食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握と治療法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
200837012A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握と治療法の開発等に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
  • 内 博史(九州大学病院 油症ダイオキシン研究診療センター)
  • 岸 玲子(北海道大学 大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学)
  • 宮田 秀明(摂南大学 薬学部環境保健学教室)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 赤峰 昭文(九州大学 大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯内疾患制御学研究分野)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究院眼科学分野)
  • 岩本 幸英(九州大学 大学院医学研究院整形外科学分野)
  • 越智 博文(九州大学 大学院医学研究院神経内科学分野)
  • 古賀 信幸(中村学園大学 栄養科学部)
  • 月森 清巳(九州大学 大学院医学研究院生殖病態生理学分野)
  • 辻 博(北九州津屋崎病院 内科)
  • 徳永 章二(九州大学病院 医療情報部)
  • 中西 洋一(九州大学 大学院医学研究院呼吸器内科学分野)
  • 中山 樹一郎(福岡大学 医学部皮膚科)
  • 長山 淳哉(九州大学 大学院医学研究院保健学部門)
  • 松本 主之(九州大学 大学院医学研究院病態機能内科学分野)
  • 山田 英之(九州大学 大学院薬学研究院分子衛生薬学専攻分野)
  • 佐藤 伸一(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野)
  • 隈上 武志(長崎大学 医学部歯学部附属病院眼科)
  • 吉村 俊朗(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
269,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PCBやPCDF等のダイオキシン類が曝露後長期間経過した場合に生体に与える影響について明らかになっていない。油症患者の症状と原因物質の濃度の推移を解析する必要がある。また有効な薬剤がない現在、臨床応用可能な薬剤の臨床試験が望まれている。
研究方法
油症検診を継続し、油症患者の症状、生体内のPCBやダイオキシン類濃度、各検査結果を把握し解析する。全国班診定委員会を開催し、未認定者を総合的に評価し診定を行う。油症相談員制度を継続し患者の健康実態調査を行う。PCBやダイオキシン類が生体に及ぼす影響を明確にし、油症原因物質の体外への排泄を促進する方法を開発するために、基礎的研究を行う。本研究を通じて得られた知識で、情報公開可能なものについては極力公表する。
結果と考察
検診において、全身倦怠感や関節痛、眼脂過多、歯周炎ならびに口腔内色素沈着、面皰やざ瘡など油症特有の症状は今なお残存しており、加齢による影響も伴っていた。血液ダイオキシン類濃度と骨粗鬆症に関連した愁訴(身長の低下や関節痛など)との間に正の相関が見られたため、骨密度測定など整形外科検診を開始した。油症患者の主要死因別の死亡リスクについて、全国平均と比較して評価したところ、男性の全がんおよび肺がんのリスクが有意に高かった。ダイオキシン類の体外排泄を促すため、コレスチラミドによる臨床試験を継続した。基礎的研究では、ヒト表皮細胞を用いて排気ガスやタバコ煙中に含まれるダイオキシン類のベンゾピレンがaryl hydrocarbon recepotor(AhR)を介して炎症性サイトカイン・ケモカインであるIL-8の産生が促進した。PeCDFを経口投与したラットにコレスチラミドを投与したところ、初回吸収を抑制し糞中排泄が促進された。
結論
2008年度に新たに14名を油症患者と認定できた。PCB, PCDFは複数の検査項目や検診所見と強い相関を示していた。本研究を通してPCB/ダイオキシン類が生体に与える影響が明らかになりつつある。ダイオキシン排泄に関する治療法について、更なる検討を加え、臨床試験を継続して、治療法を確立し、患者の健康増進に務める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200837012B
報告書区分
総合
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握と治療法の開発等に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 赤峰 昭文(九州大学 大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯内疾患制御学研究分野)
