既存添加物の慢性毒性及び発がん性に関する研究

文献情報

文献番号
200837007A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の慢性毒性及び発がん性に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 渋谷 淳(東京農工大学大学院 共生科学技術研究院動物生命科学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物の安全性確認のため、オゾケライトの慢性毒性・発がん性併合試験を実施し、アカネ色素成分の発がん性とin vivo突然変異誘発性について追究した。
研究方法
食品添加物の試験法ガイドラインに準拠して、オゾケライトを雌雄F344ラットに、1年間慢性毒性試験では0(対照群)、0.05、0.1及び0.2%濃度で,2年間発がん性試験では0(対照群)、0.1及び0.2%濃度で混餌投与した。また、アカネ色素成分の発がん性を肝臓、腎臓及び大腸を主たる標的とする中期多臓器発がんモデルで検討し、in vivo突然変異誘発性をgpt deltaラットを用いて検索した。
結果と考察
オゾケライトの慢性毒性試験では、血清生化学的検査より全投与群で肝障害が示唆され、組織学的に肺、肝臓、脾臓、リンパ節等における肉芽腫形成を確認した。発がん性試験では、2年間の投与を予定通りに終了し、病理組織学的に検索中である。アカネ色素成分のラット中期多臓器発がん性試験の結果、ルシジン配糖体の代謝物ルビアディンがアカネ色素の腎発がん性に大きく関与し、肝臓及び大腸に対しても発がん標的性を有する可能性が示された。また、他の色素成分アリザリンにも腎発がん標的性がある可能性が示された。一方、in vivo突然変異誘発性に関して、gpt遺伝子突然変異頻度はアカネ色素、ルシジン配糖体及びルビアディン投与群で有意に上昇したが、アリザリン群では影響がなかった。AT:TAトランスバージョン変異頻度の上昇がアカネ色素、ルシジン配糖体及びルビアディン投与群で共通して認められ、特にルビアディン投与群では顕著に上昇した。
結論
オゾケライトの長期投与の影響を検討した結果、諸臓器に比較的低用量から肉芽腫形成を示すことが明らかとなった。今後判明する発がん性の成績と併せて、安全性評価に供される予定である。また,中期多臓器発がんモデルで検討した結果、代謝物ルビアディンにアカネ色素と同様な腎臓及び肝臓に対する発がん標的性のあることが示された。さらに、in vivo試験において、ルビアディン等によるDNAの直接的傷害性が示された。これらの成績は、アカネ色素と同様の発がん性アントラキノン成分を含む食品や食品添加物の安全性評価に活用されるべきである。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200837007B
報告書区分
総合
研究課題名
既存添加物の慢性毒性及び発がん性に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 渋谷 淳(東京農工大学大学院 共生科学技術院動物生命科学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物の安全性確認のため、オゾケライトの慢性毒性・発がん性併合試験を実施し、アカネ色素成分の発がん性とin vivo突然変異誘発性について追究した。
研究方法
食品添加物の試験法ガイドラインに準拠して、オゾケライトを雌雄F344ラットに1年間慢性毒性試験では0.05、0.1及び0.2%濃度で,2年間発がん性試験では0.1及び0.2%濃度で混餌投与した。また、アカネ色素成分の発がん性について、前がん病変を指標とする26週間までの短期投与試験と肝臓、腎臓及び大腸を主たる標的とするラット中期多臓器発がんモデルで検討し、in vivo突然変異誘発性をgpt deltaラットを用いて検索した。
結果と考察
オゾケライトの慢性毒性試験において、全投与群で肝障害が示唆され、病理組織学的に肺、肝臓、脾臓、リンパ節等における肉芽腫形成が確認された。発がん性試験は、2年間の投与を予定通りに終了し、腫瘍性病変の発生状況について病理組織学的に検索中である。アカネ色素成分を短期投与した結果、ルシジン配糖体とその代謝物ルビアディンはアカネ色素による腎発がん部位に類似の病変を誘発した。また、中期多臓器発がん性試験の結果、ルビアディンは腎臓のみならず、肝臓、大腸に対しても発がん標的性を有する可能性、ならびに他の色素成分アリザリンにも腎発がん性のある可能性が示された。一方、in vivo突然変異誘発性に関して、アリザリン投与群で腎DNA中8-OHdG量が顕著に上昇したが、gpt遺伝子突然変異頻度はアカネ色素、ルシジン配糖体及びルビアディン投与群で有意に上昇し、特徴的な変異ペクトラムを共有していた。
結論
オゾケライトの長期投与の影響を検討した結果、比較的低用量から諸臓器に肉芽腫形成を示すことが明らかとなった。今後明らかにされる発がん性の有無と併せて、オゾケライトの安全性評価に供される予定である。また、アカネ色素成分を短期投与試験及び中期多臓器発がんモデルで検討した結果、ルビアディンはアカネ色素と同様に、腎臓及び肝臓に対する発がん標的性を有すること、アリザリンも腎発がん標的性を有する可能性が示された。in vivo試験において、ルビアディンのDNA直接傷害性ならびにアリザリンの酸化的DNA傷害性が示された。これらの成績は、アカネ色素と同様の発がん性アントラキノン成分を含む食品や食品添加物の安全性評価に役立つはずである。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200837007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
