分業、連携の重要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2022-09-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202122019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
・最高質安全責任者(CQSO)第2期生9名、第3期生9名を輩出し、プログラムの定量的評価と改訂を行った。今後の人材養成の継続と、患者安全の向上に繋がるものである。
・リスク量算出の精度を向上させ、リスク量算出を自動で行うインシデントレポートシステムを開発した。このシステムの活用により、医療機関における患者安全上のリスクの定量化や、比較、経年推移の評価等が可能となる。
・リスク量測定に関してPCT国際出願を行い、「新規性・進歩性を有する」、「格別な効果を奏する」との回答を得た(現在、日米に移行中)。
臨床的観点からの成果
・最高質安全責任者(CQSO)第2期生9名、および第3期生9名を輩出した。修了生の多くは全国の医療機関で患者安全活動における中心的役割を担い、活躍している。
・専従・専任医師の配置が各医療機関における患者安全業務の成果向上に寄与することが、改めて示された。
・特にCOVID-19影響下においては、患者安全と感染制御の分立、分業、連携の重要性が示唆された。
・成果を挙げるには、医療安全責任者や専従・専任医師の、医療安全に対する「積極性」「肯定性」が重要であることが示された。

ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
1999年以降、医療安全・患者安全施策の一環として行政が推進してきた「医師・歯科医師の専従安全管理者の育成と配置」の有用性が改めて明らかとなった。特にCOVID-19影響下においては、患者安全と感染制御の分立、分業、連携の重要性が示唆され、医師の安全管理者の養成は重要となる。これらの医師・歯科医師に求められるコンピテンシーや能力を体系的に習得したCQSOが新たに18名輩出された。また、成果を定量化する技術について、開発が進んだ。
その他のインパクト
「医療機関のリスクを定量化する技術」の社会実装について、実現に近づいている。リスクの部署間比較、施設間比較、経年的推移、成果を出せるリーダーの育成方法の定型化、リスクの予知などに繋がる技術であり、今後のさらなる開発が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
内科学の教科書に掲載された(内科学第12版,Ⅰ.内科学総論,3.患者安全:朝倉書店)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
リスク評価システム、リスク評価方法およびコンピュータプログラム
詳細情報
分類:
特許番号: 出願中
発明者名: 植村政和・長尾能雅・田辺公一
権利者名: 名古屋大学・名城大学
出願年月日: 20191030
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tatsuya Fukami, Yoshimasa Nagao
The comprehensive double loop activities for patient safety management
ANNALS OF MEDICAL and SURGERY  (2022)
https://doi.org/10.1016/j.amsu.2022.103520

公開日・更新日

公開日
2022-06-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202122019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,610,000円
(2)補助金確定額
4,598,000円
差引額 [(1)-(2)]
12,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 261,102円
人件費・謝金 1,265,930円
旅費 0円
その他 2,471,048円
間接経費 600,000円
合計 4,598,080円

備考

備考
自己資金額80円

公開日・更新日

公開日
2022-12-09
更新日
-