  • 飯田 三雄(九州大学 大学院医学研究院病態機能内科学分野)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究院眼科学分野)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
  • 岩本 幸英(九州大学 大学院医学研究院整形外科学分野)
  • 内 博史(九州大学病院 油症ダイオキシン研究診療センター)
  • 越智 博文(九州大学 大学院医学研究院神経内科学分野)
  • 岸 玲子(北海道大学 大学院医学研究科公衆衛生学分野)
  • 隈上 武志(長崎大学医学部歯学部附属病院 眼科)
  • 古賀 信幸(中村学園大学 栄養科学部)
  • 佐藤 伸一(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野)
  • 重藤 寛史(九州大学 大学院医学研究院神経内科学分野)
  • 月森 清巳(九州大学 大学院医学研究院生殖病態生理学分野)
  • 辻 博(北九州津屋崎病院 内科)
  • 徳永 章二(九州大学病院 医療情報部)
  • 中西 洋一(九州大学 大学院医学研究院呼吸器内科学分野)
  • 中山 樹一郎(福岡大学 医学部皮膚科)
  • 長山 淳哉(九州大学 大学院医学研究院保健学部門)
  • 増崎 英明(長崎大学 医学部産科婦人科学)
  • 松本 主之(九州大学 大学院医学研究院病態機能内科学)
  • 宮田 秀明(摂南大学 薬学部)
  • 山田 英之(九州大学 大学院薬学研究院分子衛生薬学専攻分野)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 吉村 俊朗(長崎大学 医歯薬学総合研究科保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PCBやPCDF等のダイオキシン類が曝露後長期間経過した場合に生体に与える影響について明らかになっていない。油症患者の症状と原因物質の濃度の推移を解析する必要がある。また有効な薬剤がない現在、臨床応用可能な薬剤の臨床試験が望まれている。
研究方法
油症検診を継続し、患者の症状、生体内のPCBやダイオキシン類濃度、各検査結果を把握し解析する。全国班診定委員会を開催し、未認定者を総合的に評価し診定を行う。油症相談員制度を継続し患者の健康実態調査を行う。PCBやダイオキシン類が生体に及ぼす影響を明確にし、油症原因物質の体外への排泄を促進する方法を開発するために、基礎的研究を行う。本研究を通じて得られた知識で、情報公開可能なものについては極力公表する。

結果と考察
油症特有の症状は今なお残存しており、加齢による影響も伴っていた。血液ダイオキシン類濃度骨粗鬆症に関連した愁訴との間に正の相関が見られたため、骨密度測定など整形外科検診を開始した。2005年度、漢方薬の麦門冬湯により呼吸器症状が改善する可能性が示唆された。2007年度に、ダイオキシン類の対外排泄を促進するためにコレスチラミドの臨床試験を開始した。油症患者の主要死因別の死亡リスクを全国平均と比較したところ、男性の全がんおよび肺がんのリスクが有意に高かった。油症発生後の10年間は発生の10年前に比べ、人工中絶、自然流産、早産・死産、自然流産・死産の割合が上昇していた。初経年齢は、子宮内曝露群は8-14歳時曝露群と比して早かった。基礎的研究では、ヒト培養表皮細胞にダイオキシン類のベンゾピレンが作用すると、aryl hydrocarbon recepotor(AhR)を介して炎症性サイトカイン・ケモカインであるIL-8の産生が促進した。植物ポリフェノールである resveratrol が、ダイオキシン中毒症状の一部に対し有効でることが明らかになった。
結論
2006年度に14名、2007年度に7名、2008年度に14名を新たに油症患者と認定できた。PCB, PCDFは複数の検査項目や検診所見と強い相関を示している。本研究を通してPCB/ダイオキシン類の生体に及ぼす影響は明らかになりつつある。ダイオキシン排泄に関する治療法について、更なる検討を加え、臨床試験を継続して、治療法を確立し、患者の健康増進に務める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200837012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
油症患者の血中ダイオキシン類濃度の微量定量を行い、検診結果との相関を統計学的に解析することによって、ダイオキシン類による慢性的な(40年に及ぶ)人体影響の中に、皮膚症状、高血糖、高コレステロール血症、男性における肝癌・肺癌の増加が認められることを明らかにした。また、カネミ油暴露後10年間は、死産・早産・流産が増加していること、一部の患者には重症の骨粗鬆症が発生していることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
油症による全身倦怠感、呼吸器症状、神経症状、皮膚症状を軽減する目的で、漢方薬(補中益気湯、麦門冬湯、牛車腎気丸、荊芥蓮翹湯)による臨床試験を行い、麦門冬湯が油症の呼吸器症状(咳・痰)を他の漢方薬に比較して有意に改善することを明らかにした。血中ダイオキシン類濃度を低下させることを目的として、現在コレスチミドによる臨床試験を行っている途中である。検診に骨密度測定を導入し血中ダイオキシン類濃度との関連を解析中である。
ガイドライン等の開発
