食品における微生物迅速検査法の開発及びその精度評価システムに関する研究

文献情報

文献番号
200837011A
報告書区分
総括
研究課題名
食品における微生物迅速検査法の開発及びその精度評価システムに関する研究
課題番号
H18-食品・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 俊司(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅尾 努(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部)
  • 木村 凡(東京海洋大学 食品微生物学)
  • 宮本 敬久(九州大学 大学院農学研究院)
  • 五十君 靜信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 松岡 英明(東京農工大学 大学院工学教育部)
  • 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 荒川 英二(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 勢戸 祥介(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
  • 仲真 晶子(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品製造現場における安全性確保は、衛生管理が適切に行われているかを評価することが必要であり、そのために食品や作業工程における汚染指標細菌や食中毒菌(あるいは毒素)の検出が重要な課題となっている。通常、製造工程で生産される食品は、当然ながら汚染度は低く、このため検査に適した方法は高感度、迅速であることが必要であり、さらに日常的に検査が行われるため、使用される方法においては専門知識を必要とせず、また一定の安定した結果が得られる簡便な検査法が要求される。本研究ではこのような日常的な衛生管理の中で食の安全性を確保するために必要な迅速・簡便検査法のあるべき要件と検査対象となる領域を調べ、現在使用されている迅速検査法を検討することに加えて、培養法に基づく標準法を尺度とする検査精度の評価システムの構築を目指すことを目的とした。
研究方法
一般細菌および汚染指標細菌の迅速法の評価、簡易迅速検査法に適した遺伝学的、免疫学的検査法の検討と開発、感染型食中毒菌の迅速検査法の評価、非培養法による迅速法の検討、培養・非培養法ハイブリッドによる迅速法の開発、ノロウイルスの迅速検査法の検討と評価の各研究課題に分けて行った。
結果と考察
市販されている簡易迅速検査法の有用性を従来法と比較し実用的な条件で検討を加えた。迅速検査を行う必要性の高い腸炎ビブリオはリアルタイムPCR法による検出と生菌・死菌をEthidium Monoazide処理により選別する方法を検討した。毒素型食中毒菌では最乳児ボツリヌス症由来菌の特性を調べ、わが国で分離される特徴のある株の検出方法を確立した。食品検体からの菌およびウイルスの濃縮、回収法を多面的に調べ、さら回収菌の自動解析方法についても検討を加えた。とくに、培養が困難なノロウイルスについては種々の添加・回収実験から検出方法の阻害要因および検出感度について重要な知見を提示した。
結論
迅速法の使用頻度が高い一般生菌数や汚染指標細菌に関する検査法について国内外の情報を収集解析し、現在わが国においてこれらの菌を対象とした告知法・通知法が、欧米で使用されているFDA/BAM法やISO法とは異なり、検査法の国際的調和の視点から好ましくない状況にあることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200837011B
報告書区分
総合
研究課題名
食品における微生物迅速検査法の開発及びその精度評価システムに関する研究
課題番号
H18-食品・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 俊司(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅尾 努(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部)
  • 木村 凡(東京海洋大学 食品微生物学)
  • 宮本 敬久(九州大学 大学院農学研究院)
  • 五十君 静信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 松岡 英明(東京農工大学 大学院工学教育部)
  • 甲斐 明美(東京都健康安全センター 微生物部)
  • 荒川 英二(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 勢戸 祥介(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
  • 吉田 靖子(東京都健康安全センター 微生物部)
  • 仲真 晶子(東京都健康安全センター 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の細菌学的規格基準は、告示法等による培養法が用いられている。現状、食品現場のリスクマネージメントとして求められていることは、簡便、迅速、高感度な検査方法である。食品からの微生物検査法のダブルスタンダード化を避け、いかにして簡易・迅速法を使えるようにするかの解答を出し、その精度評価システムを構築し、それに基づいて評価した簡便・迅速法の提案するために、以下の研究課題について検討した。
研究方法
1.一般細菌および汚染指標細菌の迅速法の評価2.簡易迅速検査法に適した遺伝学的3.免疫学的検査法の検討と開発4.感染型食中毒菌の迅速検査法の評価5.非培養法による迅速法の検討6.培養・非培養法ハイブリッドによる迅速法の開発7.ノロウイルスの迅速検査法の検討と評価
結果と考察
食品細菌規格基準およびその試験法(成分規格)を整理した。簡易迅速試験法として開発された自動菌数測定装置の有用性を評価した。従来法との同等性評価試験に必要なより自然汚染に近い指標菌汚染食品の作製法を考案した。現存の精度評価指針は迅速性に主眼を置いた方法の評価には過度に厳密となる部分も存在するため、この点を改良した精度評価指針案を考案した。
腸管出血性大腸菌O157には毒素産生性との一致率の高いベロ毒素遺伝子1型,2型およびO157血清型決定因子遺伝子のマルチプレックスPCR法、リステリア菌には擬陽性の少ない新規PCR検出法を開発した。ブドウ球菌エンテロトキシンH検出ELISAを開発し、食中毒由来ブドウ球菌の約60%にH型毒素産生菌が含まれていること見出した。B型ボツリヌス毒素の新しい変異型毒素を検出するELISA法を開発した。
腸炎ビブリオを迅速に検出するためにPCR法および内部対照を新規に開発した。
食品の前処理法として菌の直接濃縮法として原理的に期待される免疫磁気ビーズおよび陽イオントラップを応用した循環型濃縮システムの有用性を検討したが、添加した菌の回収率は最大で5%であり、緩衝液等のさらなる検討が必要である。
密度勾配遠心法と濾過法を組み合わせた生菌分離法を開発し、本装置と蛍光顕微規則法などの非培養法を組み合わせることにより、菌数測定の自動化が可能となった。
ノロウイルスの食品からの濃縮法として遠心式限外濾過法が簡便迅速で有用であり、食品からのノロウイルス検出率を向上させる方法として、細菌の生物活性を利用した方法を考案した。
結論
培養法を基準とした標準法の整備が遅れているため、標準法を尺度とした迅速検査法の精度評価に達していない研究課題もあるが、所期の目的を達成できた課題もある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200837011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
食品加工現場では簡便かつ迅速な微生物検査法の導入が求められている。今回検討を行った簡便迅速で特異性の高い検査法の開発とその精度評価に関する成果は、簡便迅速微生物検査法開発の一助になると考える。培養法を基本とした標準検査法が整備された後、再度迅速検査法の精度評価およびそのシステム造りが必要と思われる。
臨床的観点からの成果
特になし。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
N. Iritani, H Ogura, Y Seto, et al
Humoral immune responses against Norovirus infection of children.
Journal of Medical Virology , 79 , 1187-1193  (2007)
原著論文2
Iritani N, Vennema H, Seto Y, et al
Genetic analysis of the capsid gene of genotype GII.2 noroviruses.
Journal of virology , 82 (15) , 7336-7345  (2008)
原著論文3
Iritani N, Kaida A, Seto Y, et al
Epidemic of genotype GII.2 Norovirus during spring 2004 in Osakacity, Japan
Journal Clinical Microbiology , 46 , 2406-2409  (2008)
原著論文4
K Seto, M Taguchi, S Kozaki, et al
Biochemical and molecular characterization of minor serogroup of Shiga toxin-producing Escherichia coli isolated from humans in Osaka prefecture
Journal of Veterinary Medical Sciences , 69 (12) , 1215-1222  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-