新たな歯科医師臨床研修制度における評価方法の構築に向けた基盤研究

文献情報

文献番号
202122011A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな歯科医師臨床研修制度における評価方法の構築に向けた基盤研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20IA1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
田口 則宏(鹿児島大学 学術研究院医歯学域歯学系 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長島 正(大阪大学 歯学部附属歯学教育開発センター)
  • 河野 文昭(徳島大学 医歯薬学研究部)
  • 一戸 達也(東京歯科大学 歯学部)
  • 新田 浩(東京医科歯科大学 歯学部附属病院)
  • 大澤 銀子(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 秋葉 奈美(新潟大学 医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野)
  • 岩下 洋一朗(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,544,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科医師臨床研修制度は、平成18年度の必修化以降、概ね5年毎に見直しが行われているが、歯科医師臨床研修に関する到達目標は研修必修化以降一度も変更されておらず、早急に改訂することが望まれている。平成31年に厚生労働省医道審議会歯科医師部会歯科医師臨床研修部会において、歯科医師臨床研修制度の改正に関するワーキンググループが設置され現状の課題に対する論点が議論され、令和2年1月に新たな到達目標が提言された。一方で、この到達目標を研修歯科医が修得したかどうかを測定する評価方法については、今後検討が必要となっている。そこで本研究では、令和2年度に全国の歯科医師臨床研修プログラムを管理する施設に対して、研修評価方法の実態調査を行い、研修修了判定に資する評価方法、評価基準などについて情報収集を行った。本研究では、令和4年度に予定されている歯科医師臨床研修制度の改正での新たな到達目標に対する具体的な評価内容や評価基準の検討を行い、全国の歯科医師臨床研修施設において活用しうる評価方法を検討する。
研究方法
令和2年度の研究成果をもとに、新たな研修到達目標を評価するための評価の全体像の策定、および各領域の評価方法について検討を開始した。令和2年度に実施した研修評価方法の実態調査、および医師臨床研修における研修評価方法に関する有識者(北海道大学医学教育・国際交流推進センター、高橋誠教授)からのヒヤリング結果をもとに、本研究班において新たな研修到達目標の評価に対応できる全体的な枠組み、およびA領域については評価の視点、観点、評価基準を、B領域については9つの中項目とそれに付随する小項目について評価基準となるルーブリックを、C領域については実際の臨床現場での評価に資する評価の視点、観点について策定を行った。各領域の項目に対する評価基準を策定するうえで、班の構成員のみで決めるのではなく、幅広く意見を求めながら様々な形態を有する全国の研修施設で使用できる評価基準を策定するのが望ましいだろうとの結論に至り、令和3年8月に全国歯科大学・歯学部附属病院における歯科医師臨床研修の実務者を募り、ワークショップ形式でA、B、C各領域ごとの評価項目、評価基準について検討を行うこととした。さらに、このワークショップのプロダクトと、それに基づく班会議での検討の結果をもとに一定の成果を取りまとめ、その成果報告を行うためにオンラインによる全国公開シンポジウムを令和3年12月に開催することとした。さらに、ここで得られた意見を含めて、最終的な本研究班のプロダクトとして「歯科医師臨床研修 評価ガイドライン」を作成することとした。
結果と考察
令和3年8月に開催したワークショップについては、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、対面でのワークショップ開催を断念し、全面オンラインにて実施するよう企画立案を行った。ワークショップでは研究班が策定した研修評価の全体像について提示し、全23名の参加者から意見を求めるとともに、A、B、C各領域の評価における視点・観点や評価基準についてグループ討論と全体発表を通じてプロダクト作成を行い、研修評価の全体像と各領域の評価方法の原案を策定した。また、各領域の評価を行う際に用いる評価票の例示を行うとともに、その評価票の具体的な使用方法、想定される評価のタイミング、評価者、評価の実際(形成的・総括的評価、多面評価など)などについても明確にした。
さらに、令和3年12月に全国公開シンポジウムを開催し202名の参加者があった。シンポジウムでは、本研究班から研修評価について詳細な解説を含め広く情報提供を行うとともに、意見交換の場を設けた。得られた意見からは、本研究班が策定した評価方法に対しては概ね理解が得られたと考えられるが、「具体的な評価の運用方法」に関する質問や意見が寄せられた。
以上の結果をふまえ、シンポジウム後に研修評価方法の最終的な取りまとめを行った。その後、本研究班活動の最終的なプロダクトとして「歯科医師臨床研修 評価ガイドライン」として23ページにわたる冊子を作成し、令和4年3月に研究代表者の所属機関におけるホームページに公開し、令和4年度の研修制度運用開始時の活用に間に合わせるように配慮した。
結論
令和2年度の研究実績に基づき、令和3年度は新たな歯科医師臨床研修制度における到達目標に対応する各領域ごとの評価の手順、評価方法および評価基準について明確にすることができた。