血中ダイオキシン類(血中2,3,4,7,8-pentachrolodibenzofuran (PeCDF)濃度)を追加して改訂した診断基準によって、平成18-20 年度に新たに35人が油症認定を受けた。
その他行政的観点からの成果
大量のダイオキシン類を摂食した認定者のフォローは、ダイオキシン類の長期的な人体影響を明らかにする上で、極めて重要な課題である。平成20年度に行われた厚生労働省による油症認定者実態調査の解析の進展を待って、血中ダイオキシン類濃度とどのような臨床症状が相関する可能性があるのかをさらに検討していきたい。麦門冬湯の臨床効果を証明し得たことは臨床的に有用であったと評価している。また油症ニュース2-6号を発刊し、認定者への情報提供を行った。
その他のインパクト
2007年国際カンファランス開催(於)台湾中原大学。国際会議「Dioxin2007」で油症と台湾油症に関する合同ワークショップ開催(於)日本。2008年「第3回Yusho-Yucheng国際会議」開催(於)台湾大学。2007,2008年東京および五島で油症に関する患者主催のパネルディスカッションに参加。油症の検診と治療の手引き、著書、油症ニュースなど油症に関する情報をホームページで公開している。http://www.kyudai-derm.org/part/yusho/index.html

発表件数

原著論文(和文)
17件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
油症に関する情報ホームページ http://www.kyudai-derm.org/part/yusho/index.html

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Todaka T, Hirakawa H, Hori T, et al.
Concentrations of polychlorinated dibenzo-p-dioxins, polychlorinated dibenzofurans, and non-ortho and mono-ortho polychlorinated biphenyls in blood of Yusho patients.
Chemosphere , 66 , 1983-1989  (2007)
原著論文2
Imamura T, Matsumoto S, Kanagawa Y, et al.
A technique for identifying three diagnostic findings using association analysis.
Med Biol Eng Comput , 45 , 51-59  (2007)
原著論文3
Imamura T, Kanagawa Y, Matsumoto S, et al.
Relationship between clinical features and blood levels of pentachlorodibenzofuran in patients with Yusho.
Environ Toxicol , 22 , 124-131  (2007)
原著論文4
Todaka T, Hirakawa H, Kajiwara J, et al.
Concentrations of polychlorinated dibenzo-p-dioxins, polychlorinated dibenzofurans, and dioxin-like polychlorinated biphenyls in blood collected from 195 pregnant women in Sapporo City, Japan.
Chemosphere , 69 , 1228-1237  (2007)
原著論文5
Tsukimori K, Tokunaga S, Shibata S, et al.
Long-term effects of polychlorinated biphenyls and dioxins on pregnancy outcomes in women affected by the Yusho incident.
Environ Health Perspect , 116 , 626-630  (2008)
原著論文6
Todaka T, Hirakawa H, Kajiwara J, et al.
Concentrations of polychlorinated dibenzo-p-dioxins, polychlorinated dibenzofurans, and dioxin-like polychlorinated biphenyls in blood and breast milk collected from 60 mothers in Sapporo City, Japan.
Chemosphere , 72 , 1152-1158  (2008)
原著論文7
Todaka T, Hori T, Hirakawa H, et al.
Congener-specific analysis of non-dioxin-like polychlorinated biphenyls in blood collected from 127 elderly residents in Nakagawa Town, Fukuoka Prefecture, Japan.
