医療安全に寄与する患者参加の推進に資する研究

文献情報

文献番号
202122013A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に寄与する患者参加の推進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20IA1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
永井 庸次(公益社団法人全日本病院協会)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
  • 藤田 茂(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
  • 西澤 寛俊(公益社団法人全日本病院協会)
  • 飯田 修平(公益社団法人全日本病院協会)
  • 小谷野 圭子(公益財団法人東京都医療保健協会 練馬総合病院 質保証室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療安全において、「患者参加」の概念(定義)を議論・確認せず、夫々、種々の概念(定義)で疑問を持つことなく、頻用している。本研究は、医療安全における「患者参加」の概念(定義)整理を行うとともに、国内外の医療安全の向上を意図した患者参加活動の実態を把握し、「患者参加」を効果的に推進する方法を明らかにすることを目的とする。令和2年度調査より明らかになった患者相談の現状と課題を整理した上で、令和3年度は、医療従事者および外来・入院患者を対象にしたアンケート調査を行い、「患者参加」の概念(定義)とその活動の実態を明らかにするほか、全国のセンターを対象にしたアンケート調査を行い、センターにおける患者相談および病院との連携の現状と課題、患者相談を医療安全の向上に活かす方法等を明らかにすることを目的とした。また、患者団体を対象にしたインタビュー調査およびアンケート調査を行い、患者団体による「患者参加」の概念(定義)とその活動の実態を明らかにするほか、文献調査等より医療安全の向上に寄与する「患者参加」の方法をそのエビデンスと共に明らかにすることを目的とした。
研究方法
本年度における調査研究は、以下の小研究から構成される。
(1)全国のセンターを対象にしたアンケート調査
センターの担当者を対象にしたアンケート調査により、センターにおける患者相談の現状と課題、病院または病院の患者相談窓口との連携の実態、患者相談を医療安全の向上に活かす方法等を明らかにする。
(2)医療従事者および入院患者を対象にしたアンケート調査
令和2年度の患者窓口へのインタビュー調査等で協力を得られるとの回答を得た病院の医療従事者および入院患者を対象にしたアンケート調査により患者参加の実態を明らかにする。
(3)患者団体を対象にしたアンケート調査およびインタビュー調査
患者団体を対象にしたアンケート調査、インタビュー調査により、組織構成、会員への情報提供、医療安全上の注意喚起など活動内容について明らかにする。
(4)文献調査
医療安全における患者参加の概念、役割についての概念整理を行うとともに、患者参加の方法、成功事例について、医中誌Web、PubMed等の文献データベースを用いた文献調査や国内外の専門団体への調査等を行う。特に、医療における患者参加として先進的な取り組みの一つとして、診療ガイドライン作成における患者参加がある。医療安全における患者参加の推進に資する参考情報を得るために、NICEの担当者に対するヒアリングと文献調査にもとづき、NICEの診療ガイドライン作成過程への患者参加の取り組みを紹介する。
結果と考察
医療安全支援センターを対象にしたアンケート調査については、有効回答率は、58.2%(231/397)を得た。医療安全支援センターの医療に関わる苦情・相談の受付体制、取り組み、医療機関等との連携状況について確認することができた。
医療従事者および入院患者を対象にしたアンケート調査については、5病院(練馬総合病院、ひたちなか総合病院、済衆館病院、栗橋病院、白岡中央総合病院)の、医療従事者500人、入院患者500人を対象として実施、有効回答率は医療従事者向けが93.4%(467/500)、入院患者向けが60.6%(303/500)であった。病院における医療従事者と入院患者の患者参加に対する認識の違い等が明らかになった。
患者団体を対象にしたインタビュー調査およびアンケート調査については、事前に5団体(一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン、公益社団法人日本リウマチ友の会、一般社団法人全国腎臓病協議会、認定NPO法人難病こども支援全国ネットワーク、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML)に対してアンケート調査を実施した上で、インタビュー調査を行った。主な団体の「患者参加」の概念(定義)および関連する取り組み状況と医療安全支援センター等との連携状況、課題や展望が明らかになった。
文献調査等について、英国のNational Institute for Health and Care Excellence(NICE)やGuidelines International Network(GIN)における診療ガイドライン作成時の患者参加の取り組みについて資料の提供を受け、内容をまとめた。
結論
病院の患者相談窓口の体制や医療安全活動と、病院の患者参加推進活動、および病院、患者団体、センターの連携の実態等が明らかになった。本研究で得られた情報、資料は我が国における患者参加の現状、海外の取り組みを知るための基礎資料となると考える。今後、患者参加の定義の統一や患者参加の普及啓発・推進活動の在り方について検討するためには、さらなる調査研究が必要である。