公開日・更新日

公開日
2025-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202122011B
報告書区分
総合
研究課題名
新たな歯科医師臨床研修制度における評価方法の構築に向けた基盤研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20IA1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
田口 則宏(鹿児島大学 学術研究院医歯学域歯学系 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長島 正(大阪大学 歯学部附属歯学教育開発センター)
  • 河野 文昭(徳島大学 医歯薬学研究部)
  • 一戸 達也(東京歯科大学 歯学部)
  • 新田 浩(東京医科歯科大学 歯学部附属病院)
  • 大澤 銀子(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 秋葉 奈美(新潟大学 医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野)
  • 岩下 洋一朗(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科医師臨床研修制度では、平成18年度の必修化以降、到達目標は一度も変更されておらず、早急に改訂することが望まれている。令和4年度より新たな歯科医師臨床研修制度に基づく到達目標が運用される予定であるが、この到達目標を研修歯科医が修得したかどうかを測定する評価方法については、検討が必要となっている。そこで本研究ではまず、全国の歯科医師臨床研修プログラムを管理する施設に対して、研修評価方法の実態調査を行い、研修修了判定に資する評価方法、評価基準などについて情報収集を行う。その上で、新たな到達目標に対する具体的な評価内容や評価基準の検討を幅広く行い、全国の歯科医師臨床研修施設において活用しうる評価方法を検討するとともに評価ガイドラインを作成し、研修現場で運用していくことを目的とする。
研究方法
 まず、研修評価方法の実態確認を行うために、令和2年12月に研修評価方法の実態調査をWebアンケートで実施する。この結果より、新たな研修到達目標の評価に求められる事項を明確にする。令和3年8月に、全国の歯科医師臨床研修関係者によりワークショップを開催し、研修評価全体の枠組みや、各領域ごとの評価項目、評価基準などを具体的に検討することとした。これらのプロダクト、および本研究班でさらに議論を深め、その成果を令和3年12月にシンポジウムにて公開し、広く意見を求めることとした。
結果と考察
令和2年12月に研修評価方法の実態調査をWebアンケートで実施した。回答は314施設に依頼し、158施設から回答を得ることができた(回収率50.3%)。研修歯科医に対する評価方法としては、施設で独自に作成した評価方法を使用している施設が70.9%と最も多く、DEBUTの使用は16.5%にとどまっていた。形成的評価については、「行っている」と回答した施設は89.9%であり、主として指導歯科医から(93.0%)様々な方法で評価され、その結果は研修歯科医に主に対面でフィードバックされている(95.1%)傾向が明らかとなった。一方で、総括的評価については、経験症例の量的(77.8%)、質的(63.3%)な評価と共に研修態度評価(平時の勤務状況)(67.7%)などと併用して行われる傾向であり、その最終評価はプログラム責任者が行っていると回答した施設が81%であった。また多面評価については、一部導入も含めて49.4%の施設で導入されており、その評価者は指導歯科医以外に歯科衛生士(80.8%)、関連する医療スタッフ(73.1%)などが担当している傾向であり、「研修期間中に随時評価している」と回答した施設が60.3%と最も多かった。
令和3年3月に医師臨床研修における評価制度に造詣の深い、国立大学病院長会議 EPOC運営委員会委員でもある北海道大学医学教育・国際交流推進センターの高橋誠教授にご協力を頂き有識者ヒヤリングを行った。医師臨床研修で新規に導入されたEPOC2を中心に解説を頂いたところ、新たな医師臨床研修制度における本評価システムの位置づけや、評価項目や評価基準に対する具体的な考え方、実際の臨床現場における評価システムの運用面など、歯科医師臨床研修においても参考になる情報を多く提供いただき、本研究を推進していくうえで極めて有効な機会となった。
以上の情報収集結果をふまえ、令和3年度には本研究班において新たな研修到達目標の評価に対応できる全体的な枠組み、およびA領域については評価の視点・観点、評価基準を、B領域については9つの中項目とそれに付随する小項目について評価基準となるルーブリックを、C領域については実際の臨床現場での評価に資する評価の視点・観点について策定を行った。また、各領域の評価を行う際に用いる評価票の例示を行うとともに、その評価票の具体的な使用方法、想定される評価のタイミングや評価者、評価の実際(形成的・総括的評価、多面評価など)などについても明確にした。
これらをもとに、令和3年8月にオンラインワークショップを開催し、全国の関係者23名の参加者を得た。ワークショップでは、各領域の評価項目、評価基準などについて、具体的な検討が行われた。
ワークショップのプロダクト、およびその後の研究班の作業の成果については、令和3年12月に開催したオンラインシンポジウムにおいて公表し、参加者からの意見収集を行ったうえで最終的な評価方法を策定した。策定した評価方法は「歯科医師臨床研修評価ガイドライン」として取りまとめ、令和4年3月にホームページ上に公開し、研究成果を臨床研修現場において広く活用してもらえるように配慮した。
結論
本研究を通じて、全国の研修施設における評価方法に関する問題点を明確にし、新たな到達目標に対する評価方法に求められる内容や機能の検討を行い、全国の研修施設において活用しうる評価方法を明確にした。