Chemosphere , 73 , 865-872  (2008)
原著論文8
Todaka T, Hori T, Hirakawa H, et al.
Congener-specific analysis of non-dioxin-like polychlorinated biphenyls in blood collected from 195 pregnant women in Sapporo City, Japan.
Chemosphere , 73 , 923-931  (2008)
原著論文9
Kanagawa Y, Matsumoto S, Koike S, et al.
Association of clinical findings in Yusho patients with serum concentrations of polychlorinated biphenyls, polychlorinated quarterphenyls and 2,3,4,7,8-pentachlorodibenzofuran more than 30 years after the poisoning event.
Environ Health , 7 , 47-55  (2008)
原著論文10
Onozuka D, Yoshimura T, Kaneko S, et al.
Mortality After Exposure to Polychlorinated Biphenyls and Polychlorinated Dibenzofurans: A 40-Year Follow-up Study of Yusho Patients.
Am J Epidemiol , 169 , 86-95  (2009)
原著論文11
Todaka T, Hori T, Hirakawa H, et al.
Concentrations of polychlorinated biphenyls in blood of Yusho patients over 35 years after the incident.
Chemosphere , 74 , 902-909  (2009)
原著論文12
Shimizu K, Ogawa F, Thiele JJ, et al
Lipid peroxidation is enhanced in Yusho victims 35 years after accidental poisoning with polychlorinated biphenyls in Nagasaki, Japan.
J Appl Toxicol , 27 (2) , 195-197  (2007)
原著論文13
Shimizu K, Ogawa F, Thiele JJ, et al
Increased levels of urinary nitrite and nitrotyrosine in Yusho victims 40 years after accidental poisoning with polychlorinated biphenyls in Nagasaki, Japan.
J Appl Toxicol , 28 (8) , 1040-1044  (2008)
原著論文14
Nagayama J, Todaka T, Hirakawa H et al.
Evaluation on toxic contribution of PCDDs, PCDFs and dioxin-like PCBs determined in the preserved umbilical cords of Yusho patients.
Organohalogen Compounds , 70 , 410-413  (2008)
原著論文15
Tomoaki Imamura, Yoshiyuki Kanagawa, Shinya Matsumoto et al.
Epidemiological aspects of Yusho ; Clinical features and blood levels of pentachlorodibenzofuran in Yusho patients.
Organohalogen Compounds , 69 , 87-90  (2008)
原著論文16
Tomoaki Imamura , Shinya Matsumoto , Yoshiyuki Kanagawa et al.
Cutaneous symptoms such as acneform eruption and pigmentation are closely associated with blood levels of 2,3,4,7,8-penta-chlorodibenzofurans in Yusho patients, using data mining analysis.
BMC Research Notes[Internet]. 2009 Feb 25 , 2 (27)  (2009)
原著論文17
C. Ohta, K. Haraguchi, Y. Kato, et al.
In vitro metabolism of 2,2’,3, 4,4’,5’,6-heptachlorobiphenyl (CB183) with liver microsomes from rats, hamsters and guinea pigs.
Organohalogen Compounds , 68 , 1733-1736  (2006)
原著論文18
C. Ohta, K. Haraguchi, Y. Kato, et al.
The distribution of metabolites of 2,2',3,4,4',5',6- heptachlorobiphenyl (CB183) in rats and guinea pigs.
Organohalogen Compounds , 69 , 1761-1764  (2007)
原著論文19
N. Koga, C. Ohta, K. Haraguchi, et al.
The formation of a catechol metabolite of 2,2',4,5,5'-pentachlorobiphenyl (CB101) by liver microsomes from rats, hamsters, guinea pigs and humans.
Organohalogen Compounds , 69 , 1757-1760  (2007)
原著論文20
Y. Kato, S. Ikushiro, R. Takiguchi, et al.
A novel mechanism for polychlorinated biphenyls-induced decrease in serum thyroxine level in rats.
Drug Metab. Dispos , 35 (10) , 1949-1955  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-