オゾケライトのラットへの長期投与により、比較的低用量から諸臓器に肉芽腫が形成されることが判明した。今後究明される発がん性の有無と併せて、オゾケライトの安全性評価に供される予定である。一方、アカネ色素成分を中期多臓器発がんモデル等で検討した結果、ルビアディンはアカネ色素と同様に腎臓及び肝臓に対する発がん標的性を示すこと及びアリザリンにも腎発がん標的性のある可能性が示された。また、in vivo試験において、ルビアディンによる直接的DNA傷害性ならびにアリザリンの酸化的DNA傷害性が示された。
臨床的観点からの成果
本研究は、既存添加物の慢性毒性及び発がん性に関する研究を主たる目的としており、臨床的観点からの直接的な成果はないが、他の環境化学物質(特に医薬品)と食品添加物との相互作用による複合的な健康影響に関する重要な科学的知見として、リスクアセスメントの分野で今後活用されうる成果である。また、肉芽腫を含む慢性炎症と発がんとの関係を究明する上で、参考となる重要な実験データを提供する。
ガイドライン等の開発
直ちにガイドライン等の開発に結びつくことはないが、将来的には、構造活性相関による毒性予測に寄与できる可能性が高い。究明されたアカネ色素成分の発がん機序は、通常多種類の成分からなる天然添加物のリスクアセスメントのガイドライン化に役立つはずである。また、ラットへの長期投与による肉芽腫の発現に関しては、トキシコキネティクス及びトキシコダイナミクスの動物種差を検討する必要があり、その結果はリスクアセスメントに反映できる。
その他行政的観点からの成果
オゾケライトの慢性毒性・発がん性併合試験は、既存添加物の見直し作業の過程で、90日間反復投与毒性試験の結果に基づいて、厚生労働省食品添加物安全性評価検討会において実施が指示されたものであり、今回の結果は検討会で審議され、食品安全委員会で最終評価されることになる。アカネ色素は既存添加物名簿から既に消除されているが、発がんに寄与する色素成分がノニジュースなどの健康食品に含有されていることが知られており、早急な調査が望まれる。
その他のインパクト
健康食品として販売されているノニジュースの幾つかには、アカネ色素による発がん性成分の一つであるルビアディンが含まれており、むしろそれを有効成分として唄っている商品もある。健康食品は摂取量の個人差が大きく、特に好んで飲む場合には、食品添加物とは比べものにならないほど大量に摂取する可能性がある。このように、本研究の成績は発がん性アントラキノン成分を含む食品や食品添加物の安全性評価に役立つはずである。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
50件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
90件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Inoue, K., Yoshida, M., Nishikawa, A. et al.
Possible contribution of rubiadin, a metabolite of madder color, to renal carcinogenesis in rats
Food Chem. Toxicol. , 47 , 752-759  (2009)
原著論文2
Imai, T., Takami, S., Nishikawa, A. et al.
Modifying effects of prepubertal exposure to potassium perchlorate and tetrabromobisphenol A on susceptibility to N-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamine- and 7,12-dimethylbenz(a)anthracene-induced carcinogenesis in rats
Toxicol. Lett. , 185 , 160-167  (2009)
原著論文3
Umemura, T., Tasaki, M., Nishikawa, A. et al.
Possible participation of oxidative stress in causation of cell proliferation and in vivo mutagenicity in kidneys of gpt delta rats treated with potassium bromate
Toxicology , 257 , 46-52  (2009)
原著論文4
Takahashi, M., Inoue, K., Nishikawa, A. et al.
Lack of chronic toxicity or carcinogenicity of dietary N-acetylglucosamine in F344 rats
Food Chem. Toxicol. , 47 , 462-471  (2009)
原著論文5
Inoue, K., Yoshida, M., Nishikawa, A. et al.