公開日・更新日

公開日
2025-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202122011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
令和4年度より運用が開始される新たな歯科医師臨床研修制度において、臨床能力評価法を確立するための作業を行った。本研究では、先行する医師臨床研修における評価方法を参考に、歯科医師臨床研修の評価の手順や評価の視点・観点、評価基準等について示すことができた。本成果は令和4年4月以降、全国の研修施設で活用されており、歯科医師臨床研修制度における臨床能力評価の基盤として位置付けられている。
臨床的観点からの成果
歯科医師臨床研修制度における従前の評価の問題点を克服し、新たな評価方法の構築を行った。歯科医療を取り巻く社会環境の変化をふまえ、より柔軟に、かつ多面的に評価ができるように配慮し、また卒前から卒後にシームレスにつながる歯科医師の成長をふまえ、評価基準では各段階のマイルストーンを明確にした。令和4年度に歯学教育モデル・コア・カリキュラムが改訂されたことに伴い「診療参加型臨床実習実施ガイドライン」が大幅に見直され、今回の研究成果の一部が考慮された。
ガイドライン等の開発
令和4年度に運用が開始された新たな歯科医師臨床研修制度における到達目標の評価方法について、「歯科医師臨床研修評価ガイドライン」の形で取りまとめ、令和4年3月に一般公開した。これにより、全国300以上の歯科医師臨床研修施設において一定の枠組みにおける到達目標評価が可能となり、公的な制度として実施される歯科医師臨床研修の運用に資するものと考えられる。令和4、5年度においてオンライン評価システムの開発作業を厚労科研にて行っており、より実用的な評価方法となるよう検討が進められている。
その他行政的観点からの成果
新たな歯科医師臨床研修制度を全国で適切に運用するために必要な臨床能力評価方法の構築について、全国の歯科医師臨床研修関係者の意見をふまえて原案を構築し、全国公開シンポジウムにおいて意見を集約した上で、歯科医師臨床研修評価ガイドラインとして取りまとめた。これらの成果は、今後運用される歯科医師臨床研修制度の効果的な推進に寄与するとともに、社会の求める歯科医師の養成に大きく貢献すると考えられる。
その他のインパクト
本研究は、令和4年度に運用が開始された新たな歯科医師臨床研修制度における到達目標に対する評価方法の明確化であった。この研究成果は、令和4年度に改訂された歯学教育モデル・コア・カリキュラムの編成作業、特に今回正規に本体に収載された「診療参加型臨床実習実施ガイドライン」の改訂に大きく影響を与え、卒前から卒後に至るスムーズな臨床教育の接続に貢献した。このことから、本研究成果の社会的インパクトは極めて大きいと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
オンラインシンポジウム開催1件、ガイドライン作成1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-22
更新日
2025-06-02

収支報告書

文献番号
202122011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,006,000円
(2)補助金確定額
2,005,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,440,895円
人件費・謝金 26,040円
旅費 74,460円
その他 3,080円
間接経費 462,000円
合計 2,006,475円

備考

備考
研究に必要な消耗品を購入した結果、99996円の執行となり、4円の残額が発生したため。
自己資金額1475円。

公開日・更新日

公開日
2022-12-13
更新日
-