文献情報
文献番号
200837013A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の遺伝毒性を有する有害物質のリスク管理に資する総合研究
課題番号
H18-食品・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
今井 俊夫(国立がんセンター研究所 実験動物管理室)
研究分担者(所属機関)
- 紅林 秀雄(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
- 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
- 渋谷 淳(東京農工大学大学院 共生科学技術研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、食品中の遺伝毒性を有する有害物質としてアクリルアミド(AA)を対象にしている。食品からのAA摂取量は、成人よりも小児の方が多いと推定されていることから、その体内動態及び毒性に関し、胎児期、乳幼児期、春機発動期、成熟期など各ライフステージにおける特性及び感受性の違いを実験的に検討する。用量反応性を考慮した解析により、小児を含むヒトに対するリスク管理に資するデータを構築する。
研究方法
[代謝] 4及び14週齢の雌ラットに[2,3-14C]AAを0.5 mg/kg体重の用量で1回強制経口投与した。[神経、精巣毒性] 3及び7週齢の雄ラットにAAを50、100、200 ppmの用量で各4週間飲水投与した。[発がん性] 雌雄ラットの乳幼児期にAAを20、40、80 ppmの用量で飲水投与した後、7週齢時にN-メチル-N-ニトロソ尿素による処置を行い50週齢まで飼育した。[遺伝毒性] 3、7及び11週齢のgpt delta雄ラットにAAを20、40、80 あるいは50、100、200 ppmの用量で4週間飲水投与した。
結果と考察
[代謝] 投与72時間後までに幼若ラットでは85 %、成熟ラットでは73 %の排泄が確認された。また、血液に残留がみられたが、その濃度は成熟ラットに比し幼若ラットで低かったことから、AAの代謝、排泄は成熟ラットより幼若ラットで速いことが推察された。 [神経、精巣毒性]神経毒性については幼若期と発育期の感受性差を認めなかったが、精巣毒性については特に高用量群で、幼若期に高感受性であることを示す所見が得られた。[発がん性] AAの乳幼児期投与による甲状腺、乳腺を含む諸臓器、組織における腫瘍性病変の発生頻度への影響はみられなかった。[遺伝毒性] 幼若ラットの精巣において、成熟ラットの5倍量以上のDNA付加体の蓄積がみられ、コメット試験、小核試験、遺伝子突然変異解析でも幼若ラットの高感受性を示す結果が得られた。検索した他の臓器、組織では成熟、幼若ラットの違いはみられなかった。
結論
AAの幼若期投与による体内動態、神経毒性及び発がん性について、成熟動物に比して幼若動物の感受性が高いことを示唆する結果は得られなかったが、精巣毒性および精巣における遺伝毒性については幼若期に高感受性であり、DNA付加体が精巣毒性に関与している可能性が示された。
公開日・更新日
公開日
2009-04-10
更新日
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