Induction of kidney and liver cancers by the natural food additive madder color in a two-year rat carcinogenicity study
Food Chem. Toxicol. , 47 , 184-191  (2009)
原著論文6
Inoue, K., Shibutani, M., Nishikawa, A. et al.
One-year chronic toxicity of madder color in F344 rats--induction of preneoplastic/neoplastic lesions in the kidney and liver
Food Chem. Toxicol. , 46 , 3303-3310  (2008)
原著論文7
Umemura, T., Maeda, M., Nishikawa, A. et al.
Lack of promotion activity of diacylglycerol oil on 4-nitroquinoline 1-oxide induced carcinogenesis in the oral cavity of SD rats
Food Chem. Toxicol. , 46 , 3206-3212  (2008)
原著論文8
Takahashi, M., Shibutani, M., Nishikawa, A. et al.
Cellular distributions of molecules with altered expression specific to the tumor promotion process from the early stage in a rat two-stage hepatocarcinogenesis model
Carcinogenesis , 29 , 2218-2226  (2008)
原著論文9
Inoue, T., Umemura, T., Nishikawa, A. et al.
Safety assessment of dietary administered paprika color in combined chronic toxicity and carcinogenicity studies using F344 rats
Food Chem. Toxicol. , 46 , 2689-2693  (2008)
原著論文10
Kuroiwa, Y., Yamada, M., Nishikawa, A. et al.
Combined ascorbic acid and sodium nitrite treatment induces oxidative DNA damage-associated mutagenicity in vitro, but lacks initiation activity in rat forestomach epithelium
Toxicol. Sci. , 104 , 274-282  (2008)
原著論文11
Kanki, K., Umemura, T., Nishikawa, A. et al.
A possible role of nrf2 in prevention of renal oxidative damage by ferric nitrilotriacetate
Toxicol. Pathol. , 36 , 353-361  (2008)
原著論文12
Cho, Y-M., Imai, T., Nishikawa, A. et al.
A new medium-term rat colorectal bioassay applying neoplastic lesions as end points for detection of carcinogenesis modifiers effects with weak or controversial modifiers
Toxicol. Pathol. , 36 , 459-464  (2008)
原著論文13
Takahashi, M., Shibutani, M., Nishikawa, A. et al.
Pathological assessment of the nervous and male reproductive systems of rat offspring exposed maternally to acrylamide during the gestation and lactation periods
J. Toxicol. Sci. , 33 , 11-24  (2008)
原著論文14
Tasaki, M., Umemura, T., Nishikawa, A. et al.
Safety assessment of ellagic acid, a food additive, in a subchronic toxicity study using F344 rats
Food Chem. Toxicol. , 46 , 1119-1124  (2008)
原著論文15
Inoue, K., Shibutani, M., Nishikawa, A. et al.
A 13-week subchronic toxicity study of madder color in F344 rats
Food Chem. Toxicol. , 46 , 241-252  (2008)
原著論文16
Kuroiwa, Y., Okamura, T., Nishikawa, A. et al.
Enhancement of esophageal carcinogenesis in acid reflux model rats treated with ascorbic acid and sodium nitrite in combination with or without initiation
Cancer Sci. , 99 , 7-13  (2008)
原著論文17
Kuroiwa, Y., Umemura, T., Nishikawa, A. et al.
Lack of in vivo mutagenicity and oxidative DNA damage by flumequine in the livers of gpt delta mice
Arch. Toxicol. , 81 , 63-69  (2007)
原著論文18
Kitamura, Y., Umemura, T., Nishikawa, A. et al.
Increased susceptibility to hepatocarcinogenicity of Nrf2-deficient mice exposed to 2-amino-3-methylimidazo[4,5-f]quinoline
Cancer Sci. , 98 , 19-24  (2007)
原著論文19
Kuroiwa, Y., Ishii, Y., Nishikawa, A. et al.
Combined treatment with green tea catechins and sodium nitrite selectively promotes rat forestomach carcinogenesis after initiation with N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine
Cancer Sci. , 98 , 949-957  (2007)
原著論文20
Umemura, T., Kuroiwa, Y., Nishikawa, A. et al.
Detection of oxidative DNA damage, cell proliferation and in vivo mutagenicity induced by dicyclanil, a non-genotoxic carcinogen, using gpt delta mice
Mutat Res. , 633 , 46-54  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-