公開日・更新日

公開日
2025-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202122013B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全に寄与する患者参加の推進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20IA1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
永井 庸次(公益社団法人全日本病院協会)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
  • 藤田 茂(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
  • 西澤 寛俊(公益社団法人全日本病院協会)
  • 飯田 修平(公益社団法人全日本病院協会)
  • 小谷野 圭子(公益財団法人東京都医療保健協会 練馬総合病院 質保証室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療安全において、「患者参加」の概念(定義)を議論・確認せず、夫々、種々の概念(定義)で疑問を持つことなく、頻用している。第3回閣僚級世界患者安全サミットでは、医療安全管理への患者及び患者家族の参加の推進が必要であるとされた。本研究は、医療安全における患者参加の概念整理を行うとともに、国内外の医療安全の向上を意図した患者参加活動の実態を把握し、患者参加を効果的に推進する方法を明らかにすることを目的とした
研究方法
病院の患者相談窓口の担当者および医療安全支援センター(以下、センター)の担当者に対する半構造化インタビュー調査と全国のセンターを対象としたアンケート調査、全国の病院を対象にしたアンケート調査、5病院の医療従事者・入院患者を対象としたアンケート調査および患者参加の概念整理、取り組み実態に関する専門家への聞き取り調査・文献調査を行った
結果と考察
患者相談窓口とセンターの担当者を対象にしたインタビュー調査として、10病院の患者相談窓口の担当者、および7都道府県と市の医療安全支援センター(以下、センター)の担当者を対象にしたインタビュー調査により、患者相談および患者相談窓口とセンターとの連携の現状と課題を整理、アンケート調査票の作成資料とした
全国のセンターを対象にしたアンケート調査を実施し、センターにおける患者相談の現状と課題、病院または病院の患者相談窓口との連携の実態、患者相談を医療安全の向上に活かす方法等を明らかにした
全国の病院を対象にしたアンケート調査として、全国の病院から病床規模で層化抽出した約3,000病院を対象にしたアンケート調査により、全国の病院における患者参加の取り組みの実態と、患者相談を医療安全の向上に活かす方法を明らかにした。調査項目は、院内における医療安全管理体制・活動のほか、患者参加の取り組み、医療対話推進者の配置・活動状況、患者相談窓口における患者相談の現状と課題、センターとの連携の実態等とした。各項目と患者参加の取り組みとの関係を解析し、患者参加推進に寄与する因子を特定し、院内体制、活動状況については、過去に研究代表者らが実施した調査結果と比較検討が可能なように、調査項目の整合を図った
令和2年度の調査において協力を得られるとの回答を得た病院の医療従事者および入院患者を対象にしたアンケート調査を実施した。医療従事者約500人、患者約500人(100人×5病院)を対象とし、患者参加の実態、認識を明らかにした。具体的には、病院職員の手洗い、氏名の確認、服薬方法についての説明など、WHOなどの関連機関が医療安全を促進するために重要な事項であると指摘している事項を参考に、医療従事者が具体的に指示・説明をしているか否か、患者がそれらを受けた経験、両者の認識の差異、患者が病院の提供する医療内容に医療安全上疑問を感じた経験、それに対する対応(職員への指摘、職員の対応)を、日本医療機能評価機構がベンチマーク事業で行っている患者満足度調査項目とともに明らかにした
患者団体を対象にしたアンケート調査、およびインタビュー調査として、5つの患者団体を対象にしたインタビュー調査により、組織構成、会員への情報提供、医療安全上の注意喚起など活動内容について明らかにした。インタビュー実施に際して、患者団体による患者参加の取り組みの概要を理解するため事前アンケート調査を実施した。アンケート調査とインタビュー調査の調査結果を基に、患者団体による患者参加の実態を明らかになった。
文献調査及び国内外の専門家へのインタビュー調査として、医療安全における患者参加の概念、役割についての概念整理を行うとともに、患者参加の方法、成功事例について、医中誌Web、PubMed等の文献データベースを用いた文献調査と、ISQua等、国内外の関連学会への参加およびそれらで特定された専門家に対するインタビュー調査を行った。特に令和2年度は米国におけるPatient Advocacy Groupの活動状況の文献調査、令和3年度は英国NHSによる診療ガイドライン作成を想定した患者代表の教育プログラムに焦点を当てて調査を行った
結論
病院の患者相談窓口の体制や活動と、病院の患者参加推進活動、および、病院とセンターの連携の実態等を明らかにした。今後は、得られた情報をさらに解析し、患者参加の定義や患者参加推進活動の要素等について明らかにする必要がある。また、NICEの診療ガイドライン作成における患者参加の取り組みに関する検討から、患者参加を効果的に実施するためには、情報提供、トレーニングを含めた参加のための準備が重要となることが明らかになった。医療安全における患者参加についても、それを効果的なものとするためには、患者に求める役割の整理とともに、環境整備、情報提供、トレーニング等が必要であることが示唆された

公開日・更新日

公開日
2025-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202122013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病院の患者相談窓口の体制や活動と、患者参加推進活動、病院とセンターの連携の実態等を明らかにした。病院では、患者参加の定義は明確でなく、その意味を認識している担当者が少なかった。センターは、相談者が要望する場合には、病院に対し相談内容を情報提供していることが明らかにされた。全国の病院を対象にしたアンケート調査では約7割に医療対話推進者養成研修を受講した職員が在籍していた。約4割はセンターの存在を認知していなかった。今後は、患者参加の定義や患者参加推進活動の要素等について明らかにする必要がある
臨床的観点からの成果
患者参加において医療安全支援センターは大きな役割を担っていると考えられるが現状、センター職員の負担感は強く、相談受付業務が主体であり、情報発信や研修会の開催まで資源が回らないことが伺えた。相談受付業務の効率化やセンター運営の定期的な見直しを行うことで改善につなげていく必要が示唆された。
ガイドライン等の開発
ガイドラインは作成していない。
その他行政的観点からの成果
医療安全支援センターを対象にしたアンケート調査ではセンターの体制、取り組み、現状の課題等が明らかになった。
医療従事者および入院患者を対象にしたアンケート調査では医療安全に寄与する可能性がある患者参加推進活動10項目の中で、医療従事者側の実施の認識と患者側の経験の認識に差異があることが明らかになった。
患者団体を対象にしたインタビュー調査、およびアンケート調査では患者団体が会員に対して患者参加を推進していくためには、前提となる明確な定義付けが必要であることが示唆された。
その他のインパクト
特記なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-22
更新日
2025-06-02

収支報告書

文献番号
202122013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,300,000円
(2)補助金確定額
9,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,601,246円
人件費・謝金 5,406,700円
旅費 249,920円
その他 1,043,247円
間接経費 0円
合計 9,301,113円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-12-01
更